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20XX年9月9日 晴れ
今から38年前、大学二年生の時、釣り友達と二人で真冬の勇駒別川上流にニジマス釣りにいったことがある。そこは当時は勇駒別温泉と呼ばれていた。現在は旭岳温泉と名前を変え、ロープウェイも出来て大雪山の主峰の旭岳への重要な登山起点でもある。当時の釣り雑誌に雪に覆われた真冬の勇駒別川にカンジキをはいて到達してニジマスを入れ食い状態で釣った話が写真入りで大きく紹介されていたのがきっかけであった。今、あるかどうかは知らないが白雲荘という古い温泉宿に泊まった。当時は結構冬山遭難もあって旭岳の山中では時々睡眠薬自殺をする人もいたらしい。ここに名物おじさんの虎さんという人がいて旭岳での自殺者や遭難者を収容する時に先頭に立つ役柄の人であった。酔っぱらうとその経験談を実にリアルにえんえんと語る。夜がふけるまでストーリーテラーみたいに興味津々の話を聞かせてくれたが、おかげで寝不足になった。当時、近くにニジマス養殖場があって、大水でかなりのニジマスが勇駒別川上流へ逃げ出し、その後繁殖したらしい。 翌朝、深い雪のなかを川に向かった。釣り雑誌の記事とは違ってカンジキをはくと深い雪のなかでなかなか身動きとれず、川に到達するまでに完全に力つきてしまった。小さな滝のようなところがあり、温泉街の排水でひどく汚れた滝壺に振り込むと大きなニジマスがかかったが、すぐに針がはずれて逃げられた。他には釣り場になるような川面は無い。絶対にニジマスを釣ると粘る友人を残して、私は諦めてひきあげ、温泉でのんびりしていた。白雲荘の温泉排水池にティラピアが繁殖していて、釣り竿を100円で貸してくれた。私はティラピア釣りで時間をつぶした。夕刻、友達は25cmのやせたニジマスを1匹ぶらさげて帰ってきた。夕食に20cmほどのティラピアとニジマスを焼いてもらったが両者ともひどい臭いと味で食べられなかった。もう勇駒別にはこないぞと固く決心したのを思い出す。
その後、旭川にも19年住んだがすぐ近くにあるにもかかわらず私は勇駒別川を訪れた事はなかった。その後旭川から北見に移り住むようになって久しいが、最近になってこの勇駒別川にオショロコマがいるのかどうか急に気になりはじめた。たまたま仕事で旭川を訪れる機会があったので、38年ぶりの再訪となった。当時の記憶では勇駒別川源流域は温泉街からの大量の温泉排水で汚染がひどかった。
そこで今回は源流域は避け、勇駒別川上流域につながる林道から川に入った。狭い林道をかなり進んで山をひとつ越えた付近に勇駒別川にかかる橋があり、そこから入渓した。釣り人の痕跡がとても多い。ほどなく妻がぴーぴー呼び子を鳴らしている。行ってみるとおおたまりで良型ニジマスと格闘中であった。2.7mの極細の渓流竿なので相当な引きである。しかし3分もするとニジマスは力つき、やがてコントロール可能になった。46cmの立派な♀であった。そこから少し釣りくだったがよいポイントがなく、橋の上流は流れのゆるいところにニジマス幼魚ばかりが多かった。その後25cmのニジマスも釣れた。この界隈はニジマスしかいないようだ。温泉の排水のせいか水は清冽とは言い難く、水温はとても高くて何と 19℃もありオショロコマの生息にはまったく適していないようだ。温泉排水による相当な汚染と外来魚ニジマスの繁殖でもはや勇駒別川上流には Native の渓流魚はいないのだろうか。結局、ニジマス幼魚は多いがオショロコマは見かけなかった。隣のP川やS沢にはオショロコマがいるかも知れないが、ここもニジマスに侵淫されている可能性があろう。今日はもう時間がなく引き上げることにした。
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