《社説①》:電動キックスケーター 安全守る新制度の運用を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①》:電動キックスケーター 安全守る新制度の運用を
街なかの手軽な移動手段として広まりつつある電動キックスケーターについて、規制を緩和する改正道路交通法が成立した。
使いやすくなる一方、事故が増える恐れがある。安全を守る運用が欠かせない。
前後に車輪が付いた細長い板に立ち乗りし、ハンドルで操作する乗り物だ。現在は道交法上、原付きバイクと同様に扱われている。
改正法では、16歳以上なら運転免許がなくても利用できるようになる。最高速度が時速20キロ以下に設定されていることが条件だ。
自転車道や自転車レーンも走行可能になる。ヘルメットの着用は努力義務とされ、自転車に近い扱いに変わる。
ただ、現状でも事故や交通違反が相次いでいる。
昨年は全国で27件の人身事故が発生した。歩行者に重傷を負わせて逃げたケースもあった。
歩道や道路右側の走行、信号無視、飲酒運転など、違反の摘発も少なくない。
免許が不要になれば、ルールを学ぶ機会が減る。気ままに走って事故を起こしかねない。人を傷つけるだけでなく、自分が大けがをする危険性もある。
再来年とみられる改正法施行までに、安全教育を充実させるべきだ。学校や地域で取り組む必要がある。販売業者や貸出業者には、購入者や利用者に実施する努力義務が定められており、実効性のある体制が求められる。
時速6キロまでしか出せない設定なら、歩道を走れるようになることも問題だ。
車道と歩道で最高速度を切り替える車体が想定されている。しかし、現場での混乱は避けられないだろう。どこでも無制限に走行できるとの誤解も生じかねない。
歩道は歩行者のためにあり、危険にさらされることがあってはならない。警察による指導・啓発が不可欠だ。
電動キックスケーターの車道走行を促すには、自転車レーンの整備や路上駐車対策を進める必要もある。車のドライバーの意識改革も大切になる。
限られた道路スペースの中で、さまざまな移動手段を安心して使うことができる仕組みをつくらなければならない。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年04月24日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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