ツイッターに不適切な投稿をして裁判当事者の感情を傷つけたとして、東京高裁が懲戒を申し立てた岡口基一裁判官(52)の分限裁判で、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は17日、懲戒が相当と判断し、戒告とする決定をした。裁判官14人全員一致の結論。裁判官がインターネットへの投稿を理由に懲戒を受けるのは初めて。

 裁判所法が懲戒理由に定める「裁判官の品位を辱める行為」に当たると判断した。岡口氏は「表現の自由」と主張したが、決定は「裁判官にも表現の自由はあるが、許容される限度を逸脱している。裁判官に対する国民の信頼を損ねた」と指摘した。

 決定によると、岡口氏は今年5月、高裁で判決があった犬の所有権を巡る民事訴訟に関し、インターネットの記事を引用し「え?あなた?この犬を捨てたんでしょ?」などと投稿。訴訟を起こした飼い主を傷つけた。

 岡口氏は、訴訟の相手方の言い分を要約しただけだと主張したが、決定は岡口氏の意見と認定。「やゆとも取れる表現で、提訴は不当との一方的な評価を公然と伝えた。表面的な情報や理解に基づき、裁判官が予断を持って判断するとの疑念を国民に与えた」と結論づけた。

 岡口氏は、東京都江戸川区で女子高校生が殺害された事件でも不適切な投稿をしたとして、今年3月に厳重注意処分を受けた。決定は「深く反省していると述べていたのに、今回の投稿に及んだ行為は強く非難されるべきだ」とした。

 岡口氏は1994年に任官し、水戸地裁や大阪高裁を経て2015年4月から東京高裁に所属。上半身裸の男性の画像などをツイッターに投稿したとして、16年6月にも口頭で厳重注意を受けている。(共同)