【社説①】:日韓首相会談 一致点広げる努力を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:日韓首相会談 一致点広げる努力を
日韓の首相が一年ぶりに会談した。対立の原点である元徴用工を巡る問題で大きな進展はなかったが、関係改善の必要性では一致した。首脳会談を含む対話を続け、接点をさらに広げてほしい。
首相官邸で行われた約二十分間の会談。雰囲気は、日韓間でここ数カ月続いてきたようなトゲトゲしいものではなかった。
「重要な関係をこのまま放置できない」と述べる安倍晋三首相に、韓国政府きっての「知日派」である李洛淵(イナギョン)首相は、「難関を克服したい」と応じた。
ようやく、率直な意見交換が実現したと言えよう。
李首相が携えてきた文在寅(ムンジェイン)大統領の親書にも、「両国間の懸案を早く解決するよう努力しよう」と書かれていたという。
昨年十月に韓国大法院(最高裁)が日本企業への賠償を命じた確定判決後、日韓の対立は経済、安保問題にも飛び火した。
訪日韓国人観光客は激減し、日本製品の不買運動も続いている。せっかく築いた友好関係が崩れかねないという危機感を、双方が共有しているのは間違いない。
しかし、日韓のハイレベルによる会談でも、修復に向けた具体策は出なかった。
安倍首相は会談で、韓国での判決が一九六五年に結ばれた日韓請求権協定に反すると指摘、「日韓関係の法的基盤を根本から覆している」と強調した。
李首相は「請求権協定を尊重し、順守しており、今後もそうする」と説明したが、判決との整合性をどう取るかについては触れなかった。これでは、外交当局の対話を続けても進展は望めない。踏み込んだ説明を求めたい。
日本と韓国の企業が資金を拠出して基金をつくり、元徴用工の救済を進める案も出ている。責任を企業だけに負わせるのは適切ではない。韓国政府も基金に参加し、運営にしっかり関与すべきだ。
日本側も、韓国に譲歩を求めるだけでいいのか。協定は半世紀以上が過ぎ、人権面で不十分な点が指摘されている。柔軟な対応も検討に値する。日本の裁判所が、元徴用工の被害を認定していたことも忘れてはならない。
日韓の間では来月、軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)が期限切れとなる。さらに日本企業の資産売却(現金化)が行われれば、最悪の事態に発展しかねない。
日韓関係が小康状態にある今こそ、双方が知恵を集めたい。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2019年10月25日 06:10:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。