Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

新年番外地編 Tool’s 7.(結) イエローブックと仕事場

2008年01月07日 | Shinkansen commuting
 

 デザインを考える場所は、いつも机の上とは限らない。だから、昔から小さなスケッチブックを携えている。ところが、デザインを簡単にメモできるスケッチブック或いはノートというものがない。通常のノートでは紙質が薄く、マーカーのインクを通してしまう。スケッチブックでは高価すぎて気楽に使えない上に嵩張る。探すとなかなかないものである。
 例えば建築家の槇文彦氏は、丸善が出しているA4ノートをスケッチブックにしている。紙質が厚くペンで書いても透過しない。紙面には4mm方眼の罫線が引かれているタイプもあり、建築のエスキースには最適かも知れない。ひょっとして槇建築のプロポーションって4mmの倍数モジュール!?・・丸善ノートは、色鉛筆の発色が悪く私には向かなかった。
 プロダクトデザイン分野で多用しているPM紙がある。この用紙は、マーカーインクを透過させることなく、またチョーク・パステルや色鉛筆の発色とのりが大変優れている。さらに微妙に透けるので、トレースができる大変優れた用紙である。 
 大分前Tooの草加さんに、PM紙でノートができないかと相談した。PM紙は湿気に弱く腰が弱いために、紙が波打ち、これまでスケッチブックやノート化したかったが、商品化には至らなかったという返事であった。
 そこでサイズをA5とし、5mmの罫線入りのPM紙を草加さんに試作してもらった。ところが罫線は、機械で引くのだが均一の太さにならない上に、パステルをのせると罫線が際だったしまう。罫線はあきらめ白紙のPM用紙を使用し、湿度の低い季節に製本してもらうことで、PMロール1本分のノート形式のスケッチブックを特別注文した。価格は1冊当たり2,000円弱するが、マーカーや色鉛筆の発色がよく、破れることがない大変使い勝手のよいツールができた。
 使い方を工夫すると、PM紙は微妙な透過性があるので、罫線入りの下敷きをいれれば、クロスペーパー同様に使うことが出でき、フリーハンドで縮尺や寸法を把握した建築図面が描ける。また前のエスキースを下敷きにして、新しいエスキースを描くときは、ノートの後ろから描けばよい。以前の情報をトレースすることもできる。広げればA4サイズとして使える。
 以来私は、 デザインエスキースに、会議のメモに、原稿の草案作りにと、あらゆる場所でこのイエローブックを多用している。ノートだから情報は、すべて時系列で整理されてゆく。日付がインデックスとなる。インデックスには、ロスー成田とか、ひかり329といったメモがある。移動中に書いたものだ。
A5サイズだから膝の上に乗せて描いていても隣の邪魔にはならない。機内や新幹線など、何時でも何処でも、デザイン等を考えることができるのである。
 新幹線の車内は、私の好きな仕事場である。イエローブックとノートパソコン[注]があれば、大概の仕事ができる。車窓の景色は変わるから、季節の光であふれる海や、雪一色の風景など、それは大いに気分転換になる。車内で一仕事終えた充実感で降りれば、そこは粉雪舞う古都京都だったりする。そんな充実した時間が連続するすごし方が心地よい。
 正月松の内で7日分のブログを書き上げたので、しばらく溜まっている仕事に専念する。門松がとれる頃になったら、また従来シリーズを続けようと思う。


新幹線700系は客室前後の壁に、N700系は全ての窓側の座席に電源コンセントが設けられている。

画像撮影データ
Nikon COOLPIX990,SB24
EOS kiss Digital,SIGUMAF3.5-5.6/18-125mm
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新年番外地編 Tool’s 6.鞄の中身

2008年01月06日 | Photographic Equipment
 私の経験では、実はカメラバックというものが、撮影に全く向かない鞄であるとことを痛感している。理由は撮影機材のことしか考えられていないからである。第一いつでも代替えできる撮影機材が重要だとする、カメラバック制作者の基本的考え方が間違っている。撮影機材は取材の手段であって目的ではない。撮影機材はいつでも代替えでき、邪魔なときは捨ててしまえばよい。場合によっては売却し旅費の足しにしてしまうことだってある。大切なのは取材で得た情報なのである。それは代替えできないものが多い。
 上の写真は、私がよく使っていた鞄である。 量販店で2,900円程度で売り場に山積みされている中国製品である。 大きさが調度よい上、収納スペースが階層的に考えられており頭脳的である。
 鞄の中を取りだしてみると、 黄色いA5サイズのスケッチブックは、デザイン・クリエイションや実測のための野帳として、PM紙を用いて特別制作したもので、この用紙になじみがよいラインペンを添えてある。調査のためのコンタクト先や、スケジュール、名刺、切手などをいれた赤い手帳、建築では必携の2mの巻尺のついたキーホルダー、そして携帯電話とクレジットカードなどである。このほかパスポートや小型三脚を加えることがある。 さらに撮影のためにアポをとったりした際の書類、相手に渡す資料や、時にはお土産等が、外側にカラビナを介して取り付けるときもある。 そして情報収集ツールとしてのデジタル一眼レフ。発売当時最軽量だったボディに標準ズームレンズと、暗いところでも撮影できるF1.8単焦点レンズの2本は必須。さらに発色や鮮明度などが良いリバーサルフィルムで、優れた撮影能力を持つ高性能コンパクトフイルムカメラ。これで一応の取材を行い、デザインを考えることができる。実際新幹線や機内、といった具合に、あらゆる場所が私の書斎でありアトリエでもある。
 さらに撮影に没頭している間にすられないような目立たない位置にある財布の内ポケット、同様に目立たないが、すぐに取り出せる航空券等チケット類のポケット、すぐに取り出せる連絡先やスケジュールを書いた手帳、 カメラのように雨を防ぎ取り出しやすいもの、常時外部にさらしても影響がないもの、 といった具合に、ときには取り出しやすく、また不用意な相手に対しては取り出しにくく、TPOに応じたヒエラルキーある頭脳的バッキングができる。 外ポケットにはA4ファィルが縦に入る点も優れている。全く高級に見えない点でも、相手の目にとまらず好ましい。
 この鞄の欠点は、安価である分外装が薄く、また大変破損しやすいことである。衝撃には、ウレタンフォームを底敷きにして解決できるが、縫製が悪く破損しやすい点は解決のしようがない。私の場合3ヶ月ともたないこともあった。鞄自体が安いのでこれも使い捨てといってよいだろう。
 実際こうした安価で頭脳的な収納方法を持った鞄は、大変少ない。大半のカメラバックは、なにも考えていないか、考えすぎかのどちらかである。カメラバックが撮影には不向きだということが、おわかりいただけただろうか。

画像撮影データ
Nikon COOLPIX990,SB24
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新年番外地編 Tool’s 5.デジタルデバイドのパラドックス

2008年01月05日 | Photographic Equipment



 フィルムからデジタルに変わって何が変化したかと考えれば、真っ先に私の仕事が増えたことである。従来ならば、プロラボにフィルムを投函すれば、20本程度でも2時間で仕上がるので、その間カフェで本を読んだり原稿を書いたりできた。デジタル化されて、現像行程も自前で処理しなければならない。これに要する時間(36枚×フィルム20本=720カット)は、2時間ではすまない。さらにそのためのPC機材も自前調達である。
 次に前述したように画像情報量が減ったこと。現在のデジタル画像は、画素数や色調においてリバーサル・フィルムには及ばない。
 個人の時間を食われたあげく、少ない情報しか生成できない。つまり生産性が低いというのがデジタル化です。それでは何が長所だったかを考えてみます。
 コストがかからない。本当にそうでしょうか? 撮影機材を除外し画像4万枚の現像・画像処理をフィルム派とデジタル派の場合で経費の試算をしました。
■フィルム派
36枚撮りフィルム代800円×1,112本×2(現像代800円/本)=177.9万円
○デジタル派
30MB×40,000枚=1.2TB=10.8万円(外付け型HD2TBの価格)
※オーバー分はCFカードの経費に充当
ここまでの経費は確かに、デジタル化したほうが安い。

次の現像に要する時間に応じたあなたの人件費を加えます。
■フィルム派
あなたの人件費は外注のため=0円
○デジタル派
1カットのRAWデータ処理時間を1分と設定。
1分×4万カット=667時間=95日(1日労働時間7時間と算定)
もしあなたの日当が1万ならば、95万円分の支出。
95万+10.8万円=105.3万円
大分近づきましたが、まだデジタルの方が安いですね。

ところで、デジタル派のあなたが画像処理をしている間、フィルム派は、別の仕事をして稼ぐことができますから・・・同種の他の仕事をすれば収入となり、経費は低減されます。
マイナス計上分1万円×95日=95万円

結果
■フィルム派
経費177.9万円-人件費95万円=82.9万円
○デジタル派
経費10.8万円+人件費95万円の損失=105万円(PC機器償却費もかかります)
 つまりコストも、デジタル派は画像処理でPCの前で時間拘束され、他の仕事ができず結果はフィルム派が22.1万円安いことになります。よく考えれば、アウトソーシングしたほうが、コストは安いというのは経営の常識です。
 フィルムに比べデジタルは、生産性が低い、画像情報が少ない[注]、経費・人件費でコスト増となります。金額的メリットはありません。メリットがあるのは、むしろ社会の方です。例えばデジタル化によって編集作業が短縮したといった具合です。デジタル化とは、個人の時間負担を増やすことで、他方社会の時間負担を軽減し、且つ情報機器などの消費経済に貢献したことです。これが経済的視点からみたデジタルデバイドのパラドックスの一面です。


写真雑誌では、いたずらに画素数を増やさないことを良しとする意見が多いのですが、製造メーカーの販売戦略に荷担した、擁護論にすぎません。筆者のように後日印刷に使用することを考えると、印刷線数の関係もありますが、大は小を兼ねるの論理に従えば、画素数が多ければ情報量も増えるのですから、当然多いほど良い。フィルムですと約3,000万画素相当の情報があります。最近発売されたニコンD3は、価格50万以上とすこぶる高く、逆にフルサイズフォーマット(FX)であるにもかかわらず総画素数約1,200万と著しく低い。D3について前述したB.ルースレート氏のD3レビュー「FXvsDX」に関する比較において、画素ピッチと画素密度による分解能には疑問を呈しており、描写等への影響を指摘していると理解できます。彼が指摘するD3が新聞週刊誌用であり、展示・印刷向きではないとする判断は、開発ポイントをついている思われます。つまりマスコミ用の方が需要が高いということでしょう。1画素サイズが大きいことは感度が高くなります。他方同フォーマットサイズであれば、画素数の多いほうが、画像情報が多いのは自明のことでしょう。作品や印刷の場合はここが重要な点です。ニコンD2Xの1画素のサイズを、そのままFXフォーマットに拡大した場合約3,600万画素となり、従来機種でも十分フィルムの解像度をしのぐことができます。肝心なところで技術の出し惜しみをしないで、ニコンにはもう少し頑張ってもらいたい。

http://www.naturfotograf.com/index2.html

画像撮影データ
Nikon COOLPIX990,SB24

アナログ復活に向けてキープしているシステム
■LeicaM4-P CANADA
■HEXAR RF
○ELEMART F2.8/28mm CANADA
○SUMICRON F2.0/35mm WETZLAR (8element)
○TELE-ELMARIT F2.8/90mm CANADA

そろそろ脱却したいシステム 
■EOS kiss Digital
○EF F2.0/50mm
○ SIGUMA F3.5-5.6/18-125mm
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新年番外地編 Tool’s 4.技術開発のパラドックス

2008年01月04日 | Photographic Equipment



 個人的経験ですが、古い機材よりも新しい機材の方が優れているとは言えないことです。前述したB.ルースレート評価には、古いニッコールレンズに対する髙位評価がありました。中古レンズより新しいレンズの方が、撮影結果が良いというのは、製造メーカーのプロモーションと私達のステレオタイプ化された思いこみにすぎません。
 このことを作例で実証した著書があります。それが「ひとりで仕事をする研究者・ライターのための・・・」と、私のような立場の者にとってはうってつけの副題がついた本です[注1]。たまたま私が慶応大学病院で人間ドックに入れられたとき暇つぶしに購入した本ですが、時間待ちの個室病棟で一気に通読しました。オオツ!これだ!!とテンションはあがったおかげで、健康状態は当然良好でした。その後続編[注2]も出されています。内容は、プロ並に撮影するには、どんなボディとレンズを組み合わせて、合目的なシステムを構築すれば良いかとする撮影機材システム・モデルが列挙してあります。そして中古ボディやレンズには、現在の撮影機材よりも優秀であるものが多いとする指摘です。この本は、後に中古カメラブームの火付けとなりました。
 デジタルボディに古いレンズを付けて撮影した場合の撮影結果を示したのが、上の写真です。FUJI FinePixS5proに、Leica HectorF4.5/135mmで撮影したもので、コントラストの補正[注3]以外は、画像処理をしていません。いわゆる撮っただしの画像です。L-Hectorは1933年の設計ですから、デジタルはおろかカラーすら想定していなかった時代に設計されたレンズです。色に関してはデジタルカメラのプログラムで、いかようにも再現できます。そして現代のレンズが解像度やシャープな画像志向であるのに対して、このレンズを使用すると大変軟調な画像になります。こうした写り方をするレンズは、現在少ないと言えます。


注1.日沖宗弘:プロ並みに撮る写真術,勁草書房1991.
注2.日沖宗弘:プロ並みに撮る写真術Ⅱ,勁草書房,1993.
注3.古いレンズを用いた撮影では、レンズを透過した光そのものの状態で記録・現像され、時にはやや眠たい写真になる場合があります。これをPCのプログラムで、少し改善すると、鮮やかな情報に変換されます。このようにデジタル機材は、撮影後の取得情報を取りあえず適切な現像ソフトで処理しておけば、後処理で見違えるように変換できる点は優れています。現像ソフトと後処理ソフトが、古いレンズの性能を蘇らせます。

撮影機材の画像撮影データ
Nikon COOLPIX990,SB24

FinePixS5proの撮った出しjpg画像・コントラスト以外は無修正
上記写真の撮影機材
■FinePixS5pro
○Hektor F4.5/135mm GmbHWetzlarヘッド+中間リングOTZFO+L-Nマウント
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新年番外地編 Tool’s 3.撮影機材のシステム-第3世代

2008年01月03日 | Photographic Equipment
 あの優れたカールツァイスレンズが使えるコンタックス・システムに乗り換えようかと思案していたら、京セラがカメラ事業から撤退し、コンタックスブランドが消滅した。だが2006年、町並み再生で話題となった長野県小布施町のレンズメーカー「コシナ」が、ニコンFマウントのカールツァィス・レンズの生産を始めた。
 さらに2007年、富士フィルムが、ようやく実用域に達したニコンD200のボディを使い、自社開発1234万画素ハニカム撮影素子と独自の画像処理エンジンを搭載したデジタル一眼レフボディFUJI FINE Pix S5proを市場に登場させた。
 デジタル一眼レフの開発は、フィルムメーカーであるコダックが先駆けていたことからもあきらかなように、ボディ内で画像情報の処理=現像処理をしているので、フィルム製造や現像を通じて得られたカラー画像情報処理に関するソフト技術の経験と蓄積が必用になる。当然、長い経験とスキルを持つフィルムメーカー製ボディの方が、製造メーカー製よりは優れた撮影画像を得ることができる[注]。
 第三世代は、従来ニコンシステムと互換性があり、この組み合わせしかないと私は思った。
■FUJI Fine Pix S5pro
○Carl Zeiss Distagon,f2.8/25mm.
○Carl Zeiss Macro Planar F2/100mm
○Nikkor,AF,F1.4/50mm,D.
 カールツァイスのレンズは、厚い雲に覆われた冬のヨーロッパの乏しい光の中でも、被写体が持つ優れた色彩をかき集め、余すことなく描写しようとする、そんなドイツの風土が生んだレンズである。人間に例えれば、人間が他人を理解してゆく際、ある人の良いところをみつけようと努力するタイプと、あら探しのように悪いところをみつけようとするタイプとがいる。ツァイスのレンズは、前者のタイプなのである。私がツァイスに傾倒するのも、こうした理由からである。
 Fuji、Carl Zeissとブランド名からニコンの文字が遠ざかっても、従来のニコンと互換性を持つ第三世代のシステムである。ニコンシステムが半世紀近くレンズマウントを変えなかったことが、私が36年間ニコンを使い続けられた理由である。そして初代から第三世代までのシステムは、今でも相互に互換性を持ちながら稼働している。


注:筆者はCanon EOS Kiss Digitalボディで4万枚撮影した。例えば光のコントラストが低い冬の曇天時に、色味のない森を撮影すれば、ヌケと発色の悪い濁った画像になり、フォトショップ系による後処理が必須となる。言い換えれば、製造メーカーボディは、後処理依存の画像しか生成できないということである。これには大いに懲りた。最新画像エンジンの成果を期待したい。
 また、発売当初25万はしたS5proのボディも、現在通販価格で18万円台と妥当な価格になってきた。もう一台購入するチャンスだなとおもった。富士フィルムは、機材が市場価格が安くなってから、また価格を上げたことがある。つまり出荷価格をでしょう。最初は販売店へのサービス利益かと類推。DPEカラー現像プリンター等を購入してもらった故だろうか。

画像撮影データ
Nikon COOLPIX990,SB24
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新年番外地編 Tool’s 2.撮影機材のシステム-第2世代

2008年01月02日 | Photographic Equipment


 私が正月の良さを感じるのは、人が少なく街が静かなところ。この静かさは、普段のヨーロッパの街に近いかもしれない。日本の日常が過激すぎると思う。
 1990年代、リバーサルフィルムの性能が著しく向上し、ボディの電子化(AF・AE)や高性能ズームが開発された。私の周囲のフォトグラファー達は、ニコンからキャノンが新開発したEOSシステムに乗り換えていった。実際EOSは、システム全体のパフォーマンスではニコンを凌駕していた。個人的には、キャノンのファインダーの悪さを体験していたので、初代システムと互換性あるニコンでシステムの更新をした。彼らからF2.8で広角、標準、望遠ズームがいいのではと勧めもあり、汎用性を目指した第2世代システムが以下。
■Nikon F4
■Nikon F3HP(NYのブルックリンカメラで調達した中古)
○Nikkon AiAF,F2.8/20-35mmD
○Nikon AiAF,F2.8/35-70mmD
○Nikon AiAF,F2.8/80-200mmD
○Carl Zeiss Planar F2.8/80mm(NYのブルックリンカメラで調達した中古)
 このシステムは、解像度と発色のよい3本の高性能ズームレンズと、F4とF3の類を見ないクリアーな大型ファィンダーは、優れものであった。今でもこれを超える一眼レフボディはない。またF4にストロボSB24の組み合わせは、自然な調光が得られる点でも優れていた。現在講義で使用している国内のスライドは、この機材で撮影したものが多い。
 F4ボディは、エンジニアリングプラスティックを使用している。私の経験では、フィールドで撮影中にボディが三脚から外れ、頭からコンクリートの地面に落下し、ボディの頭部が二つに裂けたことがあった。だがそれが衝撃を緩和したため、内部の高価なプリズムガラスに損傷はなく、ガムテープで頭部を貼り合わせそのまま使用できた。因みにキャノンは落とせば必ず壊れ作動しない。そんな進化した機材にも2つの欠点があった。
 第1は、ボディとガラスの固まりのような大口径ズームレンズ3本で既に5kgと、初代システムの2kgを超える。それにバッテリー、ハスキーの三脚、フィールド調査の野帳や画材や資料といった類をバッグに詰めると10kg近くになる。持ち歩くというよりは、カートに積んでゆくことが多かった。重い故海外に持ち出す機会もなかった。
 第2は、電子化故にバッテリーの消耗が激しいこと。F4が入手しやすい単3電池4本を電源としたのは英断だったが、フィルム20本がスムーズに撮影できる限度である。それを補完したのが、同様の電子カメラF3である。唯一1/60の機械式シャッターを搭載し、電池がなくても使えたのは便利だった。実際の使用場面で万一を考えているところがニコンである。ニコンのプロダクトは、最初は大変使いにくい。しかし長く間使用していると、使いにくさにが、フィールドにおいては必要であり意味があることを教えてくれるプロダクトである。
 この頃、京セラのコンタックス・システムのカール・ツァイスレンズの、発色と解像力の優秀さに気づかされる。当時のニコンシステムで使うことができる、ハッセルブラット用を代用した。キャノンやニコンのレンズは優秀だが、ツァイスのレンズは、それら以上に優秀なのである。
 第2世代システムは、総じて撮影結果が良くなり、作業が効率的になった分、重さとバッテリー消耗の早さというデメリットがある。ある部分が優れて進化し、それと引き替えに何かが退化するといった経験をすると、この種のプロダクトは、開発と進化とはあまり関係性がないことに気づかされた。


 注:ニコンF4、F3といった大変優れた高性能ボディが、中古価格4万円程度で販売されている。これらのボディとレンズを使用し、リバーサルフィルムで撮影するのであれば、撮影結果は現在のデジタル一眼レフの画像を上回る。フィルムスキャナーを用いてデジタル化をした場合、読み取り画素数は2,360万画素となり、EOS1DSmarkⅢ(価格90万円)をしのぐ。そういう点では、今大変買い得な機材だろう。言い換えればデジタル一眼レフボディは、フィルムボディと比較し、価格がすこぶる高く、得られる画像情報が少ないということになる。

画像撮影データ
Nikon COOLPIX990,SB24
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新年番外地編 Tool’s 1. 撮影機材のシステム-第1世代

2008年01月02日 | Photographic Equipment

 このブログで掲載してきた写真をはじめ、出版や講義や講演会で使用する写真は、プロに頼めるほどの予算がないことと、自分のデザイン感性で見たいとする二つの理由ですべて私自身が撮影しています。第三者の前で発表することを前提とする以上、プロには及ばないものの、せめてプロ並みを目指して撮影努力をするのが、研究やデザインを行う者の姿勢だと私は思います。それだけに、撮影対象に対する理解とともに、取材や調査などを想定し撮影機材の選択には、熟慮せざるを得ません。そんな後者の熟慮の一端を、幾つかまとめました。
 私は、ニコン・システムを使い続けて36年になります。取材等の目的に応じた撮影をするためには、取材対象やTPOに応じたボディやレンズやフィルムといった機材のシステム化と選択を熟慮しなければなりません。特にフィールド調査の場合は、あらゆる被写体に応じた撮影ができると同時に、全ての機材を一人で担いで何日でも歩ける程度の重さであることが重要です。この時点でプロユースの4×5といった、大型機材は対象外となります。
 1972年頃、ライフ写真全集の撮影ガイド[注1]では、ニコン28mm広角レンズ、同50mm標準レンズ、同105mm望遠レンズ、ニコンFフォトミック・ボディによるシステムが掲載されていました。記事は、何時、何処でも、どんな被写体であっても、大半の撮影ができる信頼性ある基本システムとして紹介されたものです。撮影機材はシステムだとする私の認識は、ライフの知見に従ったものです。私が最初にシステム化した機材が以下でした。
■一眼レフボディ:Nikon F(後期モデル)
○広角レンズ:Nikkor-H,Auto,F3.5/28mm(後にAi改造)
○望遠レンズ:Nikkor-P・C Auto,F2.5/105mm(後にAi改造)[注2]
■レンジファィンダーボディ: Canon 6L(既存品代用)
○標準レンズ: Canon F1.4/50mm(既存品代用)
 当時二十代の若者が持つシステムとしては分不相応でしたが、ニコンの耐久性のよさには代え難いものがありました。冬の菅平高原にマウンテンバイクを持ち込み、雪道を走り回りながら多用しつつ、外気温零度以下でも無調整で作動しました。雪原は平面に見えても時折1m位の空洞があるので、時々突然バイクとカメラ毎空洞に落ち込むといった具合に、使い方は荒かったです。イタリアでは、28mmレンズ1本だけで連日数多くの撮影をしましが、目立たなかったので、当時泥棒天国のイタリアで、ひったくりにも遭わずに撮影できました。プロデュース企業では、フィールド調査で多用し、時折鞄毎落下させ、ボディの一部が凹むなどしましたが、一度も故障やオーバーホールをすることなく、今でも使用できます。
 キャノンのレンジファィンダーボディは、予算の都合で手元の機材を代用しました。レンズは優れていましたが、ファィンダーは暗く大変使いにくいものでした。現在のAFプロダクト、例えばEOS1Vのファィンダーも、ピントが合わせにくい点では、当時の再来に思われます。私はキャノンという企業は、ファインダーのような手間やコストのかかる部分には、関心がない。他方そうした欠点を補完すべくオートフォーカス技術開発、機材自体の自動化等に先駆けてきたのだと推測しています。キャノンの合理性なのでしょう。
 こうしたバッテリー不要の初代システムは、フルマニュアルによる不便さを我慢すれば、現在でも十分機能します。
 最初から、お宅談義になりましたが、新年番外地編で、私が意図していることは、機材の日進月歩やデジタル・デバイドへの疑問ですので、数回ほどおつきあい願いたい。


 注1.タイムライフブックス編集部編:ライフ写真講座;1~15,タイムライフインターナショナル,1972.に付属していた撮影ガイド.
注2.フィンランドのフォトグラファーでありニコンフリークのB.ルースレート氏のホームページでは、デジタル&フィルム用のボディを用い、ニコンレンズの性能を5段階で使用評価しており、私もレンズメーカーが公表するMTF値などと共に結構楽しんでいる。その中で、彼はニコンレンズのBest of Bestを掲載している。最新の高性能レンズとともに、デジタルカメラが登場することなど予想されなかった1950年代に製造されたニッコール105mmレンズが、これにリストアップされている。また彼も評価している上記の広角28mmレンズは、リバーサルフィルムでは発色が悪かったが、デジタル一眼レフボディで使用すると、プログラムの力で、ニコンらしいクールな写りが蘇った。古いニッコールレンズは、Ai改造してさえあれば今でもニコンデジタル一眼レフの一部機種で使用可能であり、現在の高性能ズームレンズと同等かそれ以上の描写をする名レンズもある。こうした名レンズが中古市場では、1万円以下で入手できる。
http://www.naturfotograf.com/index2.html

画像撮影データ
Nikon COOLPIX990,SB24
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新年明けましておめでとう

2008年01月01日 | Yokohama city
年が明けると、横浜港に停泊している船舶の汽笛が一斉に鳴る。近所の総持寺へ初詣に出かけた。大きな本堂では、50人ほどの僧侶により、元旦大祈祷が行われていた。導師が経文を唱えながら、多分大般若経600巻の転読が見えた。やがて焼香が行われ、人々の列を成り行きで歩いていたら2回も焼香してしまった。この瞬間、全国で土地や人々それぞれのすごし方があるのだなと思いつつ、大晦日から新年にかけて流れてゆく静かな時間が、心地よかった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする