【社説②】:大麻と若年層 薄い抵抗感 啓発が急務
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:大麻と若年層 薄い抵抗感 啓発が急務
米国から大麻を密輸したとして、大麻取締法違反(輸入)などの罪に問われた元五輪代表のプロスノーボーダー国母和宏被告=千歳市=の判決で、東京地裁は懲役3年執行猶予4年を言い渡した。
被告は初公判で、大麻と関わることがすべて違法だとは思わないが、日本で吸うのは違法なので今後はしないと述べた。
罪の自覚が希薄と言わざるを得ず、判決も再犯の恐れに懸念を示した。こうした甘い認識を正す必要がある。
警察庁によると、2018年の大麻事件の摘発者は、前年比570人増の3578人と過去最多を更新した。深刻なのが抵抗感の薄い若者への広がりだ。
人口10万人当たりの摘発を年齢層別でみると、14~19歳が14年の1・1人から6・0人と6倍近くに増加。20代も5・0人から12・2人へと倍増した。
背景には、インターネットなどで大麻の有害性を軽視する情報があふれたり、会員制交流サイト(SNS)やオンラインゲームを通じ手軽に入手できる状況がある。
若年層を守るのは社会の責務だ。啓発や教育を通じて違法薬物に手を出さない意志を育てる環境を整えたい。
警察庁によると、大麻事件の摘発者は昨年も上半期だけで2093人と過去最多となり、全体の半数以上を20代以下が占めた。
大麻や合成麻薬MDMAなどの違法薬物が身近になっている。
医療大麻の使用を認める海外の事例や、飲酒や喫煙の有害性と比較しながら、あたかも大麻が無害であるかのような主張も広がっている。だが、大麻が安全という認識は誤りだ。
大麻に含まれる成分は脳の中枢神経に作用し、乱用を続けると、学習能力の低下や記憶障害、人格変化を招き、依存症になる恐れもある。とりわけ、発達段階の青少年期の脳は影響を受けやすい。
ネットの発達で取引の実態が潜在化したことも問題だ。メッセージが時限的に消去されるアプリが売買に悪用される事件もあった。
使用のきっかけとしては、興味本位の動機のほか、学校や家庭での孤立も指摘される。
適切な情報を伝え、若者を守る仕組みが欠かせない。国や自治体、IT企業、学校などの関係者には、対策を充実してもらいたい。
大麻の売買は、反社会的勢力の資金源ともなっている。違法な取引に若者が巻き込まれるような事態は防ぐべきだ。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2020年02月01日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。