◇冒険者たち(1967年 フランス 112分)
原題 Les Aventuriers
staff 原作/ジョゼ・ジョヴァンニ『冒険者たち』
監督/ロベール・アンリコ
脚色/ロベール・アンリコ ピエール・ペルグリ ジョゼ・ジョヴァンニ
撮影/ジャン・ボフティ 美術/ジャック・ドイディオ 音楽/フランソワ・ド・ルーベ
主題歌/アントニオ・カルロス・ジョビン『愛しのレティッシア』
cast アラン・ドロン リノ・ヴァンチュラ ジョアンナ・シムカス セルジュ・レジアニ
◇口笛を吹きたくなるぜ
凱旋門は、飛行機で潜ることができるのか?
映画の中では、アラン・ドロンが科学的にはそれが可能だとして、
果敢に挑戦するも、土壇場で中止に追い込まれるんだけど、
1919年にそれをやってのけたとかいう話を聞いた。
で、
ジャン・ナヴァルっていう飛行士がいる。
フランスの撃墜王だ。
第一次世界大戦時の頃、まだ武装されていなかった飛行機に、
ライフルやロケットを持ち込んで敵の操縦士を殺し、撃墜した。
このナヴァルが死んだのが、凱旋門だ。
でも、潜り抜けたんじゃなくて、
戦勝のお祝いに門のまわりを旋回してるときに不慮の事故に見舞われた。
てことは、たぶん、このナヴァルと『冒険者たち』が一緒くたになって、
「実際に、凱旋門を飛行機で潜り抜けた男がいる」
っていう伝説ができていったんじゃないだろか?
ま、そんな伝説を生むくらい、この映画は衝撃的なものだった。
ぼくよりもひと世代上の人達はかなり影響を受けたらしく、
初めて見たのがテレビの吹替え版だったぼくは、それほどでもなかった。
で、何回か観てる内に「これ、おもしろいじゃん」っておもうようになった。
なんといっても、冒頭、
ジョアンナ・シムカスの冒頭と、車の解体工場のカットバックになるんだけど、
そのとき、カットと主題曲の転調とが見事に合ってる。
もちろん『愛しのレティッシア』の方が先にできてて、
それに合わせて編集されたんだろうけど、すごく好い。
ちなみに、この主題歌はレコード化もされた。
ベルナール・ジェラール・オーケストラの演奏で、アラン・ドロンが歌ってる。
まあ、歌ってるのか囁いてるのかよくわからないような歌なんだけど、
アラン・ドロンはほかの歌もそうで、みんな、甘い囁きだ。
けど、なんだか、いいんだよね。
やっぱり、甘い囁きはフランス語じゃないとあかんわ~。
ま、主題歌はさておき、この映画の見どころは後半にやってくる。
ガスコーニュ湾(ビスケー湾)に浮かぶ島を舞台にした銃撃戦で、
この島が、好いんだ。
ラ・ロシェルっていう港町の沖合に浮かんでるんだけど、
楕円形をした島全体が要塞になってる。
ボイヤール要塞っていって、1801年に築城が始められたらしい。
フランスを守るためにナポレオンが築城を命じたもので、
びっくりすることに楕円柱の総3階建てのとてつもない要塞だ。
実際の戦闘はなかったんじゃないかな~ておもえるくらい外見は綺麗なんだけど、
中は、まるきりの廃墟になってる。
ここで、クライマックスの銃撃戦がある。
なんでここに行ったのかっていえば、
財宝を探しに行ったとき、ジョアンナ・シムカスが故郷の沖の島の話をして、
お金持ちになったらそこを買いたいといっていたからで、
まあ、そこでアラン・ドロンは最期を迎えるわけだけど、
もしも、この島で実際の戦闘がなかったとしたら、
アラン・ドロンとリノ・バンチェラが最初の銃撃戦を展開したことになるし、
歴史上唯一の死亡者がアラン・ドロンってことになる。
ちなみに、この島を実際に買い取ったのは、フランスのテレビ局らしい。
上陸できるようにして改修してくれないかな~。