
幌内川水系の支流に奇跡的に生き残った北限のオショロコマ
20XX年6月17日。 晴れ のち曇り のち土砂降り。
朝8時に北見市の自宅を出発。オホーツク海に沿ってひたすら北上して道北の幌内川水系のオショロコマを撮影に向かった。
これまでに2回にわたってこの幌内川水系の各支流をしらみつぶしに調査したが、放流ニジマス、放流ヤマベしか確認できていなかった。
この水系にこだわったきっかけは幌内川水系にオショロコマが生息するというかなり信憑性のある噂話が発端であった。
もし、発見できれば、私の知る範囲では北海道での北限のオショロコマということになる。(声問川のオショロコマは信憑性がなく、利尻島のオショロコマは移植されたものである。)
実はそれまでの調査で自力での幌内川のオショロコマ生息水域発見に限界を感じ、うわさ話を克明にたどってみることにした。
その結果、この水系で実際にオショロコマを釣った人にやっとたどりつき、あつかましくも生息場所を教えていただくことができたのであった。
本当に広大な幌内川水系の小さな1点といってもよい狭い水域が奇跡的な生息場所であった。
現在いくつかの理由で一般の人がそこへ入って行くことはまず無いだろうが棲息場所はおどろくほど狭い一角であった。
そのようなわけで、この水域が特定できるような表現や環境写真はあえて出しません。
荒れた林道のアプローチは相当長くて道は一部は絶望的に荒れていた。
とがった石がむき出しの恐怖の荒れ道がえんえんと続く。タイヤバーストに注意しながらゆっくりすすんだ。
神経をすり減らしながら、そうとう走った頃やっと一本目の支流(ちょろ川)をわたり、しばらくゆくとオショロコマの生息する渓流に着いた。
北見市からここまで片道4時間の運転であった。
まあまあ流量がある。
手つかずの原始の森に囲まれた源流域といってよい渓流だ。
川の石や岩には春に発生する黒いコケが生え、ぬるぬるで何度も滑って転倒しそうになった。
北限のオショロコマはすぐに釣れた。














ここのオショロコマは一様に黒褐色調で成魚は腹が黄色い。背ビレが濃い青黒色で横に走る白紋が特徴的だ。大きさは10-15cmで一番大きいのが18cm。小型の個体群だ。背ビレの特徴からは亜種としても良いかも知れない。





生息数は少なく、3人で2時間30分、入渓地点の上下数百mを釣ってやっと15匹。
喰いがあまく当たりがとりにくく、とても活性が低い。
これまで見たことがない正に野生的な外観、まさに北限のオショロコマであった。よくぞ生き残っていてくれた。





貴重な幌内川水系のオショロコマは手早く撮影した後、すべて速やかにリリースした。今回の調査ではここに棲息しているのはオショロコマのみで
アメマスやヤマベ、ハナカジカなどは見られず、ニジマスの侵淫もいまだ受けていないようだ。

川の水は清冽とは言えないが水温12℃でやや冷たい。やがて雨が降り始め、ついには土砂降りとなったので早めに引き返すことになった。
フキとウドのよいものが多くかなり採取した。
道北には多いエゾノリュウキンカも少しいただいた。帰宅してお浸しにしたが水量の多いところなのでアクがなくおいしかった。
強行軍でとても疲れた釣り行であったが、懸案の北限のオショロコマに会うことができて充実した至福の一日であった。

