いよいよ7月、8月は富士登山のシーズンです。
今年はまだ雪が多いので頂上まで開通するのに少し日数がかかるとおもいますが、もうすぐシーズン開幕です。
アマチュア無線家なら高いところで運用してみたいもの。日本一高いところが富士山です。ここで運用するのが無線家の夢ですね。
私も数回登っていますが、まだ50MHzで運用したことがないので是非実現したいと思っています。
さて、ここ数年毎年登っていますが、その(浅い)経験から皆さんに参考になればと書き留めてみましたのでよかったらお読みください。
富士山に登れる時期
7月の山開きから8月下旬の閉山まで
山開きより前は積雪があり、基本的に登れません。滑ったらそこで人生おしまいです。くれぐれも登らないように。
天候が安定するのは梅雨明けから10日。7月下旬がベストです。8月は毎日雷雨がやってくる可能性が高まります。富士山で怖いのは雨、強風、寒さ、そして落雷です。落雷で死亡者が出るのは珍しいことではありません。
8月下旬から山小屋がどんどん閉まり始めます。9月になるとほとんど開いていません。トイレも無くなると言うことです。富士山の上のほうは森がありませんからもしもの時に身を寄せる山小屋が無いということは、急激に命のリスクが高まると言うことです。9月上旬でも雪が降ることがあります。下界は残暑で暑くても富士山は冬の季節に入っています。たまたま穏やかな天候で往復快適な時があるかもしれませんが、それを期待していくのは大変危険な行為です。9月の登山はせいぜい宝永山巡りまでにしておきましょう。
寒さ対策について
ほとんどの登山者は一応寒さ対策はしているものの、フリースに合羽程度です。登っているときはギリギリ耐えられますが、これだと日の出待ちでブルブル震えることになります。気温は一桁で強風が吹いているのが普通です。インナーダウンを加えてもまだ足らないくらいです。小さく丸められるダウンジャケットくらいは持っていた方がいいでしょう。
じっと日の出を待つときに効果があるのはポンチョです。パックを背負ったままポンチョに身を包み、地面に敷物を敷いて、ポンチョの裾を巻き込んで、空間を保つように座ればテントの中に居る状態に近くなり、寒さを軽減出来ます。頭をポンチョの中に入れてしまえばもっと暖かくなります。富士山で雨具としてはポンチョは不適ですが、寒さ対策としては最も頼りになると思います。
カイロは是非持って行きましょう。寒いばかりで暖が取れるものはほとんどありませんから大変ありがたいものになります。
荷物になりますが真空ボトルに熱湯を入れていきましょう。10時間くらいは湯気が立ちのぼるくらい保温されています。寒くて仕方ないときにこれを飲めば生き返ります。体の中に暖かいものを取り入れるのはとても効果があります。スイスの救助犬がワインの樽を提げている意味が身を持って分かります。他人の命を救えるかもしれません。お湯は持っていった方がいいでしょう。
高山病について
私は毎年富士山に登っていますが高山病にならなかったことは滅多にありません。2000m級のスキー場に入り浸っていた年は大丈夫だったかも。
子供のときは車によく酔うよう自分でした。高山病の症状は車酔いに似ています。気持ち悪さに頭痛、悪寒、急に風邪をひいたのか、みたいな感じになります。
高山病になるとなにしろ気力が萎えます。靴ひもを締め直すような作業をやる気力が失せてしまいます。頭痛が激しい時は下山しても数日続くこともあります。気持ちが悪い時はまだ治るチャンスがあります。リバースすると治ってしまうことも。ここ4回ほど連続で高山病の症状が出て、途中で降りたのが1回、1回は耐えているうちに治り、2回はリバースして治りました。
ただ、高山病は死ぬこともある危険な症状ですから、基本、即下山が正しい対処方法です。安静にしていても改善しません。むしろ呼吸数が減ってしまうので酸素吸入が減り症状が重くなります。
さて、高山病にならない対策ですが、
休憩中も含めて意識して呼吸を多めにすること。
水分を常に多めにとること。(トイレの回数を気にして水分を控えると高山病になるかも。)
激しい運動を決してしないこと。富士山ではずっとダラダラしているのが正解です。
酸素缶を使わないこと(順応しようとしている体をもとに戻してしまうのでダメなんです)。酸素缶はどうしようもなくなった時や、下山時に使いましょう。
歩き方
長距離で高低差がある登山です。うさぎと亀なら亀でないと登りきれません。登山道は緩いところは滅多に無く、ずっとずっと急な道が続きます。歩幅は隣の足を追い越すこと無く、トボトボトボトボ小股に歩きましょう。抜いていく人がいても放っておきましょう。きっと後で追い抜くことになりますから。前半張り切った人は大抵ダメなんです。
逆に大股に歩く方法があります。これは相撲の四股を踏むような歩き方で、大きく一歩、そして停止、また一歩、停止、を繰り返します。これ、案外長く続けることが出来て結構進むんです。動きが鈍くなったら試してみてください。
休憩
休憩は20~30分に1回、5分程度、必ずおしりをついて、そして何か一口チョコでもアメでも(塩も必要かも)口にして、一口水分を摂るのがいいそうです。私はもっと休んでしまうのでなかなか頂上に着きませんけど。
ザックの背負い方
富士山に登れば最低でも10時間は背負っていないといけないザック。ザック選びも重要ですし背負い方も重要です。水と防寒着を持っていく富士登山では日頃のハイキングと比べて荷物も大きく、重くなります。30Lサイズが必要ですが、私の場合それでもパンパンになってしまいます。無線の道具があるから・・・今は38Lですがこれでもパンパン。今年は50Lを用意しました。。
このくらいのサイズになるといい加減な製品はほとんどなくなり、肩ベルト(ハーネス)以外に腹ベルト、胸ベルトが追加されてきます。
実はザックの重さは肩で負うのではなく、腹ベルトによる腰で受けるものなんです。たとえ20Lくらいの小型のものでも腹ベルトが付いているものを必ず買いましょう。
背負い方としては、まずは肩ベルトを緩めて背負います。次に少し全体を持ち上げながら、腹ベルトを締めます。腰の骨でしっかり荷物の荷重を支える位置で締め上げます。
続いて肩ベルト。背中に快適に当たる程度、動いてもザックが暴れない程度、荷物の荷重が肩にあまりかからない程度に締めます。
最後に胸ベルト。これも締めすぎず、緩めに。
これで長距離も楽にいけるはずです。
合羽
富士山で身を守るものは、合羽と靴です。この二つは決して妥協しない方がいいでしょう。ゴアテックスの上下を揃えたいところ。富士山の雨は上下左右から吹きつけますから、コートタイプやポンチョでは全く役に立ちません。ゴアテックスは透湿素材なのですが、絶え間なく汗をかけば当然中はびしょびしょになります。特に7合目までは登りの運動でどうしても暑くなるので、合羽が必要になったら速度を落とし、汗をかかない工夫(薄着になるなど)も必要です。7合から上は一気に寒くなるので、その時に汗で濡れているとかなりやばいです。
雨が降らない日でも上の方は寒くなるのでウィンドブレーカーがわりに殆どの人が着用しますから、持たずに登るのはあり得ません。
休憩時は溶岩に直接座ることになるので、ゴアテックスの高級合羽を痛めてしまうのが辛いところ。ゴアテックスでない透湿素材は1万円程度からありますから、あまりオススメはしませんが、このあたりで、という手もあるにはあります。
ダブルストック
これがあるとグッと楽になります。混んでいる時は後ろの人に気をつけて使いましょう。
登るときは後ろに突くのが正解。手は体の前、ストックの先は後ろに。常に前に傾いたような状態でグイグイ進むといいです。
下りは前に突きますが、歩数と同じ数突くようにします。4つ足で歩くような感じ。膝の負担を軽くしたいときは足と同時に強く突くようにします。
ヘッドライト(ヘッデン)
頭に付けるライトです。夜間登山をやる方は絶対持っていないとダメです。昼だけでもうっかり夜になってしまったときのことを考えれば必ず持っていないといけません。LEDので安いヤツで十分です。暗闇の中では弱い光でも十分足元がわかりますから。
明るさを競うような品物は要りません。(と言いながら私はすんごく明るいのを使います)
合わせて予備電池は必ず持ちましょう。仲間の誰かが電池切れになる場合も多いのでその時のためにも。
スパッツ
富士山必携グッズの一つにスパッツがあげられます。
登山用のひざ下カバーです。これを靴に付けて脚に巻くと深い砂利に入っても大丈夫。靴の中に小石が入ることが防げます。
砂走り突入する際、これが無いと泣きを見ます。横で売ったら倍の値段でも売れるだろうな~。砂走りも気が遠くなるほど続くんです。
須走口、御殿場口へ降りる人は絶対持っていないといけません。
膝の痛み
私の場合、下り坂がとても苦手で日頃から普通の速度で降りるのが辛い。下山開始からガンガン人に抜かれてしまいます。そのうち痛みが発生して一歩一歩がやっとの状態に。そんなですから地獄の数時間となります。数年前はそうでした。数年間ハイキングを続けているうちに下り坂に強くなり、6合目くらいまでは順調に降りてこれるようになってきました。
対策としてはひざのサポーターと↑のダブルストックを導入しています。
歩き方としては登りは問題ありませんが下りが問題なんです。
下りの歩き方の基本はひざに衝撃を加えないような歩き方ですが、これは筋肉や筋を結構使い、日頃から鍛えていない部分にかなり負荷がかかります。痛くなるのは私の場合この行方のせいだったります。
富士山の下り坂は深い砂利。実はガツガツひざを曲げずに降りても大丈夫。というよりこの手の地盤ではガツガツいかないとひざが持ちません。もっともこれは邪道ですから向き不向きがあります。砂走り、大砂走りではまさにこれ。深いところを狙ってガンガンいくんです。ずる~っと下にずれながら降りて行く。一歩2~3mで降りていければ合格です。
あとは日頃の鍛え方です。月に1度はハイキングに行きましょう。サポーターを巻いて下って大丈夫になってきたら、だんだんサポーター無しで降りてみましょう。ストックも使わない区間を作ったりして脚を鍛えていきます。日頃から走り込んでいる人はまず登山の下りでひざが痛くなることはありませんから、やはり鍛えることが最善の予防策だと思います。
天の川と流れ星
夜間登山で天候に恵まれると、日頃決して見ることの無い満天の星空を見ることが出来ます。時折ライトを消して空を眺めてみましょう。それはもう素晴らしい。しばらくずっと眺めていたい気になります。ヘトヘト、バテバテで休んでいるときに、最も癒されるのが星空です。天の川もくっきり、流れ星はいくつも見れますよ。
笠雲
麓から見るとなかなか素敵な笠雲ですが、笠雲の中は急激に別世界。地獄です。
暴風、雨、霧、湿度100(雲の中だから)、酷寒が襲います。
笠雲がかかりっぱなしの時は突入しない方がいいでしょう。
登りきっても楽しくない、逃げ帰りたい状況しかありません。
晴れればラッキーですが強風はマチガイなしです。
富士山は死の山か
シーズン中は富士山参りのような様相を見せ、大変賑わう富士山。一見簡単な山のようですが実際どうでしょうか。
道は難しくありません。技術も要りません。
距離と標高差は普通のハイキングの比ではありません。標高差1800m(須走口)を数時間で登るハイキングは普通ありません。
そしてその気象。スタートがすでに高山。頂上は超高山です。日本で2番目に高い山は3000mとちょっと。富士山は7合目でもすでにこの標高を越え、遥かに遥かに高いところを歩きます。寒さ、空気の薄さ、風の強さ、特に風については世界屈指の強風の山だと言うことを覚えておいてください。普通ではないキビシイ環境がそこにあります。
そこは命の危険のある環境なんです。それでもほとんど遭難事故が起きないのは、24時間営業の山小屋が連続して配置されているからなんです。もし野ざらしだったら・・・雨、風、寒さ、装備不足の人間は低体温症、つまり真夏に凍死するわけです。小屋がある、大勢人が居る、だから比較的安全なだけ。
富士山は死の山です。装備がちゃんとしていないと危ないです。一晩野営しても死なない装備が必要です。装備は命を守ってくれます。特に靴と合羽は妥協していけません。
ハプニングは必ずあると思っていた方がいいでしょう。
富士山の登頂率は6割です。4割は高山病などで脱落します。
と脅しておいてなんですが、それだけ非日常を体験出来る、思い出に残る素晴らしいところです。
是非装備万全、体を鍛えて挑みましょう。