☆陪審員2番(Juror #2)
この作品がなんで劇場で公開されなかったのか、わからない。すこぶる、おもしろかった。
ニコラス・ホルトの、自分が実は過失致死させてしまったんじゃないか、真犯人は自分で、この事実を話せば裁判は逆転無罪になる、でも自分と妻子を守るためには事実を話すわけにはいかない、ならばどうすればいいのだろう、そうかこの轢き逃げ事件を無罪にしてしまえばすべてあいまいなままになるのかもしれない、という心理サスペンスがぎりぎり迫ってきて、いやまじ、ほんとに熟練の演出で、上手な映画だった。
ニコラス・ホルトを追い詰めていく検察官トニ・コレットも冷静ながらも同時に耐えがたいほどの焦慮を見せる演技で、じつに好い。
これが『十二人の怒れる男』とちがうのは、無実の罪を着せられているという設定はおなじながらも、良心的な正義感に燃えていくヘンリー・フォンダと、自分の罪は免れたいけれども自分のせいで無実の罪に追い込まれてしまうかもしれないというぎりぎりの良心に苛まれるニコラス・ホルトというのは、真反対の設定で、これが効いてるんだよね。