【社説①】:北の発射予告 「人工衛星」に潜む軍事的脅威
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:北の発射予告 「人工衛星」に潜む軍事的脅威
北朝鮮が日本に対し、「人工衛星」を打ち上げると通告した。軍事偵察衛星の可能性がある。日米韓への脅威を増大させる暴挙を、国際社会は結束して中止させねばならない。
北朝鮮は、31日から6月11日の間に打ち上げを行うとしている。朝鮮半島西側の2か所と、フィリピン・ルソン島東側1か所の計3か所を、船の航行に影響がある危険海域に指定した。
南西諸島など日本の領域内に破片などが落下する恐れがあり、政府は自衛隊に弾道ミサイルの破壊措置命令を出した。
地対空誘導弾「PAC3」部隊や迎撃ミサイル「SM3」搭載のイージス艦が対処する。警戒監視を強め、不測の事態に備えた万全の態勢をとることが重要だ。
1967年発効の宇宙条約は、全ての国に宇宙開発の権利を認めている。だが、北朝鮮は国連安全保障理事会の決議で、「あらゆる弾道ミサイル技術を使った打ち上げ」を禁じられている。
人工衛星を打ち上げるロケットと弾道ミサイルの技術は基本的に同じだ。北朝鮮が仮にロケットで衛星を打ち上げるとしても、強行すれば国際法違反となる。
国連安保理は、北朝鮮に発射中止を要求し、発射した場合の制裁強化を警告する決議を迅速に採択しなければならない。非常任理事国の日本は、米国と共にこうした議論を主導する必要がある。中露は採択を妨げてはならない。
北朝鮮が今回言及した人工衛星は、金正恩・朝鮮労働党総書記が4月に打ち上げ準備を指示した軍事偵察衛星とみられる。
北朝鮮は過去にも、「衛星打ち上げ」と称して弾道ミサイルを発射してきたが、衛星の稼働は確認されていない。だが、近年の北朝鮮のミサイル開発の加速ぶりを見ると、偵察衛星の技術を獲得していてもおかしくはない。
北朝鮮が2021年に発表した国防5か年計画にも、軍事偵察衛星の運用が盛り込まれている。稼働すれば、米韓両軍や自衛隊の動きが監視されることになる。
ロケットから衛星を切り離す技術は、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の弾頭切り離しにも応用できる。正恩氏は衛星の発射を通じて米国に対する「抑止力」を高めたいと考えているのだろう。
日米韓は脅威の増大に対処するため、安全保障協力を一層強化する必要がある。北朝鮮はこうした動きを「差し迫った脅威」としているが、自らが地域の緊張を高めていることを認識すべきだ。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年05月30日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます