【社説・12.14】:維新新体制/存在感発揮へ原点回帰を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.14】:維新新体制/存在感発揮へ原点回帰を
日本維新の会の新代表に吉村洋文大阪府知事が選ばれた。与野党が伯仲し混迷する国会で、野党第2党として存在感を発揮できるのか。多くの課題を抱える中、国政政党トップと首長の「二足のわらじ」で党勢回復を担う吉村氏の責任は重い。
維新は昨年の統一地方選で躍進し全国政党化への足掛かりを得た。しかし立憲民主党を上回る野党第1党を目標に掲げた衆院選では、公示前の43議席を下回る38議席にとどまった。地盤とする関西以外で苦戦を強いられ、比例票も前回選から約300万票減らした。馬場伸幸前代表は敗北の責任を問われて退任した。
立民や国民民主党が議席を大きく伸ばす中、なぜ維新は退潮したのか。吉村氏ら新執行部は衆院選を総括し、議席減の要因を真摯(しんし)に反省し再建につなげる必要がある。
馬場前代表は「第2自民党でいい」と発言するなど、与党への接近が目立った。通常国会で焦点となった政治資金規正法改正案を巡り、衆院の採決では自民に同調して賛成したが、参院では一転して反対に回るなど迷走した。曖昧な立ち位置が有権者には「政権の補完勢力」と映り、「改革政党」のイメージも薄れたことが響いたといえる。
党内では所属議員や首長、候補者の問題発言やハラスメントなどの不祥事が絶えない。維新が推薦した兵庫県の斎藤元彦知事がパワハラ疑惑などを告発された問題でも対応が後手に回り、政党支持率の急落につながった。推進する大阪・関西万博の開催経費の膨張も不信を招く。
吉村氏は代表選で「既得権とぶつかり改革する」「永田町のど真ん中にいないからこそ変えられる」と原点回帰を強調した。党のガバナンスを立て直し、信頼回復への道筋を示せるか、具体策が求められる。
政権との距離も問われる。吉村氏は「対峙(たいじ)する」とし、来夏の参院選1人区での野党候補一本化や統一候補を決める予備選を唱えた。野党結集を訴えてきた前原誠司元外相を国会議員団トップの共同代表に据えたのも、方針転換の表れとの見方が広がる。これまで野党共闘とは一線を画してきただけに、他党の理解や納得を得る努力が不可欠だ。
一方で、政策実現に向け自民、公明両党とも交渉の余地を残す。2024年度補正予算案にも最終盤で賛成に回った。少数与党に陥った石破茂首相は国民民主の協力で国会を乗り切ろうとするが、政権への安易なすり寄りは、党の存在意義を失う恐れがあることを忘れてはならない。
既存の政党にできない改革を実現し、地方から国政を変える。結党の原点に立ち返り、政党としての基盤をしっかり固め直す時だ。
元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月14日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます