「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

   ”じゃのめでお迎えうれしいな”  戦前の梅雨

2010-06-24 06:00:59 | Weblog
東京も本格的な梅雨に入った。年々歳々のことだが、この季節になると僕は子ども
の時、よく歌った「あめふり」(北原白秋作詞 中原晋平作曲)を想い出す。この歌
には戦前の梅雨の頃の情景と当時の日本人の心のやさしさが描かれていて僕は
好きだ。

(1)あめあめ ふれふれ かあさんは じゃのめで おむかえ うれしいな
  ピッチピッチ チャップチャップ ランランラン
(2)かけましょ かばんを かあさんの あとから ゆこう かねがなる
  ピッチピッチ チャップチャップ・・・・
(3) あらあら あのこは ずぶぬれだ やなぎの ねかたで ないている
  ピッチピッチ チャップチャップ・・・・・
(4)かあさん ぼくのをかしましょう きみきみ このかささしたまえ
  ピッチピッチ チャップチャップ・・・・・
(5)ぼくなら いいんだ かあさんの おおきな じゃのめに はいってゆく
  ピッチピッチ  チャップチャップ・・・・・

この歌は大正14年11月「コドモノクニ」に発表されたものだが、僕が小学生だった昭
和10年代もまさしくこの風景だった。下校時の学校の門の前には着物姿の母親たち
が雨コートを羽織り足にはつまがわのついた足駄を、手にはじゃのめの傘を持ってい
た。今でもじゃのめ傘の匂いが鼻に残っている。

戦前、わが国では”とも働き”家庭は稀有で、母親は専業主婦だった。学校の下校時
だけでなく、夕刻時、にわか雨が振った時も鉄道の駅は、勤めから帰る父親を待って
僕ら子どもは傘をもって迎えに出たものだった。世の中の動きがゆっくりしていたので
あろうか。家族の中に暖かみがあった。