【社説①・01.10】:金利のある世界 日銀は不安拭う展望を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.10】:金利のある世界 日銀は不安拭う展望を
日本銀行が金融政策正常化にかじを切ったことで預金や生命保険などの利回りが改善し「金利のある世界」が到来した。
プラス面の一方、低金利に慣れた企業の資金調達や個人のローン返済には不安が拭えない。今年の日銀は利上げを緩やかに進め、経済の好循環につなげる展望を示す必要がある。
気がかりなのは米国の動きだ。今月就任するトランプ大統領の関税重視政策によっては急激なインフレを招きかねない。
昨年は3会合連続で利下げした米連邦準備制度理事会(FRB)だが、今年の見通しは2回にとどまる。インフレ局面で引き締めに転じる可能性もある。
日米金利差が開けば円安加速で物価高と不況が同時進行してしまう。政府・与党から利上げをけん制する動きがあっても日銀は独立性を保ってほしい。
昨年は日銀が11年間続けた「異次元の金融緩和」を転換した画期的な年だった。3月にマイナス金利政策を解除し、7月は追加利上げに踏み切った。
植田和男総裁は先月の会見で次の利上げは「もう1ノッチ(段階)ほしい」と述べ今後の賃上げ傾向を見極める姿勢だ。
賃金の伸びが物価に追いつかない中での金利上昇は住宅ローンなどが家計を圧迫する。慎重にタイミングを図ってほしい。
今後の金融政策を考える上でアベノミクスの柱だった異次元緩和の検証は欠かせない。
先月まとめた日銀の多角的レビューでは「想定していたほどの効果は発揮しなかった」と認めた。この点は評価できよう。
ただしその要因に「賃金・物価が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方」を挙げた。理論上は正しいのに国民のせいで失敗したかのようだ。
日銀の国債大量買い入れで、保有比率は11%から53%に急増した。借金依存の財政で社会保障の持続性に不安を感じ、倹約志向になるのは当然だろう。
レビューでは長期の大規模緩和は「副作用をもたらしうる」とも言及したが、踏み込み不足だ。なぜ失敗を認めず継続したのか、日銀任せでなく政府が多方面から考察すべきである。
長期の超低金利でしわ寄せを受けたのは家計だ。バブル期には総額年16兆円の受け取り超過だった利子所得を失った。
日銀の政策転換以降、貸出金利上昇などでメガバンクをはじめ北洋銀行、北海道銀行など地銀や信金の多くも好調という。
その恩恵を預金利息や金融商品でさらに家計に還元することこそが重要だ。そうでなければ本格的な景気回復は望めまい。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月10日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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