【政局】:沖縄の乱は全国へ 亡国内閣改造で尽きた安倍内閣の命運
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政局】:沖縄の乱は全国へ 亡国内閣改造で尽きた安倍内閣の命運
まったく、いい度胸だ。10月2日の内閣改造人事。先月「しっかりした土台の上にできるだけ幅広い人材を登用していきたい」と人事方針を語っていた安倍首相は、予告通り麻生財務相を留任させた。
しかし、「土台」なのかどうか知らないが、よくも麻生留任に踏み切れたものだ。どれほど国民が怒り、呆れているのか分かっていないのではないか。
財務官僚による決裁文書の改ざんも、事務次官のセクハラ辞任も、財務省を舞台にした前代未聞の不祥事は、すべて麻生大臣の下で行われたことだ。国有地の大幅値引きを“問題ない”と国会答弁していた佐川理財局長を「適材適所」と強弁して国税庁長官に栄転もさせている。しかも、「改ざんはどんな組織にだってあり得る」と開き直り、事務次官のセクハラについても「はめられた可能性は否定できない」と被害女性をおとしめていた。結局、官僚にだけ責任を取らせ、本人は他人事のような態度で居座る始末。さすがに、身内の小泉進次郎まで「官僚にだけ責任を押しつける政党ではないと見せる必要がある」と批判していたほどだ。
内閣改造は、問題だらけの麻生太郎を閣内から外す絶好のチャンスだったはずだ。なのに、再任するとは、すべての問題を不問にすると宣言したも同然である。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏が言う。
「安倍首相は、麻生財務相、菅官房長官、二階幹事長と実力者を全員、留任させています。3人の共通点は“ポスト安倍”のキングメーカーだということです。財務省の一連の不祥事を考えたら、麻生財務相の再任はあり得ないことです。でも、もし閣外に出したら“ポスト安倍”擁立に動きかねない。どうしても閣内に置いてグリップしておきたかったのでしょう。安倍首相にとって“麻生再任”は、守りの人事と言えます」
笑顔で撮影に臨む安倍首相と自民党の新役員ら(C)共同通信社
■初入閣は“派閥順送り” “滞貨一掃”
それよりなにより、フダツキの麻生大臣を切れなかったのは、安倍自身が森友事件の主犯だからだ。財務官僚が公文書の改ざんに手を染めたのも安倍夫妻を守るためだった。当時、麻生財務相も「悪いのは昭恵だろ!」と不満を漏らしていたという。麻生財務相からしたら「どうして関係ない俺が責任を取らされるんだよ」というものだろう。クビを切ろうとしたら、大モメになるのではないか。
それに、防波堤となっている麻生大臣がいなくなったら、直接、批判の矢が飛んでくることにもなりかねない。森友疑惑から身を守るためには、切りたくても切れないのが実態ではないか。フダツキ大臣を代えられないのは、自分が責任を取らないからだ。
さらに、7月の西日本豪雨の時「赤坂自民亭」と称した宴会に参加し、その様子をツイッターに投稿して批判を浴びた西村官房副長官を留任させたのも、安倍本人が一緒になって大騒ぎしていたからだ。西村副長官を交代させたら、自分の行動も問題だったと認めることになってしまう。だから、切るに切れないのだろう。
「もし、自分が森友疑惑に関与していなかったら、安倍首相はとっくに麻生大臣を辞任させていたはずだし、赤坂自民亭に参加していなければ西村副長官を交代させていたはずです。すべて自業自得ですが、安倍首相は自分の行動にガンジガラメにされている格好です。今回、初入閣する顔ぶれが典型的な“派閥順送り”“滞貨一掃”となったのも、派閥の力を借りて総裁3選したからです。支援してくれた5派閥に人事で報いる必要があり、自由な人事をやれなかったはず。この調子では、新内閣がスタートしても支持率はアップしないでしょう。やはり、総裁選で石破茂に善戦を許したことが大きかった。もはや、以前の“安倍1強”ではなくなっています」(政治評論家・本澤二郎氏)
酒宴仲間(西村康稔議員ののツイッターから)
◆安倍政治の限界みえた「総裁選」と「沖縄」
それにしても、これほどパッとしない組閣人事も珍しいのではないか。
来年、統一地方選と参院選を控えているのに、サプライズひとつないのだから、ほとんど政権末期である。勢いのある政権なら、あっと驚くサプライズ人事をやるものだ。フダツキ大臣を代えることもできなかった。
こうなると安倍政権は、長くないのではないか。先週9月30日(日)に行われた沖縄県知事選も、総力を挙げて戦ったのに野党候補に大敗している。現地で沖縄県知事選を取材した法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)がこう言う。
「安倍首相が苦戦した“総裁選”と“沖縄県知事選”は、よく似ていると思います。沖縄県民が安倍政権にノーを突きつけたのも、自民党員の45%が石破支持に回ったのも、具体的な政策というより、安倍政治の強権的な手法そのものに反発した結果でしょう。『沖縄の気持ちに寄り添う』と口にしながら、民意を無視して辺野古基地の移設を強行した。総裁選では市議や現職大臣まで恫喝していた。力ずくで批判や不満を封じ込めているのが安倍政治です。逆らう者は脅し、スリ寄る者には褒美を与える。でも、さすがに安倍政治は限界を迎えている。総裁選の苦戦ぶりは、そのことを表している。いずれ“沖縄の乱”は、全国に伝播するはずです」
安倍政治の限界は、沖縄県知事選の結果を見ればハッキリしている。
前回、自主投票だった公明党まで支持に回り、進次郎は3回も現地入りするなど、安倍政権はやれることはすべてやったのに、それでも野党が担いだ玉城デニーに大差をつけられている。玉城が獲得した票は39万票と、前回“オール沖縄”が擁立した翁長知事が奪った36万票よりも多かった。
■「勝利の方程式」も通用しない
沖縄県知事選では、安倍政権が誇ってきた「勝利の方程式」も通じなかった。
安倍政権の勝利の方程式は、まず自公がガッチリと協力すること。そのうえで、選挙の争点をぼかし、経済的な利益を喧伝するというものだ。今回も、辺野古基地移設の賛否は明かさず、応援に入った菅長官は県政とは直接関係ない携帯電話料金の引き下げばかり訴えていた。都合の悪い話から逃げ、耳に心地よい話をチラつかせる、安倍政権のいつもの手法だ。しかし、沖縄県民はまったくだまされなかった。
ただでさえ、来年夏の参院選で、自民党は苦戦必至だ。「勝利の方程式」も通用しないとなったら、安倍自民党は大敗しておかしくない。
「5年前、大勝した自民党の改選議席は65です。ほぼ上限でしょう。2年前は56議席でした。来夏の参院選で自民党が議席を減らすことは、ほぼ確実です。しかも、12年に1度、春の統一地方選と参院選が重なる亥年は、自民党は参院選で敗北するというデータがある。どう考えても、安倍自民党は勝てそうにない。そのうえ、地方はアベノミクスの恩恵がなく疲弊し、もう、これまでのように選挙で勝つために北朝鮮の脅威をあおることもできないでしょう。一番大きいのは、野党が本気で候補者の一本化に動きはじめていることです。沖縄県知事選で分かったように、野党がエゴを捨てて協力し、有権者の声に謙虚に耳を傾ければ、安倍自民党に負けない。32ある1人区すべてで候補者の一本化を実現させられれば、あっと驚く結果になるはずです」(本澤二郎氏=前出)
2日の組閣は、安倍政権最後の組閣になるのではないか。
元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース 政治・経済 【政治ニュース】 2018年10月02日 17:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。