この写真のリチウムポリマーバッテリーは海外のサイトで見つけただけ。持ってはいませんがなかなか良さそうです。12.5Ah 9~12.6V 重さ1.5kg 電流は12.5A、ピークは25A だそうです。防水仕様。149.95ドルです。
最近リチウムポリマーバッテリーの質問を受けることが増えてきましたので、私が知る限りの知識ですが多少説明したいと思います。
決してこの記事だけで確信を持たないでください。使用にあたっては各個人できちんと調べて、自己責任での使用をお願いいたします。
まずこの電池、優れた特徴があって、移動運用にはイチオシなのですが、取り扱い注意の電池なので「絶対にバランス充電が出来るリチウムポリマー対応充電器が必要だ」ということを肝に銘じてください。手許の適当なもので充電すると大変なことになってしまう恐れがあります。我々無線技士なので充電なんて簡単だ、とちょいちょいっと簡単にやってしまいそうなのですが、決してやらないように。(財産、生命を失う恐れがあります。)
・絶対専用の充電器が必要です。
各セルの電圧が把握でき、各セルに別々に電気を送り込むことも出来る、バランス充電可能なリチウムポリマー対応充電器が必要です。(そんなに高いものではありませんのでケチらないように)
・可燃性の物質が使われているので、過充電、過放電で発熱、出火、爆発事故を起こす可能性があります。
・定格外の電圧からの復帰はありません。
電圧が0になったり、1セルあたり3Vを切ったり、逆に4.2Vを超えているものはもうだめです。中には放置しておくだけで危険な状態になるものもあります。膨らんできたら危ないです。
過放電でその電池の性能は失われます。ニッカド、ニッケル水素電池などで長期使用していなかった電池は充電すると復活したりすることもありますが、リチウムは回復しません。一定の電圧をきったら電源が落ちる製品で使わないと、過放電で電池を死なせてしまいますので気をつけて下さい。いけない例としては電球を灯すことです。どこまでも放電してしまいますので。
・もし一瞬ショートしてしまった時は、中でどんな反応が始まったかわかりませんから、15分間は安全な場所に置いて経過観察するように、と言われています。
・日頃の保管は耐火袋や壺の中にしまうのが安全です。
と注意点の一方で良いところは
・大容量
・超軽量
・パワフル(大電流OK)
・自己放電ほとんど無し
・超急速充電可能
・継ぎ足し充電可能
・価格が安い!
です。理想的なバッテリーです。
容量と重量の比率ではアバウトで鉛バッテリーの1/6、ニッケル水素の1/2です。抜群に軽く大容量です。荷物を軽く出来る、より長時間運用できます。
そして大電流が得意です。20Cとか30Cという定格が普通です。1Cは容量を1時間で使い切る電流のことなので、表示どおりの電流と同じ数字ですから、私がよく使う5000mAhのバッテリーの場合、1Cで5Aですから20Cだと100A。なんと100アンペア流せるよ、ということなんです。アルカリ電池でも1Aは無理、瞬発力のあるニッカド電池でもせいぜい1Cがいいところ。20Cとは驚異的です。なのでこの電池、小さくても大型バイクのセルくらいは楽に回せるそうです。とはいえ大電流時の電圧降下はあるようで、残容量の少ない状態でCWで50W出したらチャピってしまいましたけど。
というわけで50W運用にも対応できます。
自己放電は基本的にありません。使おうと思った時に容量が減っていた、ということは殆どありません。
継ぎ足し充電しても問題ありません。
超急速充電が可能です。リチウムポリマーは1C充電OKです。これ以上も出来ると言われていますが、ここが安全ラインと言われています。1Cということは5000mAhのバッテリーを5Aの電流で行うことが出来ます。多くは継ぎ足し充電なので城山湖で日曜の午後楽しんだ程度では数十分で充電が完了してしまいます。運用時間より短い時間で充電が出来る点は大変嬉しいですね。ニッケル水素だと1C充電はまず出来ません。中には強引な充電器もありましたけど。
ちなみにリチウムポリマーは1C充電では殆ど発熱しません。発熱したら結構やばいそうです。
その他特徴として
・電圧のバリエーションが少ない。
リチウムポリマーは1セルあたり3.6Vです。製品では2セル、3セル、4セルなど3.6V倍数の電圧で用意されることになります。
・満充電時と空に近い時との電圧差が大きい。
満充電時と残容量が少なくなった時の電圧差が大きく、電圧から残量が読み取れる点はとても便利なのですが使い始めと終わりの変動が大きいです。電圧は1セル3.6V、満充電時で4.2V、放電していくと徐々に下がって3Vくらいまで下がります。過放電に気をつけて、3.2Vを切ったら使用を止めるのが良いとしても、例えば3セルの10.8Vタイプだと、満充電時は12.6Vに上昇し、最後は10Vを切るくらいになります。FT817を5W運用するには11.8V必要なので、途中で2.5Wに落ちてしまうということが起きます。電流が多く流れた時に起きる電圧降下の影響で、変調のピークでパワーが下がるという困った現象も起きてしまいます。もっとも山頂で5Wも2.5Wも電波としては差は殆ど無いのでずっと2.5Wでもいいのですが、5W出し続けたいときは昇圧したり、もうワンランク上のリチウムポリマー(満充電で16.8Vが気になるが)を使うか、さらにそれに定電圧回路を加えてずっと12V以上を維持するか、という感じで、ちょっと半端な電圧なのが残念です。
当局は、満充電時16.8Vの電池をダイレクトにFT-100Mにぶち込んでいます。満充電の4.2Vは使用を始めるとしばらくして4Vくらいになりますから高い電圧は最初だけのことですし、大電流時は電圧も落ちていますから、今のところ壊れていません。おすすめはしませんけど。
FT-817には16.8Vを加えたくないので定電圧回路を通して12V強になるものを通しました。LM338Tという素子を使った秋月電子の安定化電源キットで、5Aまで対応できるスグレモノです。昨年の富士山頂でも使用しました。5Wにこだわらない時は3セルのリチウムポリマーをそのまま使っています。
・メモリー効果は無いが劣化あり
劣化は満充電保存時が最も進むと言われています。携帯電話を常に充電している人のほうが電池が早くだめになるのはこのためです。ニッケル水素電池では継ぎ足し充電によるメモリー効果が欠点でした。リチウムは継ぎ足し充電によるメモリー効果はありませんが、劣化が寿命に大きく影響します。ですからニッケル水素同様にある程度使うまでは充電しないことは寿命のためにはいいことです。むしろリチウムの場合は自己放電が殆ど無い利点を活かし、運用後に3~4割残っていたらそのまま保管し、次の運用直前に満タンにする、というのが劣化を防ぐ良い方法です。
災害に備えて満充電状態で待機していますが、他にも余裕分が有る場合はスクランブル発進用とは別に、容量を半分くらいにした電池を保管しておくのが良いと思います。専用充電器には各セルの電圧を綺麗に揃えて6割まで放電してくれる保存モードという機能があったりします。
・低温高温に強くない
こんなところですが、今のところ当局では主力バッテリーとして活躍しています。
危ないイメージがありますが、iPhone4はリチウムポリマーで、すでに大勢の人が常時持ち歩いている電池です。正しく利用するのがお得なのではないでしょうか。と言う訳でくれぐれも自己責任で、安全で楽しく活用してください。
今、リチウムフェライトというバッテリーが出始めています。これは不燃性の材料で出来ているらしくリポより安全性が高まっています。これからの主役になるかもです。まだ値段が高いのがツライところ。電圧の定格が異なるのですが逆に丁度いい感じなので、これが安くなれば移行が進むのではないでしょうか。
電気自動車、ハイブリッド車、携帯電話の普及で、電池の進歩は今後も期待できそうですね。