【社説②】:中露首脳会談 蜜月関係が世界の安定脅かす
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:中露首脳会談 蜜月関係が世界の安定脅かす
不毛な侵略戦争を続けて国力を消耗しているロシアが、いかに深く中国に依存しているかを、改めて浮き彫りにした首脳会談だった。
プーチン露大統領と中国の習近平国家主席が北京で会談し、経済や安全保障など幅広い分野で協力を深めることで合意した。プーチン氏の訪中は昨年10月以来で、今月7日に通算5期目の任期に入ってから初の外国訪問だ。
会談後に発表された共同声明で、両首脳は中露関係について「歴史上最良の時期を迎えている」と自賛した。中露が「内政への干渉や、経済、テクノロジー、外交を制限しようとするいかなる試みにも抵抗する」とも記した。
両国の結束を強調することで、ウクライナ侵略や台湾問題で対立する米欧などをけん制したつもりなのだろう。
共同声明にはまた、中露貿易の拡大や、経済取引での双方の通貨利用など、経済面で関係強化を目指す文言が並んだ。
ウクライナ侵略後、米欧日は制裁措置として、ロシアの金融機関を国際的な決済ネットワークから排除し、ロシアの石炭や原油の輸入も原則禁止している。
プーチン氏は今回、エネルギー、金融の担当閣僚や主要企業のトップを多数同行させた。制裁に加わっていない中国との貿易を一層拡大して戦時下でも経済を安定させ、同時に戦費を調達するという狙いがあるのではないか。
中国の支援がなければ、ロシアは侵略を継続できなくなりつつある実態を示しているようだ。
一方、習氏も会談で「中露関係の発展は、地域と世界の平和、安定、繁栄に資する」と述べ、両国の関係強化に期待を示した。
米中対立が深刻化する中、習氏としては、ロシアを支えることで、米国に対抗する立場を強化したいと考えているのだろう。
中国は、半導体など軍事転用可能な物資をロシアに輸出し、ウクライナでの戦闘継続を手助けしている、との見方は多い。だが、侵略を事実上後押しする振る舞いを続けていれば、国際社会での中国の信用は低下しよう。
米欧日は中国に対し、ロシアとの関係を見直すことが「責任ある大国」のあるべき姿だと、粘り強く説き続けねばならない。
中露首脳は「ウクライナ危機の政治的解決」が重要だとの認識でも一致した。侵略を仕掛けた張本人が、撤退もせず、侵略の果実を握ろうという「政治的解決」を主張するとは、虫が良すぎる。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年05月18日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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