私の故郷でも昔は毎年花火大会があった。
漁村だったので、花火大会が開催される港周辺の海上には、近隣の村から多くの漁船が集まった。
海に向かって打ち上げられる花火を、海上の船で真下から見上げるのだ。
私が初めてその花火大会に、祖父の漁船で連れられて行ったのは、保育園児の頃だった。
暗い船上でスイカを食べながら待っていると、なんの前触れもなく、轟音と共に幕開けの連発花火が開花した。
それまで暗かった夜空が、一瞬にして昼間の明るさになった。
それは普段、家の庭でやる線香花火や打ち上げ花火とは、比べものにならないスケールだった。
幼心にはまさに雷をも凌ぐ、驚天動地の現象だった。
私はこの世の終わりかと思って、耳を塞ぎ、目をつぶって震えていた。
未だにあの恐怖や驚異を上回る出来事に遭遇したことはない。
あの恐怖の感動をもう一度味わってみたいものだ。
夜中にベランダで煙草を吸いながら夜空を見上げる時、ふと、あの時のように暗い夜空が一瞬にして昼間の明るさになったら、と思ったりする。
それは、おそらく北の国からの核攻撃か、巨大隕石の落下しかないだろう。
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