【社説・12.22】:闇バイト対策 あらゆる手段で撲滅図れ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.22】:闇バイト対策 あらゆる手段で撲滅図れ
国民の「体感治安」は悪化している。捜査当局は新たな捜査手法を適切に活用し、卑劣な犯罪の撲滅に全力を挙げねばならない。
首都圏を中心に各地で相次ぐ闇バイトが絡む強盗事件を受け、政府が緊急対策をまとめた。柱となるのは「仮装身分捜査」の来年早期の導入だ。
一連の強盗事件は、交流サイト(SNS)などを通じて緩やかにつながり、犯罪ごとに離合集散する「匿名・流動型犯罪グループ(匿流)」による犯行とみられる。
SNS上に「高収入」などと詳細を明かさずに求人情報を投稿し、応募者に身分証などの個人情報を送信させた後、脅迫して犯罪に加担させている。
仮装身分捜査は、捜査員が募集に応じたふりをし、架空の運転免許証などを送信して犯人に接触する手法だ。
強盗の実行前に集まったメンバーを摘発することを想定する。応募者に警察官がいるかもしれないと思わせ、闇バイトの募集や応募をためらわせる抑止効果も狙う。
捜査員が積極的に身分を偽る任意捜査を導入するのは初めてだ。捜査員が身分や目的を隠して犯罪をするように働きかけ摘発する「おとり捜査」とは、犯罪を誘発しない点で異なっている。
導入は長年検討されてきたが、架空の身分証の作成が公文書偽造罪に当たるとの懸念から実現に至っていなかった。闇バイト捜査の拡充を探る中で「正当な業務は罰しない」との刑法の規定から違法性は退けられると判断した。
警察にはあらゆる手を尽くして国民を守ってほしい。ただ気になるのは乱用への懸念だ。
警察庁は仮装身分捜査を闇バイト関連事件のみに適用する方針で、具体的な運用指針を作る計画だ。野放図に適用範囲を拡大して人権侵害を招くことがないようにしてもらいたい。
闇バイト対策ではほかに、SNS事業者にアカウント開設時の本人確認の厳格化を要請する。違法な求人情報を明確に定義し、削除を促す対策も進める。
総務省は既にX(旧ツイッター)など5社に要請を行っている。表現の自由や通信の秘密に十分配慮しながら、事業者の側も協力してほしい。
しかし、犯人グループが使う秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」や「シグナル」などを提供する海外事業者は、日本に窓口がない。総務省は日本法人窓口の設置を働きかけるとするが、どれだけ実効性があるかは見通せない。
匿流による卑劣な犯罪の根絶には実行役だけでなく、指示役や首謀者の摘発が不可欠だ。警察には引き続き力を尽くしてほしい。
実行役は逮捕されやすい「捨て駒」で、使い捨てにされるだけだ。闇バイトには絶対に手を出してはならない。
元稿:新潟日報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月22日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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