Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

新年番外地編 Tool’s 2.撮影機材のシステム-第2世代

2008年01月02日 | Photographic Equipment


 私が正月の良さを感じるのは、人が少なく街が静かなところ。この静かさは、普段のヨーロッパの街に近いかもしれない。日本の日常が過激すぎると思う。
 1990年代、リバーサルフィルムの性能が著しく向上し、ボディの電子化(AF・AE)や高性能ズームが開発された。私の周囲のフォトグラファー達は、ニコンからキャノンが新開発したEOSシステムに乗り換えていった。実際EOSは、システム全体のパフォーマンスではニコンを凌駕していた。個人的には、キャノンのファインダーの悪さを体験していたので、初代システムと互換性あるニコンでシステムの更新をした。彼らからF2.8で広角、標準、望遠ズームがいいのではと勧めもあり、汎用性を目指した第2世代システムが以下。
■Nikon F4
■Nikon F3HP(NYのブルックリンカメラで調達した中古)
○Nikkon AiAF,F2.8/20-35mmD
○Nikon AiAF,F2.8/35-70mmD
○Nikon AiAF,F2.8/80-200mmD
○Carl Zeiss Planar F2.8/80mm(NYのブルックリンカメラで調達した中古)
 このシステムは、解像度と発色のよい3本の高性能ズームレンズと、F4とF3の類を見ないクリアーな大型ファィンダーは、優れものであった。今でもこれを超える一眼レフボディはない。またF4にストロボSB24の組み合わせは、自然な調光が得られる点でも優れていた。現在講義で使用している国内のスライドは、この機材で撮影したものが多い。
 F4ボディは、エンジニアリングプラスティックを使用している。私の経験では、フィールドで撮影中にボディが三脚から外れ、頭からコンクリートの地面に落下し、ボディの頭部が二つに裂けたことがあった。だがそれが衝撃を緩和したため、内部の高価なプリズムガラスに損傷はなく、ガムテープで頭部を貼り合わせそのまま使用できた。因みにキャノンは落とせば必ず壊れ作動しない。そんな進化した機材にも2つの欠点があった。
 第1は、ボディとガラスの固まりのような大口径ズームレンズ3本で既に5kgと、初代システムの2kgを超える。それにバッテリー、ハスキーの三脚、フィールド調査の野帳や画材や資料といった類をバッグに詰めると10kg近くになる。持ち歩くというよりは、カートに積んでゆくことが多かった。重い故海外に持ち出す機会もなかった。
 第2は、電子化故にバッテリーの消耗が激しいこと。F4が入手しやすい単3電池4本を電源としたのは英断だったが、フィルム20本がスムーズに撮影できる限度である。それを補完したのが、同様の電子カメラF3である。唯一1/60の機械式シャッターを搭載し、電池がなくても使えたのは便利だった。実際の使用場面で万一を考えているところがニコンである。ニコンのプロダクトは、最初は大変使いにくい。しかし長く間使用していると、使いにくさにが、フィールドにおいては必要であり意味があることを教えてくれるプロダクトである。
 この頃、京セラのコンタックス・システムのカール・ツァイスレンズの、発色と解像力の優秀さに気づかされる。当時のニコンシステムで使うことができる、ハッセルブラット用を代用した。キャノンやニコンのレンズは優秀だが、ツァイスのレンズは、それら以上に優秀なのである。
 第2世代システムは、総じて撮影結果が良くなり、作業が効率的になった分、重さとバッテリー消耗の早さというデメリットがある。ある部分が優れて進化し、それと引き替えに何かが退化するといった経験をすると、この種のプロダクトは、開発と進化とはあまり関係性がないことに気づかされた。


 注:ニコンF4、F3といった大変優れた高性能ボディが、中古価格4万円程度で販売されている。これらのボディとレンズを使用し、リバーサルフィルムで撮影するのであれば、撮影結果は現在のデジタル一眼レフの画像を上回る。フィルムスキャナーを用いてデジタル化をした場合、読み取り画素数は2,360万画素となり、EOS1DSmarkⅢ(価格90万円)をしのぐ。そういう点では、今大変買い得な機材だろう。言い換えればデジタル一眼レフボディは、フィルムボディと比較し、価格がすこぶる高く、得られる画像情報が少ないということになる。

画像撮影データ
Nikon COOLPIX990,SB24
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新年番外地編 Tool’s 1. 撮影機材のシステム-第1世代

2008年01月02日 | Photographic Equipment

 このブログで掲載してきた写真をはじめ、出版や講義や講演会で使用する写真は、プロに頼めるほどの予算がないことと、自分のデザイン感性で見たいとする二つの理由ですべて私自身が撮影しています。第三者の前で発表することを前提とする以上、プロには及ばないものの、せめてプロ並みを目指して撮影努力をするのが、研究やデザインを行う者の姿勢だと私は思います。それだけに、撮影対象に対する理解とともに、取材や調査などを想定し撮影機材の選択には、熟慮せざるを得ません。そんな後者の熟慮の一端を、幾つかまとめました。
 私は、ニコン・システムを使い続けて36年になります。取材等の目的に応じた撮影をするためには、取材対象やTPOに応じたボディやレンズやフィルムといった機材のシステム化と選択を熟慮しなければなりません。特にフィールド調査の場合は、あらゆる被写体に応じた撮影ができると同時に、全ての機材を一人で担いで何日でも歩ける程度の重さであることが重要です。この時点でプロユースの4×5といった、大型機材は対象外となります。
 1972年頃、ライフ写真全集の撮影ガイド[注1]では、ニコン28mm広角レンズ、同50mm標準レンズ、同105mm望遠レンズ、ニコンFフォトミック・ボディによるシステムが掲載されていました。記事は、何時、何処でも、どんな被写体であっても、大半の撮影ができる信頼性ある基本システムとして紹介されたものです。撮影機材はシステムだとする私の認識は、ライフの知見に従ったものです。私が最初にシステム化した機材が以下でした。
■一眼レフボディ:Nikon F(後期モデル)
○広角レンズ:Nikkor-H,Auto,F3.5/28mm(後にAi改造)
○望遠レンズ:Nikkor-P・C Auto,F2.5/105mm(後にAi改造)[注2]
■レンジファィンダーボディ: Canon 6L(既存品代用)
○標準レンズ: Canon F1.4/50mm(既存品代用)
 当時二十代の若者が持つシステムとしては分不相応でしたが、ニコンの耐久性のよさには代え難いものがありました。冬の菅平高原にマウンテンバイクを持ち込み、雪道を走り回りながら多用しつつ、外気温零度以下でも無調整で作動しました。雪原は平面に見えても時折1m位の空洞があるので、時々突然バイクとカメラ毎空洞に落ち込むといった具合に、使い方は荒かったです。イタリアでは、28mmレンズ1本だけで連日数多くの撮影をしましが、目立たなかったので、当時泥棒天国のイタリアで、ひったくりにも遭わずに撮影できました。プロデュース企業では、フィールド調査で多用し、時折鞄毎落下させ、ボディの一部が凹むなどしましたが、一度も故障やオーバーホールをすることなく、今でも使用できます。
 キャノンのレンジファィンダーボディは、予算の都合で手元の機材を代用しました。レンズは優れていましたが、ファィンダーは暗く大変使いにくいものでした。現在のAFプロダクト、例えばEOS1Vのファィンダーも、ピントが合わせにくい点では、当時の再来に思われます。私はキャノンという企業は、ファインダーのような手間やコストのかかる部分には、関心がない。他方そうした欠点を補完すべくオートフォーカス技術開発、機材自体の自動化等に先駆けてきたのだと推測しています。キャノンの合理性なのでしょう。
 こうしたバッテリー不要の初代システムは、フルマニュアルによる不便さを我慢すれば、現在でも十分機能します。
 最初から、お宅談義になりましたが、新年番外地編で、私が意図していることは、機材の日進月歩やデジタル・デバイドへの疑問ですので、数回ほどおつきあい願いたい。


 注1.タイムライフブックス編集部編:ライフ写真講座;1~15,タイムライフインターナショナル,1972.に付属していた撮影ガイド.
注2.フィンランドのフォトグラファーでありニコンフリークのB.ルースレート氏のホームページでは、デジタル&フィルム用のボディを用い、ニコンレンズの性能を5段階で使用評価しており、私もレンズメーカーが公表するMTF値などと共に結構楽しんでいる。その中で、彼はニコンレンズのBest of Bestを掲載している。最新の高性能レンズとともに、デジタルカメラが登場することなど予想されなかった1950年代に製造されたニッコール105mmレンズが、これにリストアップされている。また彼も評価している上記の広角28mmレンズは、リバーサルフィルムでは発色が悪かったが、デジタル一眼レフボディで使用すると、プログラムの力で、ニコンらしいクールな写りが蘇った。古いニッコールレンズは、Ai改造してさえあれば今でもニコンデジタル一眼レフの一部機種で使用可能であり、現在の高性能ズームレンズと同等かそれ以上の描写をする名レンズもある。こうした名レンズが中古市場では、1万円以下で入手できる。
http://www.naturfotograf.com/index2.html

画像撮影データ
Nikon COOLPIX990,SB24
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