◇シン・シティ(Sin City)
三原色パートカラーとCGにより現実味の無い夢を観るような錯覚に囚われる。
ミッキーロークは体当たりの演技で、女性は皆たわわな美肢を惜しげもなく披露し、筋は三つの流れが錯綜してて見事なことは見事なんだけど、う~ん、残酷すぎな気もするね。
◇シン・シティ(Sin City)
三原色パートカラーとCGにより現実味の無い夢を観るような錯覚に囚われる。
ミッキーロークは体当たりの演技で、女性は皆たわわな美肢を惜しげもなく披露し、筋は三つの流れが錯綜してて見事なことは見事なんだけど、う~ん、残酷すぎな気もするね。
◎逆境ナイン(2005年 日本 115分)
監督/羽住英一郎 音楽/佐藤直紀
出演/玉山鉄二 堀北真希 田中直樹 藤岡弘 柴田将士 寺内優作 青木崇高
◎島本和彦『逆境ナイン』より
なんというアホ臭さ。
前から島本和彦の炎の漫画は好きで、なんていう熱血的な漫画を描く人だろうとはおもってきた。けれど、それをまさか、大真面目に映画化する人達がいるとは、夢にもおもわなかった。
けど、文句なしに笑った。
面白い。
つきぬけるアホ臭さというのは理屈を超越しているもので、ことに、藤岡弘。の凄さといったらない。田中直樹も「それはそれ、これはこれ」で好い味を出してるし、なんといっても、自分を捨てて張り切ってる玉山鉄二がものすごく好い。
役者というのはほんとに大変な職業で、身を削るどころか、プライドも削らないといけないところがある。もちろん、日本の役者の場合、他の国の役者から見習わなければならない面は多々あるけれど、この映画のタマテツは、非常に好感が持てた。
ま、ぼくに好感をもたれても仕方ないんだけどね。
そんなことはさておき、映像も好かった。一所懸命さが滲み出てるもん。特撮も含めて、こういう絵作りを陳腐だといってしまう人もいるだろうし、漫画みたいなことしてんじゃないよって眉をしかめる人もいるだろう。
でも、そんな意見に耳を傾ける必要はない。
だって、おもしろいんだから。
△ALWAYS 三丁目の夕日(2005年 日本 133分)
監督・VFX/山崎貴 音楽/佐藤直紀
出演/吉岡秀隆 堤真一 薬師丸ひろ子 小雪 堀北真希 三浦友和 もたいまさこ
△昭和33年であって昭和33年でないもの
ときどき、観光地とかに出かけると、昭和レトロな空間の作られていることがある。
そこへ何度か入っている内に「これ、いったい、いつの昭和だよ?」とおもうようになった。
少なくとも、ぼくの知ってる昭和より前の昭和で、おそらく団塊の世代の郷愁を誘う昭和なんだろう。
だからといって決して懐かしくないわけじゃなく、それなりに郷愁をそそられるんだけど、
「なんか、ちがうんだよな~」
とも、いつのまにやら、おもうようになった。そこは作られた昭和で、思い出の中の昭和ではないからだ。
そんな印象を、この映画からも感じた。
冗漫な雰囲気は編集なのか演出なのかわからないけど、ともかくコメディにしたかったのか、役者の演技過剰にもちょっと引いたし。CGはたしかに頑張ってるなっていう感じはしたけど、セットをいかにもセット然とした演出の意味がわからない。
すべての場面をCGとセットにするというのなら、わかる。無くなってしまったものを人工的に再現したのだといいきれるし、現実の再現ではなく、心の中にあるものの再現なんだからとも理由も断言できる。けど、ロケーションとセットとを組み合わせているんなら、再現するものの意味合いがすこしばかり違ってくるんじゃないだろか?
ロケ現場の建物は現役で、昭和時代より朽ちてはいてもまだ生きてる。なのに、ステージ内に作られたセットの映像はすべて死んでた。各地から本物の小道具が集められたそうだけど、みんな、死んでた。セットが、あまりにもセットすぎたからだ。
どうして、ばればれのセットにしたんだろう?なんで、わざわざセットにしか見えない撮影をしたんだろう?岡山や京都や群馬や福岡までわざわざロケに行ってるのに、どうして、現実味の薄い映像にしちゃったんだろう?どうして、お涙頂戴の昔ながらの物語にしちゃったんだろう?役者たちの大仰な芝居も加わって、なんだか気持ちが悪かった。
とはいえ、好いな~と感じたものもある。佐藤直紀の音楽で、映画が封切られて以来、昭和レトロなものが出てくると、かならずこれだ。おかげでかなり食傷気味になってるけど、でも、好い音楽だった。とはいえ、この映画の主題が、ぼくにはやっぱりわからない。
なにを観客にいいたいんだろう?
『クレヨンしんちゃん おとな帝国の逆襲』には、立派に主題があった。
「昭和時代は懐かしいし、帰りたいし、いつまでも続いてて欲しいけど、ぼくらは現代に生きてるんだから、現実に立ち向かっていかなくちゃいけないんだ」
っていうのが、そうだ。
この映画の主題は、なんなんだろう?聞けば、200万人を動員したらしいけど、その200万人の人々は、なにをおもしろいと感じて銀幕を観ていたんだろう?
「懐かしさもあったし、おもしろかったから、それでいいじゃん。つまんないこといってんじゃないよ、あほたれ」
と怒られそうだけど、気になるんだから仕方がない。
ま、少数派のたわごとだけどね。
△男たちの大和/YAMATO(2005年 日本 143分)
監督・脚本/佐藤純彌 音楽/久石譲
出演/仲代達矢 鈴木京香 反町隆史 中村獅童 松山ケンイチ 渡哲也
△昭和20年4月7日、大和撃沈
学校に通ってた頃、ぼくは戦争というものにまるで興味がなかった。
戦争の話を聞かされるとき、それはたいがい惨めな話で、戦争は悪いことだとずっと聞かされてきたから、そんなものに興味を持つはずがないよね。小学校の時代も、プラモデルで軍艦や戦車を作ってる友達がいたりしたけど、ぼくの作るプラモデルといえばほとんどが怪獣かアニメのキャラクターで、ときどき城とかは作ったりしたけど、兵器や武器にはまるで無関心だった。
信じられないような話ながら、戦艦大和も零戦も、木造だとおもってた。
「くろがねの浮かべる城」という表現が戦艦を指すものだってことも、まるで知らなかった。
ていうより、そもそも、戦艦や戦闘機とかについて考えなかった。でも、人間、年は取るものだよね。今では、大和も零戦も木造じゃないってことくらいは知ってる。で、その『大和』のことだ。戦艦大和というのはなんとも不運な軍艦で、ぼくらが学生の頃には、反戦の象徴として扱われることがままあった。
「世界3大バカは万里の長城、ギザのピラミッド、戦艦大和」
とかいわれ、無用にでかいものを作ったからだと説明された。誰がいった言葉かということはひとまずおいて、でも、そんな世界的なバカのひとつなのに、一方では、世界最大最強の戦艦と讃える。大和にしてみれば、迷惑な話だろう。
この艦は、日本を守るために造られた。たしかにその図体のせいで、パナマ運河こそ通過できないけど、世界のどの軍艦よりも頑丈で、射程距離が長く、そして最強の砲弾をぶちこむ。その方針で造られたはずが、沖縄決戦の応援に充てられ、菊水作戦が発動されるや、制空権を奪われた戦場めがけて出撃した。すでに正規空母もない状況だから、わずかな航空機の護衛すら無く、蜂の巣にされ、沈められた。
戦闘能力を失った時点で、すでにそれは完璧な敗北といえるから、もしも、敵とはいえ日本人の人命もまた尊重するという思想が米軍にあれば、どこかの小島か岩礁に擱座するのを想定して、攻撃をやめるべきだったろう。そうすれば、乗組員の半数以上は生還させられたはずだ。
けれど、戦争はそんな甘っちょろいもんじゃなかったんだろうね。乗組員3016名中、2740名が戦死した。当時、こんなはずじゃなかったと大和を造り上げた人達はおもったろうし、これでいいのだとおもった日本人はたぶん稀れだったろう。
で、現代人の感覚はどうなんだろね。大和が激闘を繰り広げたときの血の量も赤さも匂いも薄まり、冷静な第三者があれこれと分析して、大和の持っていた意義や覚悟や悲劇性よりも、軍国日本の象徴のひとつとして捉えられてるんだろうか?大和は、これまでにもいろんな映画に登場してきた。多くの場合、反戦あるいは悲劇を語る際、引きずり出された。そうでない大和を描く場合、宇宙に飛び出すしかなかった。
この作品はどうかといえば、やっぱり反戦映画だったとぼくは受け止める。
反戦を訴えるのは大切なことだとおもうけど、ひとつひっかかったのは、長嶋一茂演じる臼淵磐少佐だ。文人になれるような素質を持った人だったんだけど、海軍の軍人になりたいという意欲の方が勝って海兵に進んだ。死後進級して少佐になったから大和出撃時は大尉だった。経歴や階級はさておき、この人は、出撃の前夜、海兵出身の若手将校と学徒出身の予備士官との間で論争があり、
「今次作戦につき、国の為に殉じることは意義ありやなしや」
というような論争があり、あわや乱闘になりかけたときに割って入り、
「敗れて目覚める。祖国の新生に先駆けて散ることこそ本望なり」
というような台詞をいったことになってる。ただ、生還者の証言からちょっと信憑性に欠けるともいわれてるらしい。たしかにそうかもしれないね。出撃の前夜、ここまで達観してたら大したものだけど、たとえ、そんな余裕があったにせよ、ちょっといえない。まあ、このあたりの話は長くなるからしないけど、反戦映画としてこの作品が製作されたんなら、大きな意味を持った台詞ってことになるんだろうね。
ただ、こんなことがあった。沖縄へ行ったときのことだ。ひとりの老人と知り合った。その人は「都内でラーメン屋をやってるんだ」といっていたんだけど、話を聞けば、戦争当時は現役兵で、飛行機の操縦士だったらしい。主に一式陸攻っていう陸上攻撃機を操縦してたそうで、あるとき、トラック諸島に派遣された。
すると、
「大和がいたんだ」
やっぱり、どでかい戦艦だったらしい。長門が隣に繋留されてたけど、比べ物にならないバカでかさだったらしい。いや、ただでかいだけじゃなく、たとえようもなく美しい艦影だったらしい。くわえて、
「あいつがもっといろんな戦場に出て、主砲をぶっぱなしてりゃあなぁ」
そのおじさんにとって、大和は当時も今も最強の守り神なんだろう。ラーメン屋さんは、いまにも泣きそうな顔だったけど、胸をはって、なんとも誇らしげに、こういった。
「大和は、ほんとに凄かった。あいつに勝てる戦艦は、世界のどこにもねえんだ」