【社説②・05.10】:マイナ保険証 年内一本化 混乱を懸念
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・05.10】:マイナ保険証 年内一本化 混乱を懸念
現行の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードに機能を持たせた「マイナ保険証」に一本化するまであと半年余りとなった。
全国のマイナ保険証利用率は3月で5%台と低迷するが、政府は予定通り12月に実施する考えだ。
マイナンバーと保険証のひも付けミスは判明分で9千件以上に及ぶ。政府は再発防止策を講じたというが国民の不信感は拭えない。
河野太郎デジタル相は自民党国会議員に対し、マイナ保険証が利用できない診療所や病院について支援者に情報提供するよう呼びかける文書を配布していたという。
強権的に映る手法は反発を招きかねず、実施時に混乱が生じる恐れがある。最長1年という現行の保険証使用の猶予では済まない。年内一本化の方針を撤回し、制度を再考するよう求めたい。
厚生労働省の調べでは都道府県別利用率は沖縄が2.7%、鹿児島が9.5%など地域でばらつきがある。道内は5.7%である。
また、病院の12.5%に対し規模の小さな診療所は5.2%、薬局が4.1%など身近な施設ほど利用が進んでいない。
国は今月から7月までを促進月間として利用者が増えた施設に一時金を支給する。既に1月から217億円を計上し利用件数分の支援金を出し、来月にはデジタル化に対し診療報酬も加点する。
無駄を排除して膨張する医療費を抑制するのがマイナ保険証導入の目的だったはずだ。やみくもに利用率を上げようと巨費を投じるのは本末転倒ではないか。
国は医療機関同士で利用者の情報を共有できるのがメリットと強調してきた。だが現在利用できるのは薬剤情報や診察履歴、メタボ健診の結果などにとどまる。
薬剤情報は「お薬手帳」で間に合う。血液検査やCT画像など患者と医師双方に有益な情報共有のシステム構築は検討段階という。
マイナカード自体も各地で誤交付が相次ぎ、福島県で委託業者が個人情報を私的利用するなど不祥事も起きた。システムや情報管理に問題ありと言わざるを得ない。
能登半島地震では被災者にJR東日本のICカード「Suica(スイカ)」が配布され、避難所の情報管理に利用された。
河野氏自ら「本来はマイナンバーカードでやるべきだが読み取り機の準備が間に合っていない」と述べ、不備を認めている。
デジタルに不慣れな高齢者ほど保険証の利用機会は多い。紙の保険証廃止を急ぐべきではない。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年05月10日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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