【社説・12.18】:金融業界不祥事 信頼を失う深刻な事態だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.18】:金融業界不祥事 信頼を失う深刻な事態だ
信用を足元から揺るがす深刻な事態だ。各金融機関は原因究明と再発防止に力を尽くし、信頼回復に努めなければならない。
三菱UFJ銀行の行員が、東京都内にある練馬支店と玉川支店の貸金庫から顧客の金品を繰り返し盗んでいたことが発覚した。
2020年4月から24年10月までの約4年半で約60人が被害に遭い、金額は時価で十数億円に上るという。顧客からの指摘で判明したが、他に数十人から盗まれた可能性があるとの申告があり、被害はさらに拡大する恐れがある。
被害者は、信用する銀行で行員に貴重品を盗まれるとは想像もしていなかっただろう。
16日に記者会見した同行の半沢淳一頭取は「信頼、信用という銀行ビジネスの根幹を揺るがす」と述べたが、全くその通りだ。
同行によると、行員は40代の店頭業務責任者の女性で、懲戒解雇された。銀行で保管する予備の合鍵を悪用して窃盗を繰り返し、盗んだ資金は投資に使っていたという。単独犯とみられている。
問題は4年半もの間、銀行がどうして行員の犯行に気付かなかったのかということだ。
半沢頭取は「貸金庫でこれまで(同様の)不祥事がなく、リスク認識が低かった」と語った。管理体制やチェック体制が甘かったのは間違いない。徹底的に調査し、問題点を洗い出す必要がある。
金融庁は銀行法に基づく報告徴求命令を出した。同行は今後、合鍵を本部で一括管理するなどの対応を取るというが、確実な再発防止策を講じなければならない。
気がかりなのは最近、金融業界で不祥事が相次いでいることだ。
野村証券では、広島支店の社員の男が7月に顧客の80代夫婦宅で妻に睡眠作用のある薬物を服用させた上、現金約1800万円を盗み放火して殺害しようとしたとして、強盗殺人未遂と放火の罪で起訴される事件があった。
同社は社員を懲戒解雇し、今後は営業担当者が顧客宅を訪問する際に上司が同席したり、訪問前後に上司が顧客に電話を入れたりするなどの再発防止策を発表した。
他にも金融庁と東京証券取引所ではインサイダー取引疑惑が浮上している。
県内でも16日、上越市の保険代理店に所属していた女性販売員が保険証券を偽造し、23人から約8千万円を不正に受け取っていた疑いがあると、損害保険ジャパンが発表した。
安心して取引できる金融機関であるためには、従業員一人一人の法令遵守意識が何より大事だということを経営陣は改めて胸に刻んでほしい。
不祥事が起きた際の丁寧な説明が遅れ、信用をさらに低下させるケースが見られる。トップの素早い対応が危機管理の要諦であることも再確認してもらいたい。
信用を足元から揺るがす深刻な事態だ。各金融機関は原因究明と再発防止に力を尽くし、信頼回復に努めなければならない。
三菱UFJ銀行の行員が、東京都内にある練馬支店と玉川支店の貸金庫から顧客の金品を繰り返し盗んでいたことが発覚した。
2020年4月から24年10月までの約4年半で約60人が被害に遭い、金額は時価で十数億円に上るという。顧客からの指摘で判明したが、他に数十人から盗まれた可能性があるとの申告があり、被害はさらに拡大する恐れがある。
被害者は、信用する銀行で行員に貴重品を盗まれるとは想像もしていなかっただろう。
16日に記者会見した同行の半沢淳一頭取は「信頼、信用という銀行ビジネスの根幹を揺るがす」と述べたが、全くその通りだ。
同行によると、行員は40代の店頭業務責任者の女性で、懲戒解雇された。銀行で保管する予備の合鍵を悪用して窃盗を繰り返し、盗んだ資金は投資に使っていたという。単独犯とみられている。
問題は4年半もの間、銀行がどうして行員の犯行に気付かなかったのかということだ。
半沢頭取は「貸金庫でこれまで(同様の)不祥事がなく、リスク認識が低かった」と語った。管理体制やチェック体制が甘かったのは間違いない。徹底的に調査し、問題点を洗い出す必要がある。
金融庁は銀行法に基づく報告徴求命令を出した。同行は今後、合鍵を本部で一括管理するなどの対応を取るというが、確実な再発防止策を講じなければならない。
気がかりなのは最近、金融業界で不祥事が相次いでいることだ。
野村証券では、広島支店の社員の男が7月に顧客の80代夫婦宅で妻に睡眠作用のある薬物を服用させた上、現金約1800万円を盗み放火して殺害しようとしたとして、強盗殺人未遂と放火の罪で起訴される事件があった。
同社は社員を懲戒解雇し、今後は営業担当者が顧客宅を訪問する際に上司が同席したり、訪問前後に上司が顧客に電話を入れたりするなどの再発防止策を発表した。
他にも金融庁と東京証券取引所ではインサイダー取引疑惑が浮上している。
県内でも16日、上越市の保険代理店に所属していた女性販売員が保険証券を偽造し、23人から約8千万円を不正に受け取っていた疑いがあると、損害保険ジャパンが発表した。
安心して取引できる金融機関であるためには、従業員一人一人の法令遵守意識が何より大事だということを経営陣は改めて胸に刻んでほしい。
不祥事が起きた際の丁寧な説明が遅れ、信用をさらに低下させるケースが見られる。トップの素早い対応が危機管理の要諦であることも再確認してもらいたい。
元稿:新潟日報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月18日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。