《社説②》:ウクライナ侵攻 日本のロシア人 国籍理由の差別許されぬ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②》:ウクライナ侵攻 日本のロシア人 国籍理由の差別許されぬ
ロシア軍のウクライナ侵攻後、日本で暮らすロシアの人々や店舗への嫌がらせが起きている。
侵略は国家としての行為で、言語道断だ。しかし、国民は個人として尊重されなければならない。
昨年6月時点で、9000人以上のロシア人が日本で暮らしている。仕事をしたり、学んだりしている「隣人」である。
だが、インターネット上には排除するような書き込みが目立つ。料理店へのネット上の中傷や無言電話もあった。
東京のロシア食品専門店では看板が壊され、スタッフが悲しみをツイッターにつづった。
滋賀県の旅館は、ロシア人の宿泊を拒否する文言をホームページに掲載していた。
あらゆる差別は許されない。国籍を理由に人を傷つけることは、あってはならない。
差別感情を容認するような動きが出ていることも心配だ。
東京のJR恵比寿駅では一時、ロシア語の案内板が「調整中」と書かれた張り紙で覆い隠された。
利用客から「不快だ」との声が寄せられたためだという。ネット上で問題となり、JR東日本は張り紙を外し、「不適切だった」と謝罪した。
北海道では、教授がロシア文学に関するイベントを大学側の要請で延期した。「嫌がらせをされるリスクがある」との理由だ。
こうした行為は、社会の差別的な風潮を増幅しかねない。
政府や自治体が、差別を許さないとの強いメッセージを出すことも重要である。
林芳正外相は、プーチン政権が引き起こした事態であることを強調し「ロシア人というだけで排斥したり、中傷したりしないよう呼びかけたい」と述べた。
責任ある立場の人が、さまざまな機会を捉え、繰り返し発信していくべきだ。いじめなどが起きないよう、学校での指導や目配りも求められる。
強権的な体制下にあるロシアから、脱出する人が増えている。日本に来る可能性もあり、受け入れに支障があってはならない。
差別は、市民レベルでの反戦の連帯に水を差しかねない。侵攻に反対するロシアの人々を支える必要がある。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年04月24日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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