conparu blog

ささやかな身の回りの日常を書き綴ります。
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愛しき我が心の旅日記

2005-03-30 02:44:00 | 日記

独身の頃はよく一人旅をした。時刻表と地図を広げて、目的地あるいは目的地周辺までの旅程をあれこれと想定してプランを練る行為は実に愉しい。

実際に旅たつときはそれまでのプランを頭に入れながら、出たりばったりのフリーハンドに切り替えて気が向くままに出かけます。そのほうが予期しない場面に出会い、旅の味が濃くなるからです。

川端康成の「伊豆の踊り子」では湯ヶ島や淨蓮の滝を通り、下田に抜けるまでの旅芸人一座の娘と一高生のほのぼのとした心情を描いています。映画にもなったその主題歌は今なお耳の底に残る。

そんなこんなで伊豆の山越えをしてみようと思い立ち東海道線で一路三島へ、そして修善寺から湯ヶ島へ、更に淨蓮の滝まで足を延ばして滝の飛沫を浴びてから、その夜は飛び込みで湯ヶ島に泊まることになった。二十代前半の若き旅人である。

まあまあな構えの旅館だったが、二月のシーズンオフと言うこともあって客が居ない。眼に入る客が無いのだ。直ぐに夕飯となり、持って来てくれたのは旅館の若奥さん。

女将さんと言うのに憚れるのは、背中に赤ちゃんを負ぶっていたからである。その奥さんの腕の中には食べきれないほどの猪鍋が...。「うわあ!食べきれないよ、一緒に食べてくれない?」「あらそう?」短い会話の後で「安心したわ」と言うのである。

なんと、淨蓮の滝ノ下へ飛び込みに来たのか、と思われていたのでした。
山深い伊豆の宿、寒い冬を温める猪鍋であった。

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