【社説①】:早大入試で不正 先端機器の悪用をどう防ぐか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:早大入試で不正 先端機器の悪用をどう防ぐか
デジタル技術の進歩で入試の不正行為が巧妙化している。試験監督の強化などで対応しきれるのか。国や大学当局は、不正防止の具体的な方策を改めて検討すべきだ。
早稲田大の一般入試を受けた男子受験生が、試験中に眼鏡型の電子機器「スマートグラス」で問題用紙を撮影し、SNSで外部に送って解答を依頼したとして偽計業務妨害容疑で書類送検された。
警視庁によると、男子受験生は撮影した設問の画像を手元のスマートフォンに転送し、SNS上で複数人から解答を得ていた。答えを送ってくれた人には、報酬を支払っていたとされる。
男子受験生は「国立大に落ち、他の大学も落ちることが不安で、不正を思いついた」と供述しているという。入試の不正は、他の受験生が積み重ねた努力を踏みにじる行為で、決して許されない。
男子受験生は、早大の受験が無効となり、刑事処分の対象にもなった。代償は極めて大きい。
デジタル機器を悪用したカンニングは、近年相次いでいる。2022年には大学入学共通テストや一橋大の入試で、スマホや小型カメラを使い、外部に解答を求めた行為が発覚している。
その後、大学入試センターは共通テストの開始前、スマホを机の上に出し、電源を切ってカバンにしまうよう指示している。ただ、スマホを2台以上持つ人もおり、不正を防ぐのは容易ではない。
眼鏡型のスマートグラスは、遠隔地にいる人とも同じ目線で画像が共有できるため、農業や医療の現場などで活用されている。
身につけるタイプの情報機器は腕時計型などもある。目に直接装着する「スマートコンタクトレンズ」の開発も進んでいる。今後は生成AI(人工知能)を使った不正も起きるかもしれない。
刻々と進化するデジタル技術に対応するため、文部科学省や各大学は、技術者からも意見を聞きながら、国公私立の枠を超えて再発防止策を考える必要がある。
試験会場に外部との通信を遮断する装置を設置する方法もあるが、多額の費用がかかる点がネックだとされる。会場の規模や試験の内容などに応じて、合理的な対策を模索してほしい。
22年には、就活生向けに企業が行ったウェブ上の適性検査で、替え玉受検も発覚した。不正を働いてでも大学や企業に入ればどうにかなると考えたのだろうが、本当に合格できる実力がなければ、後で苦しむのは目に見えている。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年05月17日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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