【卓上四季】:球春来る
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【卓上四季】:球春来る
長嶋茂雄さんが巨人の現役晩年の冬に、静岡県の伊豆・大仁で自主トレーニングを行っていた時のことだ。ランニング中に後ろをトレパン姿の若者3人が遠慮がちについてくる。長嶋さんは「お茶でも飲んでいってください」とホテルのティールームに誘った
▼「若い衆たちはつとめて朗らかな話題を選んでくれているのが、ぼくには痛いほどわかった。湿っぽい限界説談義などいっさい抜き」「こういうファンがついていてくれることがわかっただけで、ぼくはどんなに力強かったか」と自伝「燃えた、打った、走った!」に記す
▼スターとファンの距離が今より近かったよき時代なのだろうが、ファンが大切な存在であることに変わりはない。北海道日本ハムの今季のスローガンは新庄剛志監督発案の「ファンは宝物」。今週、沖縄県名護市でいよいよキャンプインだ
▼球界では自主トレ期間中に選手のコロナ感染が相次いだ。新庄効果に期待していたホテルの予約も低迷しているとの記事を地元紙のサイトで読んだ
▼それでも南国から伝えられる球春の便りには、遠い雪国に暮らす者として毎年心躍るものがある
▼「球春」は俳人の坪内稔典さんが16年前に著書「季語集」(岩波新書)で採用し、季語としても広がってきたようだ。「球春のファウルボールは雲の中」(小枝恵美子)。心地よい打球音がスタジアムに響く季節がまたやって来る。2022・1・30
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】 2022年01月30日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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