【社説②】:役所さん男優賞 高い演技力が世界を魅了した
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:役所さん男優賞 高い演技力が世界を魅了した
寡黙な主人公の心情を繊細に表現した高い演技力が世界に認められた。日本を代表する俳優の快挙を 称 えたい。
カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で、東京を舞台にした「パーフェクト・デイズ」に主演した役所広司さん(67)が男優賞を受賞した。
日本人の男優賞は、是枝裕和監督の作品「誰も知らない」の柳楽優弥さん(33)以来、19年ぶりだ。役所さんは、「やっと柳楽君に追いついたかな。賞に恥じないように頑張らなければ」と喜んだ。
ベテランの快挙は、後進の励みとなるはずだ。
「パーフェクト・デイズ」は、東京都渋谷区に快適な公共トイレの設置を進める財団などのプロジェクトに関連して制作された。役所さんが演じる寡黙な公共トイレ清掃員の暮らしを描く内容だ。
ドイツの著名映画監督ヴィム・ヴェンダースさんがメガホンを取った。プロジェクトの趣旨に賛同したほか、役所さんと仕事をすることを熱望していたという。
役所さんは、実際にトイレ清掃を学ぶなど 真摯 に作品と向き合った。平凡な日常の中で小さな出来事に幸せを感じて生きる主人公を淡々と演じ、見る人を感動させたことが評価されたのだろう。
東京・千代田区役所に勤めていた役所さんは、1978年に俳優の仲代達矢さんが主宰する「無名塾」に入り、俳優業を始めた。96年には映画「Shall we ダンス?」など話題作に次々と主演し、演技賞を総なめにした。
97年には、カンヌで最高賞パルムドールに輝いた今村昌平監督の「うなぎ」で主演を務めたほか、ハリウッド映画にも出演し、国際的に高い評価を得ている。
どんな役もこなせる幅広い演技力に定評があり、受賞は遅かったとも言える。さらに活躍の場を広げてもらいたい。
今回のコンペティション部門では、是枝監督の新作「怪物」の脚本を担当した坂元裕二さん(56)も脚本賞を受賞した。この部門で日本人のダブル受賞は初めてだ。脚本賞は一昨年の「ドライブ・マイ・カー」以来、2度目となる。
海外では日本のアニメ映画が人気を集めることが多いが、今回の結果は実写映画でも日本の作品の質が高いことを証明した。役所さんのように、海外で認められる日本人俳優も徐々に増えている。
ベテランの偉業を喜ぶとともに、若い世代が積極的に映画作りに挑戦する契機とし、映画界の活性化につなげることが重要だ。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年05月30日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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