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☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

孤独な暗殺者 スナイパー

2019年12月09日 19時13分22秒 | 洋画2014年

 ◇孤独な暗殺者 スナイパー

 原題/La resistance de l'air

 監督/フレッド・グリヴォワ 音楽/エフゲニー・ガルペリン サーシャ・ガルペリン

 出演/レダ・カテブ リュディヴィーヌ・サニエ チェッキー・カリョ ヨハン・ヘルデンベルグ

 

 ◇元射撃チャンピオンの暗殺者

 簡単にいってしまえば、住宅ローンやら家庭内不和やらもういろいろあって大変な中、脳卒中で倒れた父親を引き取ったために取り返しのつかない悲劇的な人生を走り出しちゃうって話だ。

 だけど、いやまあ、ぽんこつの父親が妻に色目を使い、たとえば夕食中、家族の前でヤってるかと訊いてきたり、孫を外で待たせておいて老いぼれた娼婦を呼んでヤったばかりかその報酬を値切るってのは、もうたまらないストレスだよね。

 くわえて、頼みの綱だとおもってた父親のアパートは荒れ放題で実は賃貸契約だったものだから一銭の金も入ってこないとかってもはやあり得ない展開で、そりゃスナイパーにもなるわな。

 切実過ぎて、観てるのが辛くなってきたわ。

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ジョン・ウィック

2019年11月28日 17時28分54秒 | 洋画2014年

 ◇ジョン・ウィック(2014年 アメリカ 101分)

 原題/John Wick

 監督/チャド・スタエルスキ デビッド・リーチ

 音楽/タイラー・ベイツ ジョエル・J・リチャード

 出演/キアヌ・リーブス ミカエル・ニクヴィスト ウィレム・デフォー

 

 ◇バーバヤーガ

 3人の男を鉛筆で殺したという殺し屋の復讐劇なんだけど、物語はとってもちっぽけだ。

 ひたすら撃ち合い、戦ってるだけといった印象で、それ以外にないのかといいたくなっちゃうほどなんだけど、まあそれなりにかっこよかった。

 キアヌ・リーブスのフアンってわけでもないから余計にそうおもっちゃうかもしれないけど、あ、でもサニー千葉をマエストロと呼んで慕っているとかって前宣伝に出くわすと、そうかあ、千葉真一を好きなハリウッドの連中って少なくないのね~とかって、なんだかちょっぴり嬉しくなっちゃったりもする。

 ただ、アメリカを臍にした礼儀正しい裏社会がちゃんと存在していて、そこではそれなりの掟もあったりするっていう設定は悪くない。

 たとえば、殺し屋たちが泊まる『コンチネンタル・ホテル』はそうした掟の真ん中に存在しているってのもそうだ。

 ちなみに、ここで起こったもめごとや殺し合いの跡はすぐさま清掃されるっていう設定は『エージェント・ライアン』の殺し屋に襲われたホテルの清掃とよく似てて、なるほど、発想はみんなあんまり変わらないんだなっておもった。

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ナイトクローラー

2018年09月12日 00時02分43秒 | 洋画2014年

 ◇ナイトクローラー(2014年 アメリカ 118分)

 原題/Nightcrawler

 監督・脚本/ダン・ギルロイ 音楽/ジェームズ・ニュートン・ハワード

 出演/ジェイク・ジレンホール レネ・ルッソ リズ・アーメッド ビル・パクストン

 

 ◇ソシオパスのパパラッチ

 日本では反社会性パーソナリティ障害とかいうそうだ。そりゃあまあ、自分の成功のためなら多少の反社会的行為なんざ屁でもないとおもって意のままに行動してしまうような主人公なんだから、たしかにそうかもしれないね。

 にしても、ギレンホールのパパラッチぶりはなかなか鬼気に迫ってる。

 日本とアメリカの報道における姿勢については、もちろん差がかなりあるだろうけれど、事件現場に違法すれすれどころかあきらかに手を加えて撮影するなんてことはそうそう滅多にあることじゃない、とおもう。

 で、この映画なんだけど、そんな人為的な違法行為なんざ屁でもないとおもってるソシオパスが物語をひっぱっていくわけだから、報道の迫真性が異常に増してしまうのは物語上、仕方ない。好いか悪いかということではなく、そういう設定なんだよね。

 で、それがジェイクの言葉を借りれば『対象とフレームの境界を消していく』ってことになるんだけど、こうした主人公はもちろん喝采されない。佳境、自分の行為が犯罪的なものであると誰もが知っていながらもどうすることもできないジレンマを抱えたまま彼をさらに暴走させ、ついにはそうしたソシオパスどもの会社まで経営して、さらなる報道に勤しんでいくなんていう事態になっていくのはたしかにピカレスクとしてはありかもしれないけど、手放しでおもしろかったと拍手はできない。

 そうした陰鬱なラストが、この映画をいまひとつメジャーにしきれないってことなんだろうね。

 音楽はちょっとばかり暴力的ながらも、なかなかいい。

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最高の花婿

2018年03月15日 00時06分09秒 | 洋画2014年

 ◎最高の花婿(2014年 フランス 97分)

 原題/Qu'est-ce qu'on a fait au Bon Dieu ?

 監督/フィリップ・ドゥ・ショーヴロン 音楽/マルク・シュアラン

 出演/フレデリック・ベル ジュリア・ピアトン エミリー・カン エロディ・フォンタン

 

 ◎婿の国に対してエスプリの応酬

 この見事なまでに性格のえげつないカトリック教徒のドゴール主義者を演じたのがクリスチャン・クラヴィエなんだけど、ぼくはこの役者によくにた人を知ってる。やっぱり、皮肉屋だ。

 それはともかく、かんたんにいってしまえば、ロードショーよりも前に上映されたときのタイトルどおり『ヴェルヌイユ家の結婚狂騒曲』で、多国籍な婿が四姉妹につぎからつぎへと現れてくるのをフランス特有の皮肉をぶつけつづけてるだけなんだけど、でも、これが意外なほどおもしろかった。

 ただまあおもうんだけど、それなりの地位のまま老後をむかえて、かわいがってた娘たちはたしかに勝手気ままな生き方をして、信じられないような婿を連れてはくるものの、それでも家族の絆はちゃんと保たれてるし、金銭的にも社会的にもなんら心配がなく、このまま死ぬまで生きていけるわけだから、すこしばかりのはちゃめちゃは我慢しないと罰があたるってもんだよね。

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ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります

2017年11月22日 01時31分11秒 | 洋画2014年

 ◇ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります(2014年 アメリカ 92分)

 原題/5 Flights Up

 監督/リチャード・ロンクレイン 音楽/デヴィッド・ニューマン

 出演/モーガン・フリーマン ダイアン・キートン コーリー・ジャクソン クレア・バン・ダー・ブーム

 

 ◇若い頃のふたりがよく似てた

 モーガン・フリーマンの若い頃はコーリー・ジャクソン、ダイアン・キートンの方はクレア・バン・ダー・ブーム。よく似てた。いつもおもうんだけど、アメリカはこういうところがちゃんとしてるよね。子役もそうで、ほんとにおとなになったときにはこうなるんだよな~ってことが想像できる。映画に対するプロ根性がしっかりあるんだね。

 さて。

 40年間住んでいた部屋を老齢と貧困の故に手放さなければならない気持ちは、それを味わったものでないとわからない。

 しかも内覧会とかをして、わけのわからない礼儀のかけらもないような失礼きわまりない連中が家の中をかきまわして、言いたい放題見たい放題触りたい放題にあつかわれたらどうだろう。くわえて子供のかわりに飼っていた犬が倒れ、高額な手術をする真っ最中にそんなことが起きたら、どんな気分になるんだろう。

 せめてもの慰めは、夫婦の仲の良さが40年間変わらないということだけど、アメリカってところは、ほんと、こういうどこのどのような国にも起こりそうな小さな話を上手に作るんだね。

 ちなみに、内覧会に訪れ、ふたりが内覧に往くさきざきで現れ、ときにはフリーマンの薬のチャイルドロックを開けてくれる少女は、まるで人生の道案内のような台詞を残していくんだけれども、なんだか『甘い生活』の海の家の少女をおもいだした。

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誰よりも狙われた男

2017年10月20日 13時26分19秒 | 洋画2014年

 ◇誰よりも狙われた男(2014年 イギリス、アメリカ、ドイツ 122分)

 原題 A Most Wanted Man

 監督 アントン・コービン

 出演 ウィレム・デフォー、ダニエル・ブリュール、ニーナ・ホス、ロビン・ライト

 

 ◇フィリップ・シーモア・ホフマンの遺作

 原作者のジョン・ル・カレが製作総指揮のトップとして参加しているところを見ると、かなり入れ込んだのだろうし、映画そのものも完成を迎えているわけだからそれなりに満足したとおもわれるんだけれども、さて、どうなのかしら?

 なんていうのか、派手さはないというよりも地味で淡々としてリアリズムに徹しているといえばいいんだろうか。でも単調ならば単調なりの緊迫感があって然るべきだとおもうんだけど、そういう抜き差しならない感覚があまり味わえないのは辛いところだね。

 いやまあ、アメリカの旅客機墜落テロのあった2001年9月11日を境にして世界中のスパイ活動が大きく様変わりしたっていうのはなんとなくわかるし、スパイ活動がいかに目立たない中で行われて、深く静かに起きて止んでいるかってこともそれなりに想像はつくんだけど、うん、難しいな。実際、フィリップ・シーモア・ホフマンがベイルートで失敗し、ていうか諜報戦で嵌められ、自分の情報網をずたぼろにされたっていうのはわかった。その後、ハンブルクへ流れてきてドイツ側のスパイとして活動して新たな情報網をようやく作り上げてるっていうのもわかった。でも、その資金をどうやってドイツからひきだしたのかがわからない。だって、ドイツは物語の中ですらそういう諜報部員を抱えていないことになってるっていうことわりをいれるくらい神経質になってるわけでしょ?

 それと、レイチェル・マクアダムスがなんでチェチェンから逃れてきた闇の大資金を受け継ぐ青年に頼られることになったのかもいまひとつ理解しがたいし、さらにいうとこうした人間どもが複雑に絡んでいるものの、いちばんの闇の中で蠢いている連中はあまり描かれていないんだよね。結局、狙われているっていうか最後の最後に嵌められてしまうフィリップ・シーモア・ホフマンの無念さが、かれの人生の無念さと多重露光してしまって、なんだかな~って感じだ。

 ただ『東ベルリンから来た女』のニーナ・ホスをまた観られたのは嬉しかったわ。

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パレードへようこそ

2017年08月29日 00時33分30秒 | 洋画2014年

 ☆パレードへようこそ(2014年 イギリス 120分)

 原題 Pride

 監督 マシュー・ワーカス

 出演 ビル・ナイ、イメルダ・スタウントン、ドミニク・ウェスト、アンドリュー・スコット、ベン・シュネッツァー

 

 ☆炭鉱労働者とLGBT

 イギリスのウェールズの炭鉱をあつかったものはなんだか好きだ。

 長屋が絵になるし、ブラスバンドのパレードがなんとなくいい感じがするからかもしれないけど、ラストに実際のパレードが映されているように、なにより実話というのが好い。LGBTが自分たちとおなじように社会的な忌避を受けているとして炭鉱組合を支援したのも知らなかったし、炭鉱組合がかれらに人権を与える法律をおして恩返ししたことも知らなかった。

 こういう映画は、とても好きだ。

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トカレフ

2017年08月28日 21時53分19秒 | 洋画2014年

 △トカレフ(2014年 アメリカ 98分)

 原題 Tokarev

 監督 パコ・カベサス

 出演 ニコラス・ケイジ、レイチェル・ニコルズ、ピーター・ストーメア、ダニー・グローヴァー

 

 △トカレフTT-33

 娘を殺されたことの復讐に駆けずり回る男の話。

 なのだが、このありきたりな話をさらにおもしろくなくしているのは、人物の設定かもしれない。ニコラス・ケイジの過去がかなり悪辣なギャングで、娘を殺した犯人をつきとめようとしている昔からの仲間ふたりも脛に傷のある連中で、さらになんか妙なことにニコラス・ケイジを信じてこれを機に街のダニを一掃させちゃえみたいな結果にさせていくやけに理解のある刑事ダニークローバーという設定だ。

 で、とどのつまりは、ニコラス・ケイジの信じられないような勘違いとおもいこみだったっていう話で、つまり、娘の死は結局、娘とその彼氏のあほな遊びによる過失だったんだけど、このくそ間抜けな落ちのために、とんでもない遠回りをさせるための設定をしてたのかよってわかったとき、まじな話「時間を返せ」とおもった。

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シチズンフォー スノーデンの暴露

2017年08月16日 20時13分46秒 | 洋画2014年

 ◇シチズンフォー スノーデンの暴露(2014年 アメリカ、ドイツ 114分)

 原題 Citizenfour

 監督 ローラ・ポイトラス

 出演 エドワード・スノーデン

 

 ◇2013年6月3日月曜

 香港のホテルでスノーデンがグレン・グリーンウォルドの取材を受けた一部始終なんだけど、ぼくはほんとに感覚が鈍いのか、このインタビューの包含している凄さについてあまり実感がなかった。現実味がなかったといった方がいいのかもしれないんだけど、でももしかしたらぼくみたいな日本人は少なくないのかもしれない。ただ、グリーンウォルドがイギリスのガーディアン紙にスクープを載せたのは事実だし、その後のスノーデンについてはあきらかにアメリカは戦慄したし、この文章を書いている今も尚、ロシアに身を寄せたままになってるし、さらにいうとこの世紀の告発については現在進行中だ。なのに、なんだか現実味に乏しいと感じてしまうことこそ、IT社会の恐ろしさなんだろね。

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INFINI/インフィニ

2016年09月13日 18時48分33秒 | 洋画2014年

 ◇INFINI/インフィニ(2014年 オーストリア 110分)

 監督 シェーン・アビス

 出演 ダニエル・マクファーソン、グレース・ハン、ブレン・フォスター

 

 ◇惑星インフィニ

 地球人が植民した先には原始生命が存在していて、それが液体状の生命体だったものだから、地球人は感染しちゃって先発隊は全滅しちゃったところへ主人公たちの小隊が派遣されるんだけど、ひとりまたひとりと感染して闘争本能ばかりが発露して殺し合っていくっていう筋立てはよくあるもので、これは別に他の惑星じゃなくてもいいんじゃないのってくらいの話なんだけど、いやまあ物語の展開がものすごく速くて、それが好い感じでもあり困惑もしたりする。結局、液体の生命は体内に入ってしまえば血になるわけで、それが地球に来て海に溶け込んで雨や水になってしまえばもはや地球はその生命体に乗っ取られるわけで、そうした危機感はまるで感じることなくただひたすら消去法による殺し合いがなされるっていうのは、うん、まあ展開だけでいけばおもしろかったし、ラスト、すべての隊員の血液となってそれで蘇生していくってのはなんとなくほっとできるかな。お金に困って旦那を待ち焦がれる妊婦の妻にも再会できるしね。

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モンスターズ 新種襲来

2016年09月12日 21時25分24秒 | 洋画2014年

 ◇モンスターズ 新種襲来(2014年 イギリス 119分)

 監督 トム・グリーン

 出演 ソフィア・ブテラ、ジョニー・ハリス

 ◇モンスターの比喩が今ひとつ

 前作の『モンスターズ 地球外生命体』がおもいがけない佳作だったものだからちょっぴり期待したのがいけなかった。リアリズムに徹したいという気持ちはわからなくはないし、軍人の乱交パーティってのはこんなにめちゃくちゃなのかとも最初は感心してたんだけど、いやもう、話はまるでモンスターとは縁もゆかりもない。

 危険地帯に潜入して連絡のとれなくなった友軍を探しに出た小隊がモンスターと敵軍に遭遇してそこから逃げ帰ってくるだけの話で、それも進化したモンスターズはいってみれば世界観の背景でしかないような扱いだ。ここに多額のCGが投入されてるのはいったいなんでなんだろって。

 ま、リアルな迫力はあるけどね。

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パーフェクト・ルーム

2016年07月16日 01時56分40秒 | 洋画2014年

 ◇ザ・ロフト(2014年 アメリカ、ベルギー 108分)

 原題 The Loft

 監督 エリク・ヴァン・ローイ

 

 ◇ハリウッド・リメイク版

 リメイクのそのまたリメイクだそうな。

 英語ではない国の映画がハリウッドでリメイクされることはままあることだけれども、2008年にベルギーで撮られた作品を2010年にオランダでリメイクされて、それを今度はハリウッドでリメイクしたっていうんだから、同じ筋立てで言語だけちがう映画が3本存在することになったってことになる。

 興味深いのは、ハリウッド版はセルフ・リメイクで、つまり、監督のエリク・ヴァン・ローイがみずからハリウッドに乗り込んで撮り上げてる。ちなみにオランダ版の監督はアントワネッテ・ベウメルっていう人らしい。リメイクされた2本は共に出演者がなんとなく似てて、かなり最初のベルギー版が意識されてる。すごい影響力だ。

 で、肝心の話なんだけど、そんなに凄いって感じはしないものの、たしかにサスペンスフルではある。なんせ、仲間内でロフトを持って内緒の時間を過ごすなんてのは、男だったら誰もが憧れるようなシチュエーションなわけで、でも、そうしたうまい話ってやつは最後にはとんだしっぺ返しが来るもんと相場が決まってたりもする。案の定、この5人もそうなる。っていうより、その男のひとりの愛人が全裸のまま手首を手錠でベッドに繋がれ、さらに反対の手首は切られ、そのおびただしい血の中で死んでるってことになれば、こりゃもう大変だ。薬を飲まされて眠らされたにせよ、手首から流れる血のおびただしさを見れば、これは生体反応があったことは明らかで、眠ってるうちに死んじゃったのねと考えるのが妥当なはずなのに、物語はなんだかそうじゃないように考えていく。え、まじ?とおもったりするんだけど、これが最後のどんでん返しに繋がるわけなんだよね。

 とはいえ、次から次へと「実はこれはこういうことだったんだよね」と謎として提示されていたわけでもない新事実が明らかになっていくのはどうなんだろね。知的好奇心をそそられるより前に情報をつきつけられる感じがしないでもないけど、まあ、人間関係についてはちょっとした伏線をちりばめてあったりして、そういうところ細かい脚本だったとはおもうんだな。

 それなりにおもしろかったけど、ちょっと惜しい。そんな感じだ。

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KANO 1931海の向こうの甲子園

2016年04月06日 00時00分00秒 | 洋画2014年

 ◎KANO 1931海の向こうの甲子園(2014年 中華民国 180分)

 原題 KANO

 監督 馬志翔

 

 ◎嘉義農林学校、中京商業と戦う

 タイトルのKANOは、この嘉義農林学校のことだ。

 それにしても馬志翔という監督は『セデック・バレ』では俳優だった人で、それが一気に監督になり、これだけの大作を撮らせてもらえるという土壌は、実にすばらしい。台湾の映画産業はもはや日本のそれを追い抜きつつあるんじゃないかっておもえるくらいだ。

 ほんと、このところの邦画についてはいろいろいいたいこともあるけど、それはさておき、台湾の人々の偉いところは、かつて植民地だった頃、統治していた日本側の功罪についてきちんと把握しようとしていることだ。かれらは統治者だった日本人の中でもあまた尊敬している人がいて、そのひとりがコンピョウさんこと嘉義農林を第17回全国中等学校優勝野球大会において初出場ながら決勝まで導いた近藤兵太郎だったり、嘉農の農業教師で野球部部長でもあった濱田次箕であったり、鉄壁のトライアングルつまり野手の福島又男、小里初男、川原信男だったり、さらには嘉南大圳の建設に邁進した水利技術者の八田與市であったりするんだけど、そうした人達に光をあててくれている。

 嬉しいことだし、こういう姿勢はちゃんと受け止めないといけない。

 ぼくは台湾の人々に感謝しつつ、この作品を観た。

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トレヴィの泉で二度目の恋を

2016年04月03日 03時34分59秒 | 洋画2014年

 ◇トレヴィの泉で二度目の恋を(2014年 アメリカ 94分)

 原題 Elsa & Fred

 監督 マイケル・ラドフォード

 

 ◇『Elsa y Fred』のリメイク

 もともとは2005年に封切られたスペイン・アルゼンチン製作の映画だったらしい。

 といっても、とあるアパートへ引っ越してきた気難しい老人のクリストファー・プラマーが、隣りの部屋に棲んでいる虚言癖のある老女シャーリー・マクレーンと知り合い、やがて恋愛に発展するという、なんとも他愛のない作品なんだけれども、そこはまあベテランの芝居だし、上手に作られてて小品ながらおもしろく観た。

 下敷きになっているのは、アニタ・エルヴァーグとマルチェロ・ マストロヤンニの『甘い生活』で、そこで描かれるトレビの泉の幻想的な場面に憧れるシャーリー・マクレーンのために、クリストファー・プラマーが一肌脱ぐことになるわけだ。けれども、かつてはトラップ大佐が子供たちに弾き語りをしたように音楽家になろうとしていたものの、現実の風を痛いほど受けてきて偏屈きわまりない性格になってしまっているため、まずはそれを融かさねばならないわけで、やはりクリストファー・プラマーはそういう役がうまい。

 まあ、いくつになっても男は現実の中でしか生きられない不器用な生きもので、女は夢想の中へ現実逃避してしまえる器用な生きものであり続けるんだな~って感じだよね。

 ちなみに、トレヴィの泉なんだけど、ぼくはトレビの泉と書く。発音がどうのこうのではなく、ヴィという書き方にはどうにも閉口してる部分があるからだ。もともと、日本語の書き方では「ヴィ」は「ビ」だった。それが認められていない頃は、ぼくはことさらしつこく「ヴィ」と書いたものだが、どうにもこの頃、嫌になってきてる。だから「ビ」と書くことが多い。ことにトレビの泉はそうだ。

 で、この造られてから250年になる泉なんだけど、背を向けてコインを投げ、ちゃんと泉の中に入ったとき、その枚数によって「また泉に戻ってこられる」だとか「恋が成就する」だとかあるらしい。外人さんがそうしているかどうかは知らないが、ともかく日本人はあらかたの人がコインを投げてきたんじゃないだろか。かくいうぼくもそうだ。けど、コインを投げてからぴったり40年になるんだけど、願いはどうなったのかなあ。

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イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密

2016年03月31日 00時00分00秒 | 洋画2014年

 ◎イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密(2014年 イギリス、アメリカ 114分)

 原題 The Imitation Game

 監督 モルテン・ティルドゥム

 

 ◎時として誰も想像しないような人物が想像できない偉業を成し遂げる

 ベネディクト・カンバーバッチをはじめて映画で観たとき、たぶん『アメイジング・グレイス』だとおもうんだけど、なんだか妙に上品で背のひょろっとした鼻の下の長いのっぺりした顔のふしぎな役者が出てきたな~とおもい、こいつ絶対に変な奴だろな~ともおもったりしたものだ。

 ところが、この妙に気になるやけに自信たっぷりで困っちゃうくらいに堂々とした変な役者はその他の追随を許さない完璧な演技でどんどんと頭角を現し、やがてテレビシリーズの『シャーロック』で、誰もが絶賛してやまないだろうきっと、とおもえるような当たり役を得、ついにこの映画にも主演した。なんでこいつが世界でいちばんセクシーだとかいわれるんだ、おかしいだろそれ、みたいなことをおもったりもしていたんだけど、このどうにも気になるナメクジとウーパールーパーを足して2で割ったような長い顔とひょろりんとした体格のみょうちくりんな役者は今やおしもおされぬ大スターになってしまった。なんでかね、まったく。

 それはともかく、ナチスの作り出したエニグマほど、過去に何度も映像化や小説化された暗号機はないだろう。でも、そのとき、この暗号の解明に挑戦していたアラン・チューリングが描かれていたかといえばどうもそうではなさそうだ。だって、ぼくは、おぼえてないんだもん。まあそれだけエニグマについては多方面からアプローチしても尚、語り尽くせないところがあるんだろうけどね。ただ、この映画が世界的な成功をおさめ、いろんなところで絶賛されるのはやっぱりアラン・チューリングが主役とされているからなんじゃないかしらね。

 映画そのものはなにも恐ろしいほど感動的ってわけでもないし、暗号解読を臍にした映画というだけであればそれほど特出するべき筋立てでもない。ところがアラン・チューリングが当時としては違法とされる同性愛者であり、戦後になってそれが図らずも暴露されてしまったときに去勢やホルモン療法かを選ばなければならなくなり、まあアラン・チューリングは後者を選んだんだけど、そういう別な側面が絡んでくるものだから、筋立てがちょっとばかり込み入ってくるし、そこへさらにアラン・チューリングを愛してしまったジョーン・クラーク(演じたのはキーラ・ナイトレイね)が描かれ、女性蔑視の時代から女性の自立を招いた生き方についても同時に描かれているものだから、同性愛と女性解放というふたつの側面を併せ持った暗号解読ドラマとして成立しているんだな、これが。ま、そんなこともあって、人権派の人々をはじめ色んな人達がこの映画を後押ししてるんじゃないかしらね。

 ところで、音楽がいい。アレクサンドル・デスプラ。ピアノの主旋律が美しいんだよ。

 

(以下、2022年12月29日)

 チューリングマシンのできた背景は何度観ても「ほう、コンピューターの前身ってこんな感じだったのかあ」とかって納得し直すんだけど、同時に「それもエニグマへの挑戦ってのが味噌だよなあ」ともつくづくおもったりする。それにしてもカンバーバッチ、うまいな。気弱ながらも意思の強い同性愛者、見事だわ。みんな、うまいんだけどね。

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