「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

焼夷弾が落ちてきた夜

2006-05-24 06:05:02 | Weblog
あの切羽詰ったような空襲警報の不気味なサイレンとB-29 の爆音は生涯
忘れられない。61年前の昭和20年5月24日午前1時50分、空襲警報のサイ
レンと共にB-29の編隊が上空に現れ、焼夷弾を落下し始めた。ザワザワ
っと落下音がして各所に火の手が上がった。僕はあわてて父母と一緒に
水のついた火たたきで消火した。不幸中の幸い大事に至らずにすんだが
この夜の空襲でも東京では3月10日の大空襲につぐ犠牲者が出ている。

この夜の空襲で近くに住む住吉胡之吉さん一家6人が戦災死している。
胡之吉さん(24 歳)は当時東大工学部学生で航空研究所に動員されて
いたが、亡くなられる20日前の日記にこう書かれている。
「美しきも清き富士,郷土愛、民族愛が祖国愛たることならば、人後に
落ちない。だがただ過去の歴史、国体のために戦うのは、どうしても
割り切れぬ」(「きけわだつみのこえ」=日本戦没者学生の手記)
空襲から3か月後、日本は敗戦を迎えた。