【社説】:遠い裏金解明 政倫審だけでは不十分だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:遠い裏金解明 政倫審だけでは不十分だ
公開か非公開かですったもんだした挙げ句、全面公開で開催されたものの、裏金の全容は明らかにならなかった。
語ったことは既に判明している内容がほとんどだった。これでは国民の疑問や不信は解消せず、説明責任を果たしたことにならない。国会は引き続き実態解明に努めなくてはならない。
きのうは組織的な裏金づくりを長く続けていた安倍派で事務総長を務めた西村康稔、松野博一、塩谷立、高木毅の4氏が出席した。
遅くとも十数年前に始まったとされる安倍派の裏金づくりはいつから、誰の指示で、どういう目的で始めたのか。4氏は「会計には関与していなかった」などとしか答えなかった。自身の裏金の取り扱いも「秘書に任せていた」と言うばかりだった。
派閥から所属議員への資金還流は2022年にいったん中止が決まったが、塩谷氏は「希望する声が多く、従来通り継続された」と述べた。この経緯もまだ判然としない。
おとといの岸田首相と二階派の武田良太事務総長にしても、党の調査報告や従来の発言をなぞる程度だった。
首相は野党から裏金の実態を調査するように求められても、明確に答えることはなかった。武田氏も「経理は事務局長に任せていた」と自身の関与を繰り返し否定した。
政倫審は原則非公開だが、議員本人が了解すれば公開される。疑惑を持たれた議員が弁明する場であり、国民の信頼回復を望むなら、進んで公開の場で説明責任を果たすのが当然だ。
ところが自民党は当初、議員の傍聴も報道機関の取材も認めない完全非公開を主張した。岸田首相が唐突に出席を表明して全面公開にこぎ着けたとはいえ、自民党の迷走ぶりは首相の指導力のなさを露呈する結果となった。
首相の奇策は予算案を早く衆院通過させるために、政倫審を駆け引きの道具にしたと疑われても仕方ない。
きのうは24年度予算案を審議する衆院予算委員会の開催を強行しようとするなど、自民党の強引な委員会運営で国会が混乱した。自民党は本気で国民の信頼を取り戻そうと考えているのか。
政倫審の開催によって裏金事件に区切りがついたわけではない。明らかにすべきことが多く残ったままだ。
特に裏金づくりのいきさつを知るとみられる二階派会長の二階俊博元幹事長、安倍派会長だった森喜朗元首相には説明を求める必要がある。
裏金の全容がつまびらかにならないと、的確な再発防止策は打ち出せない。国会は参考人招致や証人喚問を検討すべきだ。
元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース オピニオン 【社説】 2024年03月02日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。