路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【社説】:遠い裏金解明 政倫審だけでは不十分だ

2024-03-03 06:05:45 | 【政治とカネ・政党交付金・「企業・団体献金」・政治資金・議員歳費・賄賂・後援会

【社説】:遠い裏金解明 政倫審だけでは不十分だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:遠い裏金解明 政倫審だけでは不十分だ

 公開か非公開かですったもんだした挙げ句、全面公開で開催されたものの、裏金の全容は明らかにならなかった。

 自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件について、衆院政治倫理審査会がきのうまでの2日間開かれ、党総裁の岸田文雄首相、安倍派と二階派の幹部5人が出席して弁明した。

 語ったことは既に判明している内容がほとんどだった。これでは国民の疑問や不信は解消せず、説明責任を果たしたことにならない。国会は引き続き実態解明に努めなくてはならない。

 きのうは組織的な裏金づくりを長く続けていた安倍派で事務総長を務めた西村康稔、松野博一、塩谷立、高木毅の4氏が出席した。

 遅くとも十数年前に始まったとされる安倍派の裏金づくりはいつから、誰の指示で、どういう目的で始めたのか。4氏は「会計には関与していなかった」などとしか答えなかった。自身の裏金の取り扱いも「秘書に任せていた」と言うばかりだった。

 派閥から所属議員への資金還流は2022年にいったん中止が決まったが、塩谷氏は「希望する声が多く、従来通り継続された」と述べた。この経緯もまだ判然としない。

 おとといの岸田首相と二階派の武田良太事務総長にしても、党の調査報告や従来の発言をなぞる程度だった。

 首相は野党から裏金の実態を調査するように求められても、明確に答えることはなかった。武田氏も「経理は事務局長に任せていた」と自身の関与を繰り返し否定した。

 政倫審は原則非公開だが、議員本人が了解すれば公開される。疑惑を持たれた議員が弁明する場であり、国民の信頼回復を望むなら、進んで公開の場で説明責任を果たすのが当然だ。

 ところが自民党は当初、議員の傍聴も報道機関の取材も認めない完全非公開を主張した。岸田首相が唐突に出席を表明して全面公開にこぎ着けたとはいえ、自民党の迷走ぶりは首相の指導力のなさを露呈する結果となった。

 首相の奇策は予算案を早く衆院通過させるために、政倫審を駆け引きの道具にしたと疑われても仕方ない。

 きのうは24年度予算案を審議する衆院予算委員会の開催を強行しようとするなど、自民党の強引な委員会運営で国会が混乱した。自民党は本気で国民の信頼を取り戻そうと考えているのか。

 政倫審の開催によって裏金事件に区切りがついたわけではない。明らかにすべきことが多く残ったままだ。

 特に裏金づくりのいきさつを知るとみられる二階派会長の二階俊博元幹事長、安倍派会長だった森喜朗元首相には説明を求める必要がある。

 裏金の全容がつまびらかにならないと、的確な再発防止策は打ち出せない。国会は参考人招致や証人喚問を検討すべきだ。

 元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース オピニオン 【社説】  2024年03月02日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【春秋】:芦雪が描いた子犬と虎、スズメ。そして「魚」

2024-03-03 06:05:40 | 【学術・哲学・文化・文芸・芸術・芸能・小説・暮らしに根差した民芸】

【春秋】:芦雪が描いた子犬と虎、スズメ。そして「魚」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【春秋】:芦雪が描いた子犬と虎、スズメ。そして「魚」

 劇場を出た後、いつもの風景が少し違って見えるような作品になればうれしい-。映画監督や劇作家が、こんなふうにインタビューで語ることがある。見た人の心を揺らし、何か気付きを持ち帰ってほしいとの思いだろう

宮島八景図(1帖8図のうち) 重要文化財 文化庁保管
『紅葉狗子図』[1] 1790年頃 絹本著色 ウォルターズ美術館

 ▼奇想の絵師と呼ばれる長沢芦雪(ろせつ)(1754~99)もそんな気持ちで描いていたのだろうか。円山応...、この記事は有料会員限定です。残り431文字。

 ■江戸時代の京都で活躍した絵師、長沢 芦雪ろせつ (1754~99年)の生誕270年を記念した展覧会が、福岡県太宰府市の九州国立博物館で開かれている。

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 元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース オピニオン 【春秋】  2024年03月02日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【お客さまセンターだより】:政治不信に不満と怒り

2024-03-03 06:05:35 | 【政治とカネ・政党交付金・「企業・団体献金」・政治資金・議員歳費・賄賂・後援会

【お客さまセンターだより】:政治不信に不満と怒り

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【お客さまセンターだより】:政治不信に不満と怒り

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件は、衆院政治倫理審査会が15年ぶりに開かれるなど深刻な政治不信を招いています。これまでお客さまセンターには思うに任せぬ不満や怒りのほか、独自の政策を訴える声が寄せられました。

 社説「自民の裏金調査 身内では核心に迫れない」(2月17日付)については、福岡市の...、この記事は有料会員限定です。残り757文字。

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 元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース オピニオン 【お客さまセンターだより】  2024年03月02日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説】:給食で小1死亡 教訓が生かされていない

2024-03-03 06:05:20 | 【不慮の事故・自動車事故・予期せず、意図せず、発生する惨事、火災他】

【社説】:給食で小1死亡 教訓が生かされていない

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:給食で小1死亡 教訓が生かされていない

 痛ましさに言葉を失う。多くの子どもが楽しみにしている給食時間に、あってはならない事故が起きた。

 福岡県みやま市の小学1年男児が2月に亡くなった。給食のおかずに入っていたウズラの卵を喉に詰まらせ、窒息したとみられる。

 市教育委員会によると、担任教諭が背中をたたいたりさすったりしたが何も吐かず、他の教諭が心臓マッサージや人工呼吸をした。ドクターヘリで病院に搬送されたものの死亡が確認された。

 安全であるはずの学校で、いつも通りの一日を過ごすことができなかった。男児の苦しさや家族のつらさを想像するとやり切れない。

 学校や市教委のほか、給食の関係者、文部科学省は命が失われた原因と背景を検証しなければならない。

 見過ごせないのは、同じような窒息事故が繰り返されていることだ。

 給食中に窒息死した児童や生徒は2008年から11人に上る。パンやミニトマト、プラムの種などが原因だった。みやま市のような事故も起きていた。15年に大阪市の小学1年女児がウズラの卵を喉に詰まらせ亡くなっている。

 数センチ程度の丸い物を吸い込むと、気道をふさぐことがある。保育所や幼稚園向けに国が策定した指針は、ウズラの卵を「給食での使用を避ける食材」と示す。学校給食の手引でも丸い食材への注意を呼びかけている。

 みやま市教委は、ウズラの卵に注意が必要だと認識せずに使っていたという。他の自治体も似た状況のようだ。

 過去の事故に関する情報が十分に共有されず、教訓が生かされていない現状を関係者は重く受け止めるべきだ。教委などに通知を出し、注意喚起してきた文科省の対応も形式的ではなかったか。

 特に小学校低学年は歯が生え替わる時期で、かみにくい子がいる。食材の基準を見直す検討が必要だろう。食物アレルギーがある子の対応に追われる学校給食の現場に、過度な負担がかからない工夫も求められる。

 給食中の窒息死に限らず、学校では校舎からの転落などさまざまな死亡事故が発生している。日本スポーツ振興センターの災害共済給付制度で見舞金などが支払われたのは年50人を超える。

 再発防止には事例の詳細を広く共有することが欠かせない。しかし肝心の文科省が死亡事故の全体像を把握できていない。

 文科省は学校事故の対応指針に沿って、都道府県教委などに死亡事故の報告を求めている。昨年夏の調査で全件報告したのは60%台にとどまった。報告基準が曖昧なことが一因だ。

 文科省は年度内の通知を目指し、対応指針の改定を進めている。教委や私立学校の責務を明確にして調査と報告を徹底する。早急に実効性を高めなくてはならない。

 元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース オピニオン 【社説】  2024年03月01日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【春秋】:政治に幕はいらない

2024-03-03 06:05:15 | 【政治とカネ・政党交付金・「企業・団体献金」・政治資金・議員歳費・賄賂・後援会

【春秋】:政治に幕はいらない

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【春秋】:政治に幕はいらない

 歌舞伎の舞台で幕が使われ始めたのは江戸時代、17世紀ごろという。演目のストーリー性が高まる中で舞台の時間と場所を一気に転換する仕掛けとなった。3色の「定式幕」は、手で引いて左右に開け閉めするので「引幕(ひきまく)」とも呼ばれる。ここから「幕引き」という言葉が生まれた

 ▼自民党の裏金事件を受けた衆院の政...、この記事は有料会員限定です。残り425文字。

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 元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース オピニオン 【春秋】  2024年03月01日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説①》:子育て支援の財源 理解得る努力が足りない

2024-03-03 02:05:50 | 【少子化問題・異次元対策・生殖医療・不妊治療・無痛分娩・少母化・婚姻の激減・

《社説①》:子育て支援の財源 理解得る努力が足りない

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①》:子育て支援の財源 理解得る努力が足りない

 国民負担の議論を避けていては、日本が直面する喫緊の課題への対応に支障が出かねない。

 岸田文雄政権の看板政策である「次元の異なる少子化対策」の関連法案が国会に提出された。児童手当などに年3兆6000億円規模の予算が投じられる。

こども未来戦略会議で発言する岸田文雄首相=首相官邸で2023年10月2日、竹内幹撮影

 焦点は財源の確保だ。医療保険料に上乗せして国民、企業から1兆円を徴収する「支援金」制度が新設される。児童手当や育児休業給付の拡充などの原資となる。

 全世代型社会保障を掲げる政府は支援金について、子育て世帯を支える「新しい分かち合い・連帯」の仕組みと位置づける。だが、実態は保険料の追加負担だ。

 国民の理解が進まないのは、岸田首相が「実質的な追加負担はない」と言い続けているためではないか。

 支援金は国民1人当たり月500円弱になるとの見通しを首相が示したところ、「実質増税だ」との批判が噴出した。このため、子ども1人当たり18歳までに平均146万円相当の恩恵を受けられるとの試算を公表した。負担は小さく、恩恵は大きく見せようとする意図がうかがわれる。

 政府は医療・介護などの歳出改革が着実に進めば、社会保険料が減り、支援金の負担分は相殺できると説明する。

 しかし、歳出改革の実効性は不透明だ。高齢者の増加に伴い社会保障費が増す中、削減は容易ではない。利用者負担の引き上げにも限界がある。

 賃上げを実現して国民の負担感を和らげるというが、企業によって業績や体力には大きな差がある。賃上げ頼みでは心もとない。

 新たな負担が生じないかのようなつじつま合わせを続ければ、国民の不信感は増すばかりだ。

 そもそも、社会保障費の枠内で財源を確保しようとしているところに無理がある。

 消費増税などの選択肢も排除すべきではない。

 2023年の出生数速報値は、過去最少の75万人台となり、少子化が加速している。歯止めをかける対策を急がなければならない。

 そのための有効な政策を打ち出し、必要な負担について、丁寧に国民の理解を求めていくのが政治の王道である。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年03月03日  02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説②》:世界経済とG20 分断の悪影響を防がねば

2024-03-03 02:05:40 | 【外交・外務省・国際情勢・地政学・国連・安保理・ICC・サミット(G20、】

《社説②》:世界経済とG20 分断の悪影響を防がねば

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②》:世界経済とG20 分断の悪影響を防がねば

 国際社会の分断が各国の景気や国民生活に悪影響を及ぼしている。こうした事態に歯止めを掛けなければならない。

 主要20カ国・地域(G20)の財務相らが会議を開き、世界経済の課題を協議したが、共同声明は採択できなかった。ウクライナ侵攻や中東情勢を巡る日米欧とロシアなどの対立が響いた。

共同声明の採択を見送った主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議=ブラジル・サンパウロで2月29日、AP

 米欧の利上げでインフレが峠を越すなど、世界経済は厳しい局面を脱したかのように見える。国際通貨基金(IMF)は今年の成長率見通しを上方修正した。

 だがリスクは依然残っている。ウクライナ危機の長期化に加え、中東も戦火が広がりかねない情勢だ。エネルギーや食料の価格が再び高騰する恐れは消えていない。成長をけん引してきた中国は深刻な不動産不況に直面している。

 共同声明の代わりにG20議長国ブラジルが会議の内容をまとめた文書は、世界経済の先行きについて「不確実性は高い」と警戒感を示した。にもかかわらず景気の安定に向けた処方箋を打ち出せなかった。多国間の枠組みが機能不全に陥っている。

 超大国として協調を主導する立場にある米国の動向も心配だ。

 11月の大統領選で返り咲きを狙うトランプ氏は、輸入品に高関税を課す方針を示すなど自国優先の姿勢をあらわにしている。バイデン大統領が対抗して保護主義政策を強めれば、世界の対立に拍車を掛けかねない。

 分断のしわ寄せを受けているのは「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国だ。食料不足で多くの人が飢えに苦しんでいる。米国の利上げでドル建ての借金負担が重くなった国も目立つ。

 ブラジルは今年のG20で飢餓や貧困問題を重視し、グローバルサウスの発言力を高めたい考えだ。資金を拠出するIMFや世界銀行の運営への関与を強める意向を示している。格差是正のために、富裕層への課税強化で各国が協力していくことも提案した。

  G20は政治的体制が異なる国の集まりだが、貧困などグローバルな課題には協力して取り組む責任がある。途上国の意見をくみ取り、支援を拡充しなければならない。主要国は国際的な連携の立て直しを図るべきだ。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年03月03日  02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【余禄】:円盤の形をしたレコードは…

2024-03-03 02:05:30 | 【経済・産業・企業・起業・関税・IT・ベンチャー・クラウドファンティング

【余禄】:円盤の形をしたレコードは…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【余禄】:円盤の形をしたレコードは…

 円盤の形をしたレコードは1880年代に米国の発明家、ベルリナーが考案した。エジソンが円筒形の蓄音機で先行したが作りやすい円盤形が勝利を収め、レコード業界の発展につながる

<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2024/03/03/20240303k0000m040001000p/9.webp?1" type="image/webp" />増床した東京・渋谷のアナログレコード専門店「TOWER VINYL SHIBUYA」(タワーレコード提供)</picture>
増床した東京・渋谷のアナログレコード専門店「TOWER VINYL SHIBUYA」(タワーレコード提供)

 ▲音楽配信の普及などでCD販売の苦境が続く中、昔ながらのアナログレコードが気を吐いている。日本レコード協会によると2023年の生産量は約270万枚、生産額は約63億円に上った。09年の約10万枚から復調し、34年ぶりに60億円を超した。とりわけここ2、3年の伸びが顕著だ

 ▲アナログブームは米国で始まった。近年は山下達郎さんによる再発行や、あいみょんさんの新譜販売など、話題も豊富である。他のソフトに比べた音のぬくもり感や、レコードプレーヤーに針を置くことの「新鮮さ」が若い世代にも受け入れられているという

 ▲レコード販売大手のタワーレコードは東京・渋谷にあるアナログ専門店の面積を倍増した。新盤・中古10万枚以上をそろえる。目当ての品を探す外国人客も多く、レジに列ができていた。日本は多様なジャンルの音楽を聴く文化があり、保存状態がよいレコードも多いため、中古市場が注目されている

 ▲カセットテープも脚光を浴び始めている。役所広司さん主演の映画「PERFECT DAYS」は、車内で主人公が選ぶカセットから流れる音楽が、作品の基調を形づくった

 ▲音楽的な再評価に加え、効率優先の暮らしを見つめ直す風潮が底流にあるのではないか。静かに広がるアナログファンの裾野だ。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】  2024年03月03日  02:04:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説①》:政倫審に安倍派幹部 やはり証人喚問が必要だ

2024-03-03 02:04:50 | 【政治とカネ・政党交付金・「企業・団体献金」・政治資金・議員歳費・賄賂・後援会

《社説①》:政倫審に安倍派幹部 やはり証人喚問が必要だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①》:政倫審に安倍派幹部 やはり証人喚問が必要だ

 疑惑の解明には全くつながらなかった。これでは国民の不信が払拭(ふっしょく)されるはずがない。

 自民党派閥の裏金事件を巡り、安倍派幹部が衆院の政治倫理審査会に出席した。派閥運営を仕切る事務総長を務めた西村康稔、松野博一、塩谷立、高木毅の4氏だ。

 安倍派はパーティー券収入の一部を所属議員に還流するなどしていたが、政治資金収支報告書に記載していなかった。不記載額は5年間で約6・7億円に上り、実態解明が今国会の焦点だ。

 しかし、政倫審で4氏は「会計に関与していない」などと強調した。自身の政治団体の不記載も、秘書らに任せており「認識していなかった」などと繰り返した。

 長年派閥に所属してきたにもかかわらず、言い逃れのような答弁に終始したのは不誠実だ。

 さらに不可解なのは、還流廃止の方針を一旦決めながら、復活させた経緯である。西村、塩谷両氏によると、2022年4月と8月に幹部が対応を協議した。 

 4月に当時会長だった安倍晋三元首相が「現金での還流は疑義を生じかねない」と廃止を提案し、幹部が手分けして所属議員に電話で伝えたという。

 廃止を決めたのは、問題があると認識していたからではないか。塩谷氏らは協議で「不記載の話は出ていない」などと否定したが、にわかには信じがたい。

 安倍氏の死去後に廃止方針は撤回されたが、誰の判断によるものか判然としない。8月の協議について西村氏は「結論は出なかった」、塩谷氏は「具体的に詰めていない」と述べただけだ。

 2回の協議には安倍派幹部の下村博文、世耕弘成両氏と、政治資金規正法違反で在宅起訴された派閥の事務局長も出席した。8月の協議後、事務局長が独断で撤回を決めたとは考えにくい。下村氏らも国会で説明すべきだ。

 裏金作りが始まった経緯も明らかにならなかった。西村氏は「歴代会長と事務局長の間の長年の慣行」だと説明した。そうであるならば、派閥会長を務めた森喜朗元首相の国会招致が不可欠だ。

 これで幕引きにすることは許されない。自民には野党が求める証人喚問に応じ、真相を明らかにする責任がある。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年03月02日  02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説②》:能登地震と地場産業 伝統と誇り守る支援策を

2024-03-03 02:04:40 | 【経済・産業・企業・起業・関税・IT・ベンチャー・クラウドファンティング

《社説②》:能登地震と地場産業 伝統と誇り守る支援策を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②》:能登地震と地場産業 伝統と誇り守る支援策を

 各地の風土に根差した地場産業は、住民の生活を支え、地元への誇りと愛着を育んできた。災害からの復興でも鍵を握る。

 能登半島地震の発生から2カ月が過ぎた。政府は石川県だけで被害額が9000億円から1兆3000億円に上ると試算している。

輪島塗の制作などを手掛ける「五島屋」のビルは地震で倒壊した=石川県輪島市河井町で2024年1月16日午後1時18分、黒詰拓也撮影

 2020年度の県内総生産は約4兆5000億円であり、被害の大きさがうかがわれる。

 損壊したインフラや建物は能登に集中している。

 代表的工芸品の輪島塗の状況も深刻だ。120以上の工程を職人が担う高度な分業制で知られ、働き手は約1000人に及ぶ輪島市の基幹産業だ。

 朝市の大火などで多数の工房や店舗が失われ、職人の多くが避難先で暮らす。地元の漆器商工業協同組合は、「生きるのに必死で、大切な技術が消えてしまう」と危機感を訴える声明を出した。

 
伝統の漆器も販売していた朝市の焼け跡を見て涙をぬぐう輪島塗職人=石川県輪島市河井町で2024年1月22日、栗栖由喜撮影

 国は、全額を負担して仮設工房を4月中に開設する。伝統的工芸品産業の振興に関する法律に基づき、生産再開や原材料確保の経費として、1事業者あたり最大1000万円補助することを決めた。

 申請には通常、被災状況を示す公的書面や写真が必要だが、被災者が作業場などの確認のために一時帰還するのは容易ではない。国は、実情を踏まえて柔軟な対応に努めてほしい。

 対象になるのは、能登では輪島塗と七尾仏壇だけだが、他にも伝統産業は数多くある。平安末期からの歴史を持つ珠洲焼のほか、ろうそくや七輪などだ。

 国の対象になっていない産品は県が支援する。生産者の意欲を高めるような内容にすべきだ。

 従事者の多い農林水産業の復興も欠かせない。農地や漁港、林道などの被害は、県のまとめで推計約2000億円に達している。

 関係者の努力でブランド化されてきた寒ブリや能登牛などの生産を守っていく必要がある。

 「杜氏(とうじ)」の4大出身地の一つとされる地域だが、事業再開が見通せない酒蔵も少なくない。伝統的製法で知られる揚げ浜式塩田は、地盤隆起の被害を受けた。

 独自の産業は住民にとってかけがえのない文化でもある。その再興を進めることが、地域の活力を取り戻すことにつながるはずだ。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年03月02日  02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【余禄】:「知らないことを自覚している」という…

2024-03-03 02:04:30 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【余禄】:「知らないことを自覚している」という…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【余禄】:「知らないことを自覚している」という…

 「知らないことを自覚している」という「無知の知」で著名な古代ギリシャの哲学者、ソクラテスによる弁明は裁判で行われた。神を冒とくし、若者を堕落させたと告発されたソクラテスは、自ら無罪の論証を迫られた。熱弁を経てアテナイ市民は有罪と死刑を決するが、その判断に従う

衆院政治倫理審査会で、立憲民主党の野田佳彦元首相(右)の質問を聞く岸田文雄首相=国会内で2024年2月29日午後2時41分(代表撮影)

 ▲さて、裏金問題を巡り行われた政治倫理審査会における、岸田文雄首相ら自民党議員による弁明である。完全公開となり、首相自ら進んで出席しての15年ぶりの開催だった。どんな踏み込んだ弁舌をふるうのかと思ったが、おおむね従来説明の繰り返しに終わった

 ▲総額6億円を超す自民党ぐるみの醜聞である。安倍、二階派の事務総長や経験者らは裏金システム作りに関与しておらず、できた経緯も不明だと口をそろえた

 ▲西村康稔前経済産業相は、安倍派事務総長時代に安倍晋三元首相の意向でいったん現金還流は廃止されることになったと明かした。安倍氏亡き後、なぜ覆ったのか。詳細が不明なまま済む問題ではない

 ▲そもそも首相は何のために出てきたのか。政倫審をよそに自民は来年度予算案の強引な採決に動き出し、与野党対立のあおりで国会は混乱している。これでは解明ではなく、日程消化を進めるため悪用したのかと勘ぐりたくなる

 ▲「無知の知」とは大違いの「知らない」という無知ばかりを連発されても、国民のいらだちは増すばかりだ。やはり証人喚問など国会の責任ある場での究明が必要だ。そう痛感させた、政倫審の弁明である。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】  2024年03月02日  02:06:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説①》:岸田首相と政倫審 何のために出て来たのか

2024-03-03 02:03:50 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

《社説①》:岸田首相と政倫審 何のために出て来たのか

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①》:岸田首相と政倫審 何のために出て来たのか

 裏金づくりの実態を解明し、失われた政治への信頼を回復しようという意思が感じられない。

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡り、衆院の政治倫理審査会が開かれ、岸田文雄首相が出席した。自ら申し出たもので全面公開された。開催は15年ぶりで、現職首相の出席は初めてだ。

衆院政治倫理審査会の冒頭、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件について陳謝する岸田文雄首相=国会内で2024年2月29日午後2時8分(代表撮影)

 冒頭、首相は党総裁としておわびし「説明責任を果たす」と語った。だが、予算委員会でのこれまでの答弁や、党の聞き取り調査の結果をなぞる姿勢に終始した。

 調査はあくまでも再発防止の観点を重視したもので、裏金づくりが続いてきた経緯については「確認できなかった」と弁明した。

 政倫審は、疑惑が浮上した時、政治的・道義的な責任の有無を審査するのが目的だ。新しい事実や今後の取り組みについて、何一つ具体的に明らかにしないのでは、何のためにわざわざ出席したのかわからない。

 岸田派についても、政治資金収支報告書の不記載額が約3000万円に上ったのは「転記ミスなど事務処理上の疎漏によるもの」と従来の説明を繰り返した。

 首相が大規模な政治資金パーティーを2022年だけで7回も開いたことは「勉強会」と言うばかりだった。追及されてようやく、今後、首相在任中は開催しないことを、渋々受け入れた。

 二階派事務総長の武田良太元総務相は「経理だけは事務局長にすべて任せていた」と説明した。

 自身も派閥会長の二階俊博元幹事長も、虚偽記載は全く知らなかったというが、二階氏らに直接、聞かなければ真相究明にはつながらない。

 政倫審を巡っては、安倍派幹部らが非公開を求めて調整が難航し、首相が自ら出席を唐突に申し出るという窮余の策で、何とか開催にこぎつけた。だが、首相の姿勢は、来年度予算案の年度内成立を確実にするための道具として、政倫審を扱ったと見られても仕方がない。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年03月01日  02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説②》:大相撲で相次ぐ暴力 角界挙げて悪弊絶たねば

2024-03-03 02:03:40 | 【事件・未解決・犯罪・疑惑・詐欺・闇バイト・オウム事件・旧統一教会を巡る事件他】

《社説②》:大相撲で相次ぐ暴力 角界挙げて悪弊絶たねば

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②》:大相撲で相次ぐ暴力 角界挙げて悪弊絶たねば

 大相撲は暴力と決別したはずではなかったか。今の体質を抜本的に改めなければ、角界は社会から取り残されてしまうだろう。

 宮城野部屋の幕内・北青鵬が後輩力士に暴行を重ね、22歳で角界を去った。日本相撲協会は引退勧告処分が相当との判断を示した。

臨時理事会後、宮城野部屋の前で謝罪する宮城野親方(左)と北青鵬=東京都墨田区の宮城野部屋で2024年2月23日午後2時51分、村社拓信撮影

 2022年夏から、同じ部屋に所属する2人の力士の顔面や背中を殴打したり、ほうきの柄で尻をたたいたりしていたという。殺虫剤スプレーに点火した炎を体に近づける危険行為もあったとされる。なぜ見過ごされてきたのか。

<picture><source srcset="https://cdn.mainichi.jp/vol1/2024/03/01/20240301ddm005070073000p/9.webp?2" type="image/webp" />引退に追い込まれ、記者会見で頭を下げる当時の日馬富士(手前)と伊勢ケ浜親方=福岡県太宰府市で2017年11月29日午後2時39分、矢頭智剛撮影</picture>
引退に追い込まれ、記者会見で頭を下げる当時の日馬富士(手前)と伊勢ケ浜親方=福岡県太宰府市で2017年11月29日午後2時39分、矢頭智剛撮影

 元横綱・白鵬の宮城野親方は事態を把握しながら、協会へ速やかに報告していなかった。監督責任を問われ、「委員」から「年寄」への2階級降格処分を受けた。師匠として認識が甘かったと言わざるを得ない。 

 07年には時津風部屋で新弟子の暴行死事件が起きた。17年には当時横綱の日馬富士が同じモンゴル出身の後輩力士に酒席でケガをさせ、引退に追い込まれた。

 そのような状況を重く見た協会は、18年に「暴力決別宣言」を発表し、禁止規定も設けた。しかし、それ以降も力士や親方の暴行が次々と明るみに出ている。

 番付が全てという角界には「強い者こそ正義」との風潮がある。後輩力士や付け人への理不尽な行為も「かわいがり」という言葉で許容されてきた面は否めない。

暴力問題の再発防止についての研修会で日本相撲協会の八角理事長の講話を聞く当時の横綱・白鵬(前列中央)ら=東京・両国国技館で2017年12月21日午後1時34分、長谷川直亮撮影

 競争の中から強い力士が育ってくるのは確かだ。だが、その陰で悪質な振る舞いが横行するようでは、大相撲の世界を目指す子どもたちは減っていくだろう。

 今年の初場所で番付表に載った力士数は599人で45年ぶりに600人を下回った。少子化の影響などから新弟子不足は深刻で、親方衆は危機感を募らせている。

 暴力根絶への対応は、力士に研修を行う程度では不十分といえる。協会はまず相撲部屋の環境を点検し、古くからの習慣を改めるべきだ。

 その上で内部通報制度を周知徹底させるなど、暴力を未然に防ぐ仕組みを整える責任がある。

 暴行に及んだ力士を辞めさせ、親方に処分を下しただけでは、体質改善は難しい。角界全体の意識を変え、悪弊を絶つ覚悟が今度こそ求められている。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年03月01日  02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【余禄】:米時間の10日夜に発表される米アカデミー賞の…

2024-03-03 02:03:30 | 【第二次世界大戦・敗戦・旧日本軍の功罪・東京大空襲他・犠牲者へ無補償

【余禄】:米時間の10日夜に発表される米アカデミー賞の…

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【余禄】:米時間の10日夜に発表される米アカデミー賞の…

  米時間の10日夜に発表される米アカデミー賞の有力候補、米映画「オッペンハイマー」と視覚効果賞部門にノミネートされた「ゴジラ―1.0」。二つの映画をつなぐのがきょう70年を迎える「ビキニ事件」だろう

放射線測定器を使って第五福竜丸の船体を調べる大阪市立医科大学の西脇安博士(奥右)と妻のジェーンさん(手前)=静岡県焼津市で1954(昭和29)年3月17日、写真部員撮影

 ▲米国がマーシャル諸島のビキニ環礁で広島型原爆の1000倍の威力という水爆実験を行ったのが1954年3月1日。周辺で操業していた「第五福竜丸」など多くの漁船や強制移住させられた島民らが「死の灰」を浴びた

 ▲「原爆の父」、オッペンハイマー博士は広島、長崎への投下後「手が血で汚れている」と核開発から距離を置き、水爆開発に反対した。公職を追われたのはビキニ実験の翌月だ。水爆実験で安住の地を奪われたという設定の初代ゴジラは同じ年の11月にデビューした

映画館に設置された「オッペンハイマー」の広告=米南部バージニア州で2023年8月5日、西田進一郎撮影

 ▲「雪のような粒子はやむことなく量を増しながら降っている」と島民が記録している。「光と轟(とどろ)きが雪に化けて。太平洋の真中から。ビキニ。島の名でない新しい地獄の門から」。草野心平の詩「ビキニ微塵」である

 ▲人類滅亡まで「残り90秒」。ロシアのウクライナ侵攻後、過去最短を記録した「終末時計」の針は今年も同じ位置にある。米国はロシアの宇宙への核配備計画を疑っている

 ▲「水爆と云(い)う怪物をお前が爆発さすから俺もやるとお互いに強力な物を次々と造り爆発させたら、第二、第三の僕達が生まれて来る事は必ず有ると思います」。事件の半年後に亡くなった第五福竜丸の久保山愛吉さんが手記に残した言葉が重く響く。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】  2024年03月01日  02:07:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説①》:裏金事件の政倫審 目に余る自民の迷走ぶり

2024-03-03 02:02:50 | 【政治とカネ・政党交付金・「企業・団体献金」・政治資金・議員歳費・賄賂・後援会

《社説①》:裏金事件の政倫審 目に余る自民の迷走ぶり

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①》:裏金事件の政倫審 目に余る自民の迷走ぶり

 派閥裏金事件を審査する衆院の政治倫理審査会を巡り、自民党の迷走ぶりが目に余った。政治に対する国民の不信を本気で払拭(ふっしょく)するつもりがあるのか。これでは疑わざるを得ない。

 29日に岸田文雄首相らが出席し、ようやく開かれることとなった。当初、安倍派幹部ら5人が出席して28日から開催することで与野党が大筋合意していたが、ずれ込んだ。全面公開での審査を主張する野党に対し、自民が難色を示し、折り合いが付かなかったためだ。

自身の衆院政治倫理審査会の出席について取材に応じる岸田文雄首相=首相官邸で2024年2月28日午前10時49分、竹内幹撮影

 事態の膠着(こうちゃく)で窮地に追い込まれた首相が、自らの出席を表明するという奇策に打って出た。公開での質疑を拒んでいた安倍派幹部も応じざるを得なくなった。

 深刻なのは、この間に明らかになった自民の統治不全だ。

 本来なら首相が党総裁として関係議員に対し出席を指示すれば済む話である。にもかかわらず、「国会で決めていただく」と繰り返し、行き詰まるまで積極的に動こうとした様子はうかがえない。

 関係議員が出席を渋って逃げ回る中、党執行部も互いに責任を押し付け合うような振る舞いに終始し、当事者意識を欠いた。

 国民への説明責任を果たすという当たり前のことすら決められず、混乱を長引かせた。

 開催するのであれば、真相解明につなげなければならない。

 最大の焦点は、安倍派が長年どのように組織的な裏金作りを続けてきたかを明らかにすることだ。

 少なくとも森喜朗元首相が派閥会長だった約20年前から行われていたというが、始まった理由や経緯は判然としない。

 2022年には当時会長だった安倍晋三元首相が一旦中止する方針を示したという。にもかかわらず、安倍氏の死後に誰の判断で継続することになったのか。安倍派幹部の「5人衆」は知り得る立場にいたはずである。

 裏金が何に使われたかも問題だ。政治資金収支報告書に派閥パーティー券収入の還流や「中抜き」を不記載とした全議員が、使途を明らかにする責任がある。

 安倍派幹部らは政倫審で実態をつまびらかにすべきだ。「知らぬ、存ぜぬ」と繰り返すだけでは、政治家としての「倫理的義務」を果たしたことにはならない。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年02月29日  02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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