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☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

マイノリティ・リポート

2013年07月23日 00時31分30秒 | 洋画2002年

 ◎マイノリティ・リポート(2002年 アメリカ 145分)

 原題 Mignority Report

 staff 原作/フィリップ・K・ディック『小数報告』

     監督/スティーヴン・スピルバーグ 脚本/スコット・フランク

     撮影/ヤヌス・カミンスキー 空中撮影/ラリー・ブランフォード

     特殊メイク/K.N.B.EFX Group Inc. ジェイク・ガーバー グレゴリー・ニコテロ

     特殊効果/ウィリアム・ショート 特殊効果監修/マイケル・ランティエリ

     視覚効果/Industrial Light & Magic

             アサイラムVFX ドナルド・エリオット

     プロダクション・デザイン/アレックス・マクドウェル

     美術/レスリー・マクドナルド セス・リード 美術監修/クリス・ゴラック

     衣裳/デボラ・リン・スコット 音楽/ジョン・ウィリアムズ

 cast トム・クルーズ コリン・ファレル マックス・フォン・シドー キャサリン・モリス

 

 ◎2054年、ワシントンDC

 ディックの世界はどうしても陰鬱なものになってしまうので、

 これもそうだろうな~とおもっていたら、やっぱり、ダークな未来像だった。

 けど、さすがにディックらしいっていうか、

 犯罪を犯してしまう人間を探し出すという、

 一見すればものすげー科学的な設備なんだけど、

 なんのことはない、予知夢なのだ。

 いってみれば、

 邪馬台国の時代に卑弥呼が宣託を口にするようなもので、

 要するに予知能力という超能力に頼っているわけだ。

 それがたとえ遺伝子の突然変異によって生まれたにせよ、

 あくまでも夢であり、それによって、

 人類が支配されるとまではいかないにせよ、なんらかの束縛を受けている。

 そんな世界での話で、いや~なんともディックらしいじゃないか。

 さらにいうと、

 こういうディック世界に引き摺られたのか、

 スピルバーグもかなり陰鬱な印象を伝えようとしてか、

 トム・クルーズが離婚して息子にも会えず、しかも麻薬の常習者という、

 なんともスピルバーグ作品の主人公らしからぬ設定になってる。

 これを好しとするかどうかは観る者次第なんだろうけど、

 空間上のノータッチパネルっていう凄いモニターを駆使しながら、

 転がり出てくるのは木造りの焼き鏝をあてられたような球っていうアンバランスさは、

 外の世界でも同じように演出されてて、

 空中を移動する警察関係の車輛や背負いのジェットとかのほかには、

 現代とほとんど変わることのない未来像になってる。

 リアリティは、ある。

 主題は「自分が自分を信じないで誰が自分を信じてくれるんだ」ってのと、

 人間は未来永劫、権力欲や支配欲を切り離せない生き物で、

 自己の存在を肯定するためには、最後まで闘わなくちゃいけないんだ、

 って感じなんだろうけど、

 予知夢が不完全なかけらで、

 それを人間が色眼鏡で纏める未来予測ってのが、なんともおもしろかったわ~。 

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永遠のマリア・カラス

2013年07月22日 00時37分08秒 | 洋画2002年

 ◎永遠のマリア・カラス(2002年 イタリア フランス イギリス ルーマニア スペイン 108分)

 原題 Callas Forever

 staff 原案・監督/フランコ・ゼフィレッリ

     脚本/フランコ・ゼフィレッリ マーティン・シャーマン

     撮影/エンニオ・グァルニエリ

     美術/カルロ・チェントラヴィーニャ ブルーノ・チェザーリ

     衣裳/カール・ラガーフェルド 特撮/クラウディオ・ナポリ

     音楽/アレッシオ・ヴラド 音楽監修/ユージーン・コーン

 cast ファニー・アルダン ジェレミー・アイアンズ ジョーン・プローライト

 

 ◎1977年9月16日、マリア・カラス没

 マリア・カラスは53歳で他界したらしい。

 そんなに若かったんだ、てのが偽らざる感想だけど、

 ここまで世界的な名声を博しちゃうと、

 ものすごく前の時代の人のように感じちゃう。

 年齢ってのは、ほんと、わからないもんだし、

 実際のところ、彼女の絶頂期は10年ちょっとだったらしい。

 ちなみに、マリア・カラスの最後の公演は日本で、

 1973年と1974年にあって、スター千一夜にまで出演してる。

 これも「へ~」って感じだ。

 ま、そのあたりのことは映画でも触れられてるけど、

 この映画は、

「カラスと旧知の仲だったフランコ・ゼフィレッリの私小説ならず私映画じゃない?」

 てなふうにもおもえちゃう。

 カラスに対して、最後に映画に出てくれないか、と説得したことがあって、

 その思い出を、まるきり実話とは関係ないような、虚構の話に仕立て上げたんじゃ?

 それは、ゼフィレッリしか知らないことなんで、憶測はやめとこう。

 けど、

 往年のスターを最後にもう一度だけ輝かせたいと願うのはフアンの心理だし、

 そのスターを男女をこえた関係で愛している人間の話にしてる。

 このあたり、ゼフィレッリはよく考えてるよね。

 ジェレミー・アイアンズって人は、なんだか危険な匂いがして、

 やけに色気があって、

 性的に崩れてゆく役を演じさせたら右に出る者はいないんだけど、

 それがファニー・アルダン演じるカラスに徹頭徹尾つくすんだから、

 ホモっていう設定にしないと、観客は余計なことを考えちゃう。

 いや、ゼフィレッリ、たいしたもんだわ。

 でもまあ、

 なにより、ファニー・アルダンが好演してる。

 マリア・カラスと似てるようで似てないんだけど、

 どっから観ても「マリア・カラスってこんな人だったよね」って感じになってる。

 この役は決まるまでにかなり難航してたみたいだけど、

 もともとゼフィレッリの頭の中にはファニー・アルダンがあったんじゃないかしら。

 にしても、80歳で、こんな色気のある映画を撮っちゃうなんて、

 ゼフィレッリ、やっぱり凄いわ。

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ハイ・クライムズ

2012年11月05日 13時47分39秒 | 洋画2002年

 ◇ハイ・クライムズ(2002年 アメリカ 115分)

 原題 High Crimes

 監督 カール・フランクリン

 出演 アシュレイ・ジャッド、モーガン・フリーマン、アマンダ・ピート、ブルース・デイヴィソン

 

 ◇軍という紐のついた軍事裁判

 本名を隠して偽りの名でもって結婚していた夫ジェームズ・カヴィーゼルの無実を信じて、暴行されようが流産させられようが真実を追求していく弁護士役というのは悪くないんだけど、相棒になった元グリーン・ベレーで今は人生を投げてしまった観のある弁護士になってるモーガン・フリーマンもまあ類型的ながら悪くはない。

 でも、そもそもFBIがいきなり乗り込んできて夫を逮捕して、本名まで隠して、その罪状たるや1988年にエルサルバドルで市民9人を殺害したっていうんだから、ふつうならこれはダメだろっておもわないのかな?嵌められたのかっておもうんなら、もう単に観客を驚かしたいあまりのどんでん返しなんか設定せずに、市民9人の殺害にいたった謎の全貌を掴んでいくっていう方がいいんじゃないのかしら?

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バイオハザード

2009年07月15日 00時47分47秒 | 洋画2002年

 ◎バイオハザード(2002年 イギリス、ドイツ、アメリカ 100分)

 原題/Resident Evil

 監督・脚本/ポール・W・S・アンダーソン 音楽/マリリン・マンソン マルコ・ベルトラミ

 出演/ミラ・ジョヴォヴィッチ ミシェル・ロドリゲス ハイケ・マカチュ

 

 ◎そうか、鏡の国のアリスなのか

 しかし、見ていて思い出されるのはエイリアン2。いつ変異した生物にカマンッと叫ぶのかと。主役が中性的なので偽装結婚の相手がさほど良心的な人間でなくとも納得できますがラストの銃で身構えるのはいかにも続編ありだ。

 でもまあ、実際、どんどん作られていったわけだし、これはこれで充分出だしのおもしろさを伝えてくれた。

 主題曲は、見事だね。

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28日後...

2008年06月29日 00時18分50秒 | 洋画2002年

 ◇28日後...(2002年 イギリス 114分)

 原題/28 Days Later

 監督/ダニー・ボイル 音楽/ジョン・マーフィ

 出演/キリアン・マーフィ クリストファー・エクルストン ナオミ・ハリス ブレンダン・グリーソン

 

 ◇ウイルスによりロンドン潰滅

 『ワースト』を思い出した。

 ゾンビとどう違うのよ?といいたくなりそうな人間化け物映画だった。チンパンジーが危険な感染症にかかり、それが伝染して人間に発症するわけだけど、この症状が凄い。ひたすら凶暴性が精鋭化する、というものだ。ゾンビを低予算で現代的にアレンジするとこうなるのかな?

 島国ならではの話で、タクシー運転手の親子という設定は良だ。

 次から次へと安直な続編が作れそうな気もするが、まさか...とおもってたら、案の定、続編ができた。

 その名も『28週間後』

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8人の女たち

2008年03月14日 10時43分13秒 | 洋画2002年

 ◇8人の女たち(2002年 フランス 111分)

 原題/Huit Femmes

 監督/フランソワ・オゾン 音楽/クリシュナ・レヴィ

 出演/ダニエル・ダリュー カトリーヌ・ドヌーヴ ヴィルジニー・ルドワイヤン

 

 ◇ロベール・トマの戯曲

 女優だったら、この舞台や映画には出たいだろうな~っておもわせるところが、この台本のいいところだ。

 原作となってる戯曲が1961年に初上演されてるから、まあ、舞台が1950年代になるのは当たり前かもしれない。

 そんなことはいいとして、おおむね、愉しかった。特に、ミュージカル仕立てになってるもんだから、なんにも知らずに観たこちらとしてはちょっとばかり戸惑っちゃうんだけど、でも、ドヌーヴの歌は嬉しかった。

 んだけど、いくつになったのか、脂肪がぽってりとついちゃったかなと。哀しみのドヌーヴってところだわ。とはいえ、さすがに高い気位を守ろうとする哀れさは良いね。

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ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔

2007年08月11日 19時53分39秒 | 洋画2002年

 ◎ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔(The Lord of the Rings : The Two Towers)

 

 物語って、この物語にかぎらず、敵役がどれだけ強そうかということがおもしろさを決める。

 親玉ではないけれど、なんとなくひきこまれちゃうのが、冥王サウロンの配下の指輪の幽鬼ナズグルで、馬に乗って顔を見せずに迫ってくるこの9人がいかにも不気味で好い。顔を見せないことでその兜の下が暗黒になってて、結局はそこに槍をぶっさして倒すことになるんだけど、指輪をひとたびは手に入れながらもその魔力によって闇に引き込まれてしまった哀れな連中ってわけで、このあたりの設定がいい。

 そうした指輪の魔力にひきずりこまれしまう旅の仲間も当然いるわけで、これをショーン・ビーンが演じてるんだけど、これは当時の適役だね。ショーン・ビーンの弟役のデビッド・ウェナムが入れ替わりに仲間になるようなならないような、ちょっと微妙な役回りになるのは、ちょっと物足りなさもあるかな。

 ヘルム峡谷の角笛城の戦いは見応えがあったけど、その分、主人公のはずのイライジャ・ウッドとショーン・アスティンの旅がかすむなあ。

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パニック・ルーム

2007年07月24日 16時15分56秒 | 洋画2002年

 ◎パニック・ルーム(Panic Room)

 

 監督のデビッド・フィンチャーもそうだが、ジョディ・フォスターがいちばん研ぎ澄まされたときっていうか、サスペンス向きだった頃ってことがよくわかる。パニック・ルームっていう設定もまたあるようでない感じで、妙に新鮮だった。クリスティン・スチュアートがなんといっても子役ってのが時代を感じさせるし、仕方なく降板したニコール・キッドマンが声だけで出演してるってのも好印象だ。

 

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戦場のピアニスト

2007年07月11日 17時57分18秒 | 洋画2002年

 ◎戦場のピアニスト(2002年 ポーランド、フランス 148分)

 原題/The Pianist

 監督/ロマン・ポランスキー 音楽/ヴォイチェフ・キラール

 出演/エイドリアン・ブロディ トーマス・クレッチマン ジェシカ・ケイト・マイヤー

 

 ◎ウワディスワフ・シュピルマン『ある都市の死』

 1939~45年、廃墟の中の主題。

 いいかえれば、ユダヤ人のピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンとナチスドイツの将校ヴィルム・ホーゼンフェルト大尉の物語。

 第二次世界大戦における人間模様は、ナチスドイツのすべてが、ユダヤ人すべてを迫害したというのではなく、ナチスの将校にもさまざまな人間がいたということ、迫害されたユダヤ人の中にもいろんな人間がいたということ、つまり、人間は単純な型に嵌めてしまっていいものではないということを、この作品は主題のひとつにしている。

 ポーランド人のウワディスワフ・シュピルマンの自叙伝だから、事実を描いているのは当たり前なんだけど、その中に登場する、かれの命を助けたヴィルム・ホーゼンフェルトに興味がいく。ホーゼンフェルトはナチスの信奉者でありながら、ユダヤ人を助け、人類の生み出した音楽という分野に多大な貢献をした。にもかかわらず、ソ連によって強制連行され、やがて死を迎えさせられた。こんな皮肉な話があるんだろうかっていう主題もある。

 さらには、いかに芸術的に優れていても究極的な状況に追いこまれると、尊厳よりも生に執着してしまうのが人間だけど、同時に、過酷な情況でも、至高の芸術を求めずにはいられない本能を持っているのが芸術家だ、という主題もあるんだろう。

 ポランスキー自身、ゲットーの体験者であるから、いつかはその、忘れようにも忘れられない体験を映像化しなくちゃいけない、というように考えていただろうし、そういうことからいえば、最大の主題は、おのれの過去のおのれなりの清算にあったのかもしれないね。

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サイン

2007年07月10日 13時59分25秒 | 洋画2002年

 ◇サイン(2002年 アメリカ 107分)

 原題/Signs

 監督・脚本/M・ナイト・シャマラン 音楽/ジェームズ・ニュートン・ハワード

 出演/メル・ギブソン ホアキン・フェニックス ロリー・カルキン M・ナイト・シャマラン

 

 ◇ペンシルバニア州バックス郡

 この難しい映画の主題はなんなのって訊かれたら、たいていは「家族の絆」とか「信頼」とかっていう答えが返ってくるかもしれない。

 でも、それだけだろか?

 不条理からの蘇生とかって答えはないんだろうか?

 サインというのは不条理な死を迎えてしまった妻が、残された家族にあてた魂の復活へのサインで、現実にいくら語っても答えてくれない死人が実は答えてくれている、という事を理解して初めて新たな人生を歩みだせるという、一種の哲学映画なんじゃないかっておもってるんだけど、どうかしら?

 まあ、そんなこともおもったりしたんだけど、かれらは大きな箱庭の中の住人みたいなもので、見ている途中は、こんなことを考えてた。かれらと外界とをつないでいるのはテレビだけっていうのが、なにか特別な意味は持ってないんだろうか?

 テレビで報道されているのは、世界中にエイリアンが押し寄せてきたっていう情報なんだけど、これ、ほんとうのことなんだろうか?

 家族以外の誰かがそういう報道番組を流して、かれらをパニック状況に追い込んでいるんじゃないのか?

 だから、登場してくるエイリアンも実は知り合いが仮装していることで、妻の死に際に「見て、振って」と言い遺しているのを耳にした友人たちが、神の存在を信じなくなってしまったメル・ギブソンとその家族を立ち直らせようと、たくみに仕組んでいるんじゃないのか?

 でも、どうやら、ちがうらしい。ただ、エイリアン騒ぎがかれらの周辺だけで起こっているかどうかについては、この映画はなんの言及もしていない。

 つまり、もしかしたら、かれらを包み込んでいる異常な状況は、亡き妻が仕組んでいるものなのではないのか?

 友達がやっているんじゃなくて、妻がやっているとしたら、納得がいく。世界は滅亡に向かってなどいないし、地球が異星人に侵略されているわけでもない。そういう嘘の状況を、死んだことでテレビの電波を操作することのできるようになった妻が、すべてを仕組んでいるんじゃないのか?

 なんてことを、観終わってからおもった。

 最後に、メル・ギブソンは、こんなことに気づかされる。

「この世の中に偶然は存在しない。すべての事象に意味がある。一見、無意味に思えることも、実は、神が与えたもうたもので、真実を伝えるためのサインなのだ」

 妻の死も、弟のメジャー・リーガーへの挫折も、息子のぜんそくも、異星人の襲来も、異星人が水が弱点だという認識も、なにもかも意味がある。その意味のもたらすものは、残された夫と家族の復活なのだ、ということだよね。よくわからないけど、どうなんだろ?

 ちなみに、トウモロコシ畑がやけに好い雰囲気を醸し出してる。

 トウモロコシって、霊魂が宿り易いんだろうか?

『フィールド・オブ・ドリームス』もそうだったけど、幽霊たちって、トウモロコシ畑の中から現れない?

 なんだか、日本人にはわからない霊的な静けさがあるのかもね。

 奥さんの魂は、あの畑に漂ってるんだな~。たぶん。

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レッド・ドラゴン

2007年07月09日 11時49分17秒 | 洋画2002年

 ◎レッド・ドラゴン(2002年 アメリカ 125分)

 原題/Red Dragon

 監督/ブレット・ラトナー 音楽/ダニー・エルフマン

 出演/アンソニー・ホプキンス エドワード・ノートン エミリー・ワトソン

 

 ◎これ、何回目の映像化?

 そうおもってしまうくらい、アメリカ国内でトマス・ハリスの原作の人気は凄いみたいだ。

 とはいえ、ぼくは、

「監督の撮りたい物を撮るのが本来あるべき映画の姿じゃないか」

 っておもってるから、この原作に惚れ込んだ監督が沢山いたんだって受け取りたい。

 で、観客としてのぼくらは、もう『羊たちの沈黙』からずっと、アンソニー・ホプキンスの怪物のような演技が愉しみで仕方がない。レクター博士が憑依ってるんじゃないかっておもうくらい凄い。

 ただ、今回はエミリー・ワトソンの印象がものすごく強い。まあ、これはハリウッドの得意技といってもいいんだけど、心理活劇で「見えない」という枷は、まさに米映画の独壇場で、本作もいうにおよばず、上手だった。

 ただ、愛する相手への信頼と疑惑が揺らいでゆく様はたしかに良だけど、大団円の処理に少し工夫があれば好かったのにと、思わず悔やんでしまう面がないでもない。

 でも、悔しいとおもうくらい良い出来栄えだったっていうことなんだろうね。

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マトリックス

2007年06月26日 01時46分06秒 | 洋画2002年

 ◎マトリックス(2002年 アメリカ 136分)

 原題/The Matrix

 監督・脚本/アンディ・ウォシャウスキー ラリー・ウォシャウスキー

 音楽/ドン・デイヴィス

 出演/キアヌ・リーヴス ローレンス・フィッシュバーン キャリー=アン・モス

 

 ◎エナメルな兄弟

 ある意味、この作品は映画史の革命だった。

 なにがそうかって、やっぱりバレットタイム(マシンガン撮影)だろう。とはいえ、封切り当時はそんな映像だけが喧伝されてたけど、なかなかどうして、物語の構成と展開はかなり出来がよく、色褪せる事がない。

 すくなくとも、ぼくはそうおもってるんだよね。

 物語の構成や内容についてはいまさらここで書いても仕方ないんだけど、人間牧場以来の普遍的な主題ながら見事に大衆芸能化し、レトロかつ濃厚なフェチ世界を構築してる。

 別な言い方をすれば、物語自体は決して新しいものではないし、SFとしては新たな発見や衝撃はなかったんだけど、それがワイヤーアクションやアニメを元にしたカット割りなど、随所に見られる新鮮味と、数寄者好みの衣装と世界観が完成されてるんじゃないかと。

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スパイキッズ2 失われた夢の島

2007年06月06日 00時42分12秒 | 洋画2002年

 ◇スパイキッズ2 失われた夢の島(2002年 アメリカ 100分)

 原題/Spykids 2 : The Island of Lost Dreams

 監督・脚本・撮影・美術・編集/ロバート・ロドリゲス

 音楽/ロバート・ロドリゲス ジョン・デブニー

 出演/アントニオ・バンデラス アレクサ・ヴェガ ダリル・サバラ カーラ・グギノ

 

 ◇ロバート・ロドリゲスって…。

 なんとも多彩な監督だってことくらいしかわからないんだけど、よくもまあ、これだけすべて自分ひとりで処理しちゃうな~ってのが正直な感想だ。

 バンデラスとツーカーになってしまったのか、好き放題に撮りながら、それでいて、ハリウッドのお約束を守ったエンターテイメントに仕上げている事には、いや、ほんとに脱帽するわ。

 前作に比べれば、予算も充分に取れたみたいだし、なんていうか、羨ましい。

 その昔、たしか『巨大生物の島』って映画があって、何度か観た気がするんだけど、どうして島っていうのは、巨大生物が棲んでるっていう発想になるんだろう?

 ぼくたちは島という閉ざされた空間に、いや、外界と遮断されて独自の世界を作り出してる空間に憧れ、そこには未知なるものが存在しているんじゃないかっていう夢想を抱いてきた。

 それはたぶん東宝のゴジラシリーズのおかげかもしれないんだけど、もしも、ロバート・ロドリゲスもぼくたちと同じような少年期を送っていたとしたら、こういう発想が芽生えてくるのは、必然ってことになるんだろうか?

 だから、子供騙しの映画だよな~とかおもわずに、こういう作品を観た子供たちが、何十年後かに、また、巨大生物が棲息しているかもしれない島の映画を作るようになったら、それはそれで素敵なことなんじゃないかっておもうんだよね。

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めぐりあう時間たち

2007年04月15日 15時17分31秒 | 洋画2002年

 △めぐりあう時間たち(2002年 アメリカ 115分)

 原題/The Hours

 監督/スティーヴン・ダルドリー 音楽/フィリップ・グラス

 出演/ニコール・キッドマン ジュリアン・ムーア メリル・ストリープ エド・ハリス

 

 △マイケル・カニンガム『めぐりあう時間たち』より

 3つの時間がある。

 1923年、ロンドン郊外リッチモンド。

 1951年、ロサンジェルス。

 2001年、ニューヨーク。

 これらの時間軸は決して合わさることはない。

 けど、3つを繋いでいるのは、ニコール・キッドマン演じるヴァージニア・ウルフの書いた『ダロウェイ夫人』だ。キッドマンは『ダロウェイ夫人』を書くことでその日を送り、ジュリアン・ムーアは『ダロウェイ夫人』を読むことでその日を送り、『ダロウェイ夫人』とあだ名をつけられているメリル・ストリープは、エイズになっているエド・ハリスを面倒を見、その自殺を迎える。

 まあ、決して楽しい内容ではないし、それどころか、神経がぴりぴりするような重苦しさと緊張感がある。

 キッドマンは綺麗だし、当然、とっても上手なんだけど、どうにもやるせない感情を抱えた設定だから、輝いてはいない。一冊の本を軸に、女性たちの心情が巡りあってゆくというのは好きな設定なんだけど、いやまあ、どうにも辛くなってくる話ではあるよね。

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ダークネス

2007年04月05日 11時58分40秒 | 洋画2002年

 ▽ダークネス(2002年 スペイン、アメリカ 102分)

 原題/Darkness

 監督/ジャウマ・バラゲロ 音楽/カルレス・カセス

 出演/アンナ・パキン レナ・オリン ジャンカルロ・ジャンニーニ フェレ・マルティネス

 

 ▽40年という周期

 どうやら、映画には向き不向きというものがあるらしい。

 ジャウマ・バラゲロはおそろしく才能のあるヨーロッパの監督として、アメリカあたりで絶賛されたらしい。この映画でってわけじゃないけど、それは事実としてある。

 で、この作品だ。そんな才能あるバラゲロが、豪勢なキャスティングをしてる。父親ジャンカルロ・ジャンニーニの故郷スペインのとある村で、40年前の日食の日に、7人の子供が行方不明になった。1人、当時の父親だけが帰ってきたけど、残りの6人は行方不明だ。そんな父の旧宅に引っ越してきた家族が恐怖に見舞われるって話だ。

 皆既日食の日に子供たちに何かが起きる!

 みたいな惹句だったんだけど、たしかにそうだ。

 でも、それだけだ。

 影や声や重苦しい雰囲気で恐怖を増幅させようとはしているものの、悪魔信仰に身も心もゆだねてしまった祖父がいて、40年前に仲間達が自分の子供を生贄にしたにもかかわらず、父だけが生還してしまったために、ふたたび巡ってきた皆既日食の日にかつての生贄である父をまたもや生贄にして悪魔の儀式を完成させようとする祖父の魔の手から、姉と弟が恐怖にうちふるえながらも父を守ろうとする話という解釈は、もしかしたら間違っているかもしれない。

 ほんと、一所懸命に観たんだけど、物語が破綻してるのか、ぼくの脳がなにか得体の知れないものに対して拒否反応を起こしているのか、どうもよくわからない。

 過去と現在の事件が、ぼくの中で、上手に繋がらないんだよ~。

 象徴になってるのが皆既日食、つまりウロボロスの蛇なんだから、過去と現在は円を描くように繋がっているはずで、だからこそ、祖父は自分の家を「円」にして儀式の聖なる場にしてるはずなんだけど、そういう理屈は頭ではわかるんだけど、映像と物語が、なんでこんなに頭に入ってこないんだろう。

 ふしぎだ。

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