【天風録・12.27】:こたつグマ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録・12.27】:こたつグマ
中国山地を下る江の川のカワウは、人影に目ざとい。こちらが車の中なら双眼鏡を向けても平気なのに、降り立つと一変する。100メートル先の対岸でも見逃さず、バタバタと群れごと飛び立つ。先祖代々、よほど痛い目に遭ってきたのだろう
▲その点、広島市の太田川下流に生活の根を下ろしたカワウは神経がずぶとい。出くわしても慌てるどころか、橋から人間がのぞき込む鼻先で潜り、魚を追う。野性を忘れてしまったのか
▲東北では今月、人騒がせなツキノワグマが相次いでいる。秋田でスーパーマーケットに居座ったかと思えば、福島では民家のこたつに頭を突っ込んでいたという。「頭隠して尻隠さず」を絵に描いたようで滑稽だが、笑うに笑えない
▲既に冬眠していてもおかしくない、雪の季節である。福島の地元自治体によると、この秋は餌になるブナやナラの実が豊作だったらしい。凶作だった1年前に、味を占めていたのかもしれない。人里に近づけば、何かおいしいものが待っている、と
▲裏山にクマがすむ中国地方にとって、「対岸の火事」ではなく「他山の石」だろう。それに、野性を失ってしまったのは、むしろ私たち人間の方だとも思えてくる。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】 2024年12月27日 07:00:00 これは参考資料です。転載等は、各自で判断下さい。
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