コンプレッサーはSSBのトークパワーを上げるために以前から用いられてきました。素直に解釈すると圧縮器となりますが、これだと音量が落ちてしまうイメージです。実際には小さい信号は強めに、大きい信号は弱めに増幅することで平均音量を上げ、全体的に大きく、かつ圧縮して結果的にSSBの出力を平均的に上げるしくみです。昔の広告を見ると、パワーが4倍相当になると書いてあったこともあります。確かに平均電力は増えますが、ピークのパワーはリグの性能を超えませんから、10Wのリグならは10Wです。40W出るわけではありません。使わないと10Wのパワーすらあまり出ない、だから4倍、と言われればそうなのかな、という感じです。
うちのリグは内蔵コンプレッサーを使うとざわついて少しやかましい変調になります。平均的にパワーメーターは振ってもピークパワーはしっかり抑えられています。
逆に瞬間ピークパワーは使わない時の方が強い。低音効かせた変調でズンと押す時はあえて使わないほうがいいようです。
コンプレッサーは無線の世界だけでなく、音響の世界でも用いられています。録音機器の上限を超えないためとか用途はいろいろです。そこで使われているコンプレッサーは無線で使われているものより遙かに高音質設計で細かい設定も出来、高性能です。動作の速さ、強さの加減も自在です。
特に優れているのがマルチバンドコンプレッサー。音の高さでいくつかのバンドに分け、それぞれ別々にコンプレッサーの設定が出来るものです。
たとえば普通のコンプレッサーだと、しゃべっている声はまだまだ音量が足らないのに、近くで低い大きな音がすると、ここでコンプレッサーがかかり、全体のゲインが落ち、声も小さく抑えられてしまいます。特に低音は音量の判定に影響しやすい要素です。
同じ状況をマルチバンドコンプレッサーで処理すると、大きすぎる低音は低音だけ抑えられ、中音、高音に影響を与えません。低、中、高共に適切なレベルに処理されるわけです。それぞれのトークパワーが調整出来る優れものです。
リグのALCも低音から高音までひっくるめて動作しているでしょうから、ALCの反応しやすい音域を抑えめにすると平均出力を上げることが出来るはず。このへんを意識して音作りをすると面白いかもしれません。
とまあ、知識だけは理解したのであとは実践。
とりあえず、MP3などのHDD上の音源にマルチバンドコンプレッサーをかけられるソフトでどう音が変化するのか遊んでみようと思います。うまく接続出来れば送信にも使えるそうです。