路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【社説・05.03】:安保政策の変容 憲法を政権制御の手綱に

2024-05-04 06:05:45 | 【国家安全保障、国家防衛戦略・敵基地攻撃能力・サイバー攻撃・アメリカの戦略文書】

【社説・05.03】:安保政策の変容 憲法を政権制御の手綱に

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・05.03】:安保政策の変容 憲法を政権制御の手綱に 

 人権侵害の恐れがある法律なのに、住民には十分な説明がない。

 法律の影響を詳しく知られたくない、というのが行政の本音だろう。福岡県築上町に住む渡辺ひろ子さん(75)はそう考える。

 今年1月、土地利用規制法に基づく区域指定に、築上町にある航空自衛隊築城基地の周辺が追加された。安全保障上重要な施設の周辺の土地利用を規制する措置で、全国では約580カ所が指定されている。

 この法律により、国は区域内の土地所有者の情報や利用実態を調査できる。市民のプライバシー、思想・良心の自由、財産権などが侵害されるとの批判が根強い。

 町議会で議員が町に要望した住民説明会は、結局開かれることがなかった。隣接する行橋市みやこ町も同じだ。

 築上町は広報紙とホームページで指定区域を告知した。それだけでは足りない。区域内に土地を持つ渡辺さんの複数の知人は指定を知らなかったという。

 安保関連施策が、国民を置き去りにしたまま進んでいく。渡辺さんの懸念は膨らむばかりだ。

■形骸化する民主主義

 こうした風潮の起点となったのは2014年だ。当時の安倍晋三政権は、歴代政権が違憲としてきた集団的自衛権の行使を閣議決定で容認した。この後、日本の安保政策は変容を続ける。

 現在の岸田文雄政権は防衛費の増額、専守防衛の原則に反する疑いが濃厚な反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有に踏み切った。

 岸田首相は先月訪米し、日米同盟の強化を宣言した。バイデン大統領との共同声明で、両国を地球規模で協働する「グローバル・パートナー」と位置付けた。

 米議会では、日本は米国と「共にある」と演説した。日本が米国の世界戦略に際限なく引きずり込まれることを危惧する。

 覇権主義的な動きを強める中国や、核・ミサイル開発を進める北朝鮮の存在は無視できない。それでも、対米公約を最優先し、国会での議論を軽視する首相の姿勢は看過できない。民主主義を形骸化させてはならない。

 戦後日本が築いた平和主義を基軸とする安保政策の原則が、なし崩し的に壊されている今こそ、私たちが使うべきものがある。憲法だ。憲法は為政者の権力を縛るためのものである。憲法記念日のきょう、改めて確認したい。

■国民が声を上げよう

 憲法99条は「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と定める。

 憲法学者の小林節慶応大名誉教授は共著の中で「国民が権力に対して、その力を縛るものが憲法です。憲法を守る義務は権力の側に課され、国民は権力者に憲法を守らせる側なのです」と明言している。これが通説である。

 住民団体の代表を務める渡辺さんは、35年前から毎月2日、築城基地前で基地反対の座り込みを続けている。自衛隊の役割の変化を間近で見てきたからこそ、平和憲法の理念から懸け離れた施策を推し進める国に対し、国民が「きちんとノーと言わなければ」と話す。私たちも自戒したい。

 見逃せないのは、憲法改正を目指す自民党が、憲法は国民をも縛ると考えていることだ。

 党のホームページにある「憲法改正ってなぁに?」の4こま漫画で「リーダーも国民もみんなが憲法に従う義務があるんだ」と説明している。到底容認できない。

 岸田首相は、自民党総裁任期の9月までに憲法を改正する目標を立てている。時間的な制約が強まっても、なお「一歩でも二歩でも前進すべく努力を続ける」と意欲を示す。

 大規模災害や武力攻撃を想定した緊急事態条項の新設、憲法に自衛隊を明記することなど、自民党の改憲案には賛否両論ある。慎重に議論する必要がある。

 私たちは改憲論議を否定はしない。ただ、今は現行憲法という手綱を国民が握り、先走る政権を制御すべき時だと考える。

 元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年05月03日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。


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