デザインを考える場所は、いつも机の上とは限らない。だから、昔から小さなスケッチブックを携えている。ところが、デザインを簡単にメモできるスケッチブック或いはノートというものがない。通常のノートでは紙質が薄く、マーカーのインクを通してしまう。スケッチブックでは高価すぎて気楽に使えない上に嵩張る。探すとなかなかないものである。
例えば建築家の槇文彦氏は、丸善が出しているA4ノートをスケッチブックにしている。紙質が厚くペンで書いても透過しない。紙面には4mm方眼の罫線が引かれているタイプもあり、建築のエスキースには最適かも知れない。ひょっとして槇建築のプロポーションって4mmの倍数モジュール!?・・丸善ノートは、色鉛筆の発色が悪く私には向かなかった。
プロダクトデザイン分野で多用しているPM紙がある。この用紙は、マーカーインクを透過させることなく、またチョーク・パステルや色鉛筆の発色とのりが大変優れている。さらに微妙に透けるので、トレースができる大変優れた用紙である。
大分前Tooの草加さんに、PM紙でノートができないかと相談した。PM紙は湿気に弱く腰が弱いために、紙が波打ち、これまでスケッチブックやノート化したかったが、商品化には至らなかったという返事であった。
そこでサイズをA5とし、5mmの罫線入りのPM紙を草加さんに試作してもらった。ところが罫線は、機械で引くのだが均一の太さにならない上に、パステルをのせると罫線が際だったしまう。罫線はあきらめ白紙のPM用紙を使用し、湿度の低い季節に製本してもらうことで、PMロール1本分のノート形式のスケッチブックを特別注文した。価格は1冊当たり2,000円弱するが、マーカーや色鉛筆の発色がよく、破れることがない大変使い勝手のよいツールができた。
使い方を工夫すると、PM紙は微妙な透過性があるので、罫線入りの下敷きをいれれば、クロスペーパー同様に使うことが出でき、フリーハンドで縮尺や寸法を把握した建築図面が描ける。また前のエスキースを下敷きにして、新しいエスキースを描くときは、ノートの後ろから描けばよい。以前の情報をトレースすることもできる。広げればA4サイズとして使える。
以来私は、 デザインエスキースに、会議のメモに、原稿の草案作りにと、あらゆる場所でこのイエローブックを多用している。ノートだから情報は、すべて時系列で整理されてゆく。日付がインデックスとなる。インデックスには、ロスー成田とか、ひかり329といったメモがある。移動中に書いたものだ。
A5サイズだから膝の上に乗せて描いていても隣の邪魔にはならない。機内や新幹線など、何時でも何処でも、デザイン等を考えることができるのである。
新幹線の車内は、私の好きな仕事場である。イエローブックとノートパソコン[注]があれば、大概の仕事ができる。車窓の景色は変わるから、季節の光であふれる海や、雪一色の風景など、それは大いに気分転換になる。車内で一仕事終えた充実感で降りれば、そこは粉雪舞う古都京都だったりする。そんな充実した時間が連続するすごし方が心地よい。
正月松の内で7日分のブログを書き上げたので、しばらく溜まっている仕事に専念する。門松がとれる頃になったら、また従来シリーズを続けようと思う。
注
新幹線700系は客室前後の壁に、N700系は全ての窓側の座席に電源コンセントが設けられている。
画像撮影データ
Nikon COOLPIX990,SB24
EOS kiss Digital,SIGUMAF3.5-5.6/18-125mm