【金口木舌・01.11】:土地にまつわる物語
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌・01.11】:土地にまつわる物語
「『その土地を売るなら家から出て行け』って言ったって」。正月に実家に寄ると、近い親族の間でそんな話があったと聞いた。「時代遅れの考え方だ」。反射的に嫌悪感を抱いた
▼詳しく聞くと印象は変わった。土地は財産の乏しかった曽祖父が農作業を手伝って分けてもらったもので、苦労して手に入れた土地を簡単に手放そうとすることを、高齢の親族がとがめたということだった
▼私たちの身近にある土地の動向も気になるところだ。2023年度、在沖米軍基地用地の所有者の1割が県外居住者となった。相続や贈与のほか、投資目的の売買の増加もあるとみられるという
▼沖縄の米軍基地の多くは民有地だ。沖縄戦で上陸した米軍は住民を収容所に強制隔離する間に土地を奪って基地を建設した。戦後も「銃剣とブルドーザー」と呼ばれた強制接収などによって住民から強奪した土地だ
▼土地の売買という経済活動は自由だが、背景にも目を向ける必要がある。米軍基地から派生する事件・事故、騒音被害や環境問題が深刻なだけに、なおさらだ。私たちの生活と地続きの「土地の物語」に目をつぶっていいはずがない。
元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】 2025年01月11日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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