あちこちに残雪の見え隠れする湯ヶ島を出て、山間のだらだら道を経て西海岸の堂ヶ島に来ると、パッと目の前が開けて駿河湾の景色が飛び込んでくる。
二月の港湾の波は穏やかで、人通りも少なく眼に入るもの全てがのんびりして別世界の趣があった。
海岸通りに面した土産店を兼ねた喫茶店に入ると、若い娘さん二人が暇をもてあます様にして奥の方に居た、この季節は客が来ないようだ。
喫茶店の中はがらんとして静寂が宿っている。海寄りの窓辺に座りコーヒーを注文した。若い娘さんは土地の人のようで、言葉数は少ないが温かい雰囲気があった。
コーヒーを飲みながら海の景色を眺めていると、娘さんがつつーっと寄ってきて差し出すものがある。「これあげる」といい、見ると一枚のドーナツ盤のレコードだった。一瞬胸が熱くなる。当時ラジオでも流れた、日野てる子の「堂ヶ島慕情」だったのだ。
随分昔の思い出だけど、コーヒーの味は忘れても娘さんの優しい気立てが今でも忘れられない。
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