【小社会・12.23】:雇われたふり作戦
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【小社会・12.23】:雇われたふり作戦
遊び人に身をやつして敵地に潜入し、庶民を泣かせる悪事を目の当たりにする。お白州でしらを切る悪人に「この桜吹雪に見覚えねえか」。ふと遠山の金さんが短絡的に浮かんだのは、テレビ時代劇の隆盛期に育ったせいだろう。
各地で相次ぐ強盗事件。交流サイト(SNS)を通じ、実行役を募る闇バイトの緊急対策を政府がまとめた。捜査員が架空の身分証を使って、バイトに応募。摘発や防止を狙う「仮装身分捜査」を、来年の早期に導入する。
特殊詐欺の「だまされたふり作戦」に続き、「雇われたふり作戦」と呼ぶらしい。むろん、悪化を実感する治安の改善に役立てばいい。ただ、金さんほどスカッとはいかない側面もいわれる。
実行役には接触できても、秘匿性の高い通信アプリを使う上位者までたどり着けるか。摘発のタイミングも難しそうだ。誤れば、被害者や潜入した捜査員にも危険が及ぶ。特例的な捜査手法の適用範囲を安易に広げないよう、明確な歯止めも必要になる。
ことしは高知でも、SNSで緩やかに結びついた犯行グループの詐欺事件が明るみに出た。「ルフィ」は遠い世界の話ではない、と以前の本紙にもある。対策をいうならば、高額の報酬につられ、軽々と「闇」に近づいているように見える若者らの環境も見据えるべきなのだろう。
時代劇とは違って現実は一網打尽、一刀両断とはいくまい。知恵を絞るべきときは続きそうだ。
元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【小社会】 2024年12月23日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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