「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

          焼跡整理の社会奉仕

2007-10-10 05:57:47 | Weblog
秋の長雨である。10月の東京はこんなに雨が多かったのだろうかー。古い
日記を調べると、戦争に負けた年も雨が多かった。中学3年生だった僕らは
第一京浜国道脇の焼跡整理に従事していた。雨に濡れながら、焼けトタン
などを拾い出し、道端に積み上げる作業だった。

敗戦からまだ2か月、東京の街はいたるところ瓦礫の山だった。作業現場の
旧品川区役所周辺は、国道沿いは焼野原、遠くまで一望できた。これを整理
するのにも若い男性は、まだ戦場から戻らず、結局、僕ら中学生がやらねば
ならなかったのだ。敗戦で学窓に戻れたのも束の間、僕らは再び、社会奉仕
へ狩り出された。

冷たい秋雨の中、きびしい作業だった。国道をジープで行く進駐軍が同情し
て”ラッキー・ストライク”の煙草を投げてくれた。子供心にも敗戦の惨めさを
身体で味あったものだ。しかし、戦争中から戦後のこのような体験は、その
後の自分の人間形成に役立ったような気がする。

明治憲法下では「納税、兵役、教育」が国民の三大義務であった。僕ら子供
もこれを徹底的に教えこまれた。戦後、この義務感は薄れ、逆に変な権利の
主張だけが強くなった。安倍前内閣の教育再生会議で、青少年を一定期間、
社会奉仕させたらどうかという案があった。僕は自分の体験から、これに賛
成である。自然災害時の復興事業などには積極的に活用したらどうだろうか。