その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

ナショナルギャラリー 企画展 "Close Examination"

2010-09-05 19:07:04 | ロンドン日記(イベント、観光、スポーツ)
 8月に東京からロンドンを訪えてくれた友人がお薦めしてくれた、ナショナル・ギャラリーの特別展示”Close Examination: Fakes, Mistakes and Discoveries”に行ってきました。もう来週の日曜日で終わってしまう企画展ですが、ロンドン在住の方にはとってもお勧めです。



 ナショナルギャラリー所有の作品の中から、贋作、絵画の再生作業の中で発見された元々の隠されたオリジナルの絵などを解説、展示してくれています。

 例えば、この作者不詳の1510-30頃のイタリア絵画「窓辺の女」。


 この絵は1855年にナショナルギャラリーが来た作品とのことです。しかし、その時の絵はこの絵。(絵はもちろんカラーです)


 1978年の補修作業の中で、実はこの絵の背後にはその元の絵が隠されていたことが判明し、その上塗り部分を丁寧に取り去り、今の展示作品になっているとのこと。購入時の絵は、元絵をビクトリア調のふくよかで明るいトーンに描きかえられたらしいです。

 もうひとつ。この絵。


 1845年にナショナルギャラリー初のハンス・ホルバインの作品として呼び物入りで購入された作品とのことです。購入当時から真贋論争があったようで、早々にホルバイン作という目録は外されたようです。そして、1993年にこの絵の画板の木の年輪分析で、この画板の木の最後の年輪は1542年から1543年にかけてのもので、画板として使うためにの一定の乾燥期間を考慮すると、この画板が使われたのは1560年以降であることが、判明。ホルバインが亡くなった1543年なので、ホルバインの作品ではないことが立証されたとのことです。

 補修作業、画板検証、絵具分析、X線判定などなど、科学をフルに活用することで、いろんな過去の事実が浮かび上がってくるのが、興味をそそります。ナショナルギャラリーには、リサーチ部というようなところがあって(正確な名前は忘れました)、先端科学を駆使して、所蔵作品、購入作品の鑑定、補修、再生等を専門的に行っているとのことでした。

 一つ一つの解説を読みながら、絵を観ていくことになるので、通常の展示を観るよりも時間がかかります。


 
特別展会場入り口の横では、本展覧会の15分程度のvideoを流していますが、これも秀逸です。展示してあるのは結果としての作品とその解説ですが、実際の作業やプロセスが、映像で楽しめます。

 ナショナルギャラリーの特別展にはいつも感心させられるのですが、本当にこうした面白い切り口、見せ方を提示してくれます。

 訪れるのが難しそうな方には、是非、下記のホームページをご覧頂けるとよろしいかと。面白いです。

http://www.nationalgallery.org.uk/paintings/research/close-examination/



Close Examination: Fakes, Mistakes and Discoveries

Date and time
30 June – 12 September 2010
Sainsbury Wing Exhibition
Admission free


 ※全然、展覧会とは無関係ですが、今日初めてトラファルガー広場からビッグベンが見えることを発見、


 2010年9月5日 見学
コメント
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