【社説・01.14】:メタ真偽検証廃止表明 偽情報抑制に逆行する
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・01.14】:メタ真偽検証廃止表明 偽情報抑制に逆行する
交流サイト(SNS)のフェイスブック(FB)などを運営する米メタが、SNSの投稿内容を第三者がファクトチェック(真偽検証)する仕組みを米国内で廃止すると発表した。「表現の自由」を名目に投稿の規制を緩和した格好だが、社会の分断につながる偽情報拡散を抑制する動きに逆行するものだ。
偽情報の放置は民主主義をも揺るがす事態を招く。「SNS時代」にあって、ネット上のファクトチェックの重要性はますます高まっている。廃止方針は撤回すべきだ。
廃止の対象はFB、インスタグラム、スレッズの3種類である。メタのファクトチェックは独立した機関に依頼して投稿の正確性を審査し、「虚偽」や「改変」などと評価している。規定に違反しているとメタが判断すれば、投稿を削除などする。現在100カ国以上、60以上の言語に広がる。現時点で日本での取り組みに変更はないという。
メタのザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は「トランプ次期大統領と協力し、米国企業に検閲を強要しようとする各国政府に対抗する」と述べた。トランプ氏はSNSの投稿管理に「不当な検閲」と訴えてきた。メタの新方針は20日の米大統領就任を前に氏の批判に呼応した形で、分断を助長する懸念が強い新政権にすり寄るものだ。
メタの新方針に、世界の検証機関でつくる国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)は、ザッカーバーグ氏に「メタが世界中でプログラムを停止すると決定すれば、多くの場所で現実世界に危害が及ぶことはほぼ確実だ」と警鐘メッセージを送った。
2016年の米大統領選では「ローマ法王がトランプ氏支持を表明」「クリントン氏が『イスラム国』(IS)に武器売却」などの偽情報があふれ、選挙への影響も指摘された。偽情報を信じて襲撃事件も実際に起きた。それらも背景に欧米では、政治家の発言やネット上の投稿の真偽を検証するファクトチェックが進む。旧フェイスブック(現メタ)がファクトチェックを導入したのは16年のことだ。
メタによると、毎日、投稿の1%未満に当たる何百万のコンテンツを削除していたという。その1~2割が規定違反ではない誤った削除の可能性があり、新方針はより多くの発言を認めるためだと説明する。だが誤削除の是正のために偽情報を野放しにしてしまうことになれば、導入前の混乱に逆戻りしかねない。
日本では24年7月の東京都知事選、10月の衆院選、11月の兵庫県知事選で、SNSやネット上の発信が影響を与えたと分析されている。
ネット上の偽情報や誹謗(ひぼう)中傷によって人の命が失われる事態が後を絶たない。より良い社会を形成・維持し、人の命を守るためにも、SNS利用が拡大する中、健全なネット言論環境を守る営みを止めてはならない。
元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月14日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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