【安倍内閣】: “国民挑発”改造で支持率下落 世論に見放された政権の末路
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【安倍内閣】: “国民挑発”改造で支持率下落 世論に見放された政権の末路
安倍首相は愕然としたことだろう。通常なら政権浮揚につながるとされる内閣改造で、支持率が上がらなかったのだ。
各社の世論調査は改造当日の2日と3日に実施され、内閣支持率は共同通信が前回9月の調査から0・9ポイント減(46・5%)。安倍シンパの読売新聞でも前回から横ばい(50%)。驚いたのは日経新聞で、ナント5ポイントも下落した(50%)。アベノミクスや外交などを評価し、比較的政権に好意的なメディアなのにもかかわらずである。いずれも改造を「評価しない」が「評価する」を上回った。
日経によれば、同社の世論調査で内閣改造・自民党役員人事直後に支持率が下がったのは、第1次、第2次を通じて安倍政権で初めてだという。第2次では、改造や衆院選直後の組閣で平均5ポイント程度上昇。14年9月に小渕優子衆院議員ら女性5人を入閣させた時は実に11ポイントの大幅アップだった。
世論の動向に詳しい明大教授の井田正道氏(計量政治学)はこう言う。
「今度の内閣改造は初入閣が12人と最多でしたが、入閣者の知名度がいまひとつ。目玉も片山さつき氏ぐらいで、内閣の特色が見えてきません。総裁選で支持してくれた派閥への論功行賞人事が際立つ一方、石破氏支持派からの入閣が1人だけだったことにも世論は批判的です。麻生副総理兼財務相の留任も評判が悪い。こうしたことが支持率が上がらなかった要因だとみています」
麻生留任は支持率下落の一因(C)共同通信社
■麻生、甘利、下村起用がマイナス作用
内閣改造が裏目に出た過去のケースとして、橋本龍太郎政権だった1997年9月の第2次改造内閣がある。ロッキード事件で有罪が確定した佐藤孝行氏を総務庁長官に起用したことが世論の反感を買い、下落した。つまり、今回の改造もその時と同様に、「本来なら起用されるべきではないグレーな人物」がいると世論が判断し、嫌悪した結果が、支持率下落となったのではないか。
実際、読売の調査で、森友問題で財務省が決裁文書を改ざんしたことの責任をいまだ取らない麻生の留任について、「評価する」が36%に対し、「評価しない」は57%にも上っている。
大臣室などで建設業者から現金計100万円を受け取り、ワイロ疑惑で閣僚を辞任した甘利明元経済再生相が、党幹部の選挙対策委員長に就いたことにも世論は批判的で、「評価しない」(41%)が「評価する」(37%)を上回った。
コラムニストの小田嶋隆氏がこう言う。
「麻生氏が留任し、甘利氏は党幹部として復権した。そして、加計学園から200万円の闇献金を受け取った政治資金規正法違反疑惑が問題になった下村博文氏も党の憲法改正推進本部長として表舞台に戻った。この3人の人事は内閣支持率にかなりマイナスになったと思います。特に甘利、下村の両氏は疑惑から逃げ、説明責任を果たしていないのに、シレッと復活した。居直っている印象です。みそぎが済んでいないという意味で、『クソみそぎ内閣』とツイートしたら、かなりのリツイートがありました」
“スネ傷”のお友達重用というナメ切った人事で国民にケンカを売ったのだから、支持率下落は当然の報いである。4日は副大臣人事で過去最多の5人の女性を起用。「女性閣僚1人」で落とした評判の挽回に躍起だったが、そういう小手先は世論に見透かされるのがオチだ。
米国に「TAG」表記なし(C)共同通信社
◆「次はない」と分かった瞬間、民心も離れる
第2次政権発足直後から「株価と支持率頼み」でやってきた安倍官邸は、その2つを高めるためにありとあらゆる手を打ってきた。株価は、異次元緩和の日銀や年金マネーの巨大クジラによって高値を維持し、市場を歪めた。もちろんその責任は重大だが、それ以上に悪質なのは、高支持率を演出するため、詐欺的手法を駆使してきたことである。
その筆頭が、都合のいい経済指標でアベノミクスが順調なように見せかけ、アピールしてきたこと。「名目GDPが493兆円から551兆円に増加」というのは、「増加分の32兆円は統計の見直し」という実態が背景にあったし、「有効求人倍率が全都道府県で1倍を超えた」というのも、少子高齢化による労働人口減少が理由だった。
華々しく打ち出した「2017年までに待機児童ゼロ」も早々と3年の先送り。全産業平均より10万円も低い保育士の安月給改善は手つかずだから、待機児童ゼロなど実現するわけがない。結局、男性より支持率の低い女性人気獲得を狙ったのがホンネで、待機児童解消に真剣じゃないのである。
北朝鮮の脅威をあおって、国民を震え上がらせることで支持率アップを狙った手法もヒドかった。昨年の衆院選圧勝を「北朝鮮のおかげ」と麻生が言ってのけたことがその証左だったが、支持率のためなら国民の生命すらもてあそぶのが安倍政権なのである。
さすがに世論も政権のペテンに気づいてきているが、安倍はそれでも懲りない。最近も日米の貿易協議で「TAG(物品貿易協定)」なる言葉を持ち出した。「FTA(自由貿易協定)」ではないと言い張っているが、米国では「物品だけではなくサービスも含む」として実質FTAの扱いになっている。どこまで国民を欺くつもりか。いい加減にして欲しい。
「安倍政権はこれまで、外交と経済の2つの柱で支持率を保ってきましたが、どちらも閉塞感が漂っている。外交は北朝鮮による拉致問題で全く進展がないし、トランプ大統領との関係も微妙になってきた。経済も似たような状況で、“やってる感”はあるものの、この先、打つ手が見えません。そうしたことも支持率と無関係ではないと思います」(井田正道氏=前出)
■臨時国会は追及材料が盛りだくさん
お友達重用と在庫一掃人事で見えてくるのは、「改憲シフト」だということ。改憲に関係のないポストは誰でもいいから、派閥均衡で派閥の推薦を受け入れた。今の安倍は、改憲という自分のレガシーづくりしか頭にない。国民なんて眼中にないのである。
「安倍政権が永遠に続くような感じだったから、自民党内はみな安倍首相に頭を下げ、従ってきた。しかし、あと3年という終わりが見えてきたわけで、今後、党内は次の権力基盤を探し出し、安倍首相は求心力を失う。それは世論についても同様で、『安倍さんしかいない』という消極的な選択が支持率の維持につながっていた。しかし『次はない』というのが分かった瞬間、民心も離れていくものです。本来ならそれを回避するために、安倍首相は内閣改造でこれまでとは一線を画して新機軸を打ち出す必要があったのです。しかし、それが一切ないどころか、むしろ後退してしまいました」(小田嶋隆氏=前出)
こうなると、この先の転落は早いだろう。今月下旬に臨時国会が召集されれば、モリカケ問題が蒸し返されるし、日米貿易交渉の「TAG」のイカサマや障害者雇用の水増しなど、野党の追及材料は盛りだくさんだ。滞貨一掃のポンコツ大臣の失言ラッシュもあり得る。頼みの世論から見放され、安倍政権はご臨終への道へまっしぐらだ。
元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース 政治・経済 【政治ニュース】 2018年10月05日 17:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。