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ヤマメ、北海道と本州の違い
田中 篤
私は北海道出身、現在は関東在住です、
なので北海道でも、本州でもヤマメを釣った経験があり、両者の違いを感じている。
ヤマメの特徴はパーマーク(幼魚班)があり川の上流部の水の冷たい流域に棲む。
しかしその生態は複雑で、ヤマメの一部が降海してサクラマスになって帰ってきたり、 ヤマメのまま渓流で一生をすごしたり色々だ。
そしてその傾向が地域によってかなり違う。
昔はサクラマスの子はヤマメか否かと言う論争があって殺人事件まで起きたそうです。
今では同種ながら生活史の違う物がいるという事がわかっています。
寒冷な地域、とくに北海道のヤマメは、メスの全てとオスの大部分が降海しサクラマスになって帰ってくる。
そしてオスの一部が河川に残ってヤマメとなるのであるが、その降海時期は2年目の春なので、1年魚のヤマメは川に沢山いる、それに比べて2年魚より大きいヤマメはすごく少ない。
なので北海道ではヤマメは新子釣りが多く、束釣りという100匹以上の釣果も多い。
私の子供の頃はズック靴のまま冷たい川に入って釣るのでほとんどが水が温む夏場しか釣りをしなかったが新子はこんなにたくさんいるのに大きなヤマメはすごく少ないのが不思議だった。
釣り人に釣られて2,3年魚は少なくなるのかな?と思ったが、私以外の人は絶対入らないだろうと思われる細い薮沢でも同じ状況だったので原因はわからなかった。
メスの全てが降海するので北海道のヤマメの2年魚以上の魚にはメスはいない。
それでもイレギュラーな魚はいて、まれに抱卵ヤマメが釣れることがある、するとそれが新聞に載ったりする、それほど珍しいのである。
私が関東に住むようになって初めてヤマメを釣ったのが群馬県の渡良瀬川水系、10匹くらい釣れて食用に4匹キープした、家に帰ってさばいてみると2匹が抱卵ヤマメだった。
生まれて初めて抱卵ヤマメを釣って「やったーーー!」と感動したが、その後知ったのだが、これは本州ではあたりまえの事だった。(汗)
このように本州のヤマメは2年魚以上になってもメスヤマメは河川に在留していて、そのまま成熟して生殖活動をする。
2年目の春に降海してサクラマス化するものはほとんどいなくて、ヤマメのほぼ全てがそのまま河川に残留する。
ただし降海する性質は完全には失ってはいないようで、大河川に下降してサクラマス化(戻りヤマメ)することもある。
相模川でも僅かながらサクラマスがいるようだ。
ということで北海道のヤマメは降海する性質が強く、本州のほとんどのヤマメは陸封に対応する性質がある。
この性質は北方の寒い地方ほどサクラマス化する確率は高く、南に下るほど降海してサクラマス化する割合は少なくなりその傾向は連続して変化していく。
このようにヤマメの性質は緯度によって連続的に変化していくので、その境目はないように思えるが、実は陸封対応型と陸封非対応型では明確に分かれる。
北海道では堰堤などの遡上障害物ができるとその上流部のヤマメは絶滅する。
つまり陸封対応能力が全くない。
ただし大きなダム湖の場合はそこを海の代わりにしてサクラマス化して繁殖を続ける場合はある。
しかしこれもヤマメとして陸封に対応できているわけではない。
この陸封型との境目は青森県にあるようで、下北半島のヤマメは基本的に北海道と同じ陸封非対応型なのですが、大畑川にだけ陸封対応型のヤマメが生息しており「スギノコ」と呼ばれ特別天然記念物に指定され保護されている。
しかしこのスギノコも現在はイワナの密放流のため、絶滅の危機に瀕しているらしい。
http://basswave.b-s-o.com/news2008/archives/2008/01/post_3.html
実は北海道にも瀬棚町の良瑠石川という所に唯一の陸封対応型のヤマメ個体群が生息しておりましたが、つい最近絶滅したそうです。
その原因は推定になりますが、現在の良瑠石川はニジマスだらけの川になっているようで、ニジマスに駆逐されて絶滅した可能性が高いと言われています。
貴重な個体群でしたがまことに残念なことです。
私は青森県南部でヤマメを釣った事がありますが、そこのヤマメは陸封型だと思います。
ちゃんと調べたわけではありませんが、今の河川はほとんどが途中に堰堤が作られていてサクラマスが遡上できないことと、釣った魚のサイズが色々で小さいのから大きいのまで均等に生息していたので陸封型と判断します。
降海型だと北海道のように新子ヤマメが非常に多くなるはずですから。
こういった陸封に対応できるかできないかは生態の違いですが、生命をつなげるか否かの大きな差になります。
しかし外見上の違いはわかりません、外見的には同じでも生態が違えば亜種の関係になると思います。
この生態の違う2種類のヤマメですが、ある特定の時期には外見的な違いが感じられます。
本州産 夏ヤマメ
それは産卵期、婚姻色が出る頃です。
本州の陸封型ヤマメは秋になると体側がオレンジ色になりパーマークもかすれたような感じになります。
その様子はサクラマスの婚姻色に似ています。
その着色はサクラマスほど濃くはなくヤマメとサクラマスの中間のような姿になります。
陸封型ヤマメは産卵期には小さいながらもサクラマス化していると言えるでしょう。
一方の北海道のヤマメ、全てがオスですがサクラマスの産卵に加わり自分のDNAを残したい。
しかしどでかいサクラマスのメスにはペアの相手としては見られないし、オスのサクラマスに近づけば攻撃される。
なにせヤマメのサイズは20cm、かたやサクラマスは60cm、体重差は30倍近い、こんなサクラマスとまともに戦っても喧嘩にならない。
浅瀬に乗り上げていた遡上サクラマス♂。かなり小型の個体。
そこで北海道のオスヤマメがとる作戦は、サクラマスの産卵の最中に潜り込んで放精し卵の一部に自分の精子をかける事。
それまではメスのサクラマスの後ろに付いて行って虎視眈々と機会を狙っている。
まるで忍者のように目立たずに忍び寄る作戦だ。
そのためには忍者のような黒装束が効果的、それで秋の北海道のヤマメは真っ黒なのかもしれない。
地元の人は「黒ヤマベ」と呼ぶ、真っ黒黒助のヤマメだ、松崎しげるも真っ青になるほど黒い。
本州のヤマメのようにオレンジ色になって自身の成熟度をアピールするとオスのサクラマスに攻撃されるだろう。
なので忍者モードで隠密行動をした方が自身のDNAを残す確率が高くなるのだろう。
と言っても北海道のヤマメも側線のあたりがオレンジ色になる傾向はあります、ただしそれは陸封型より控えめだし、その上に黒い色が上塗りされたような感じになっている。
以上、北海道のヤマメ( 私はヤマベと呼んでいます ) と本州産ヤマメの違いを田中篤さんに解説していただいた記事ですが、これは両者に深くかかわった彼だからこそのわかりやすい解説です。北海道では河川に残留した2年魚以降のヤマベはサクラマス資源総量の増減にはほとんど貢献しない存在なのです。( 極端な話、すべて釣ってしまっても )
一方、本州ではまったく様相が異なり渓流の陸封型ヤマベを多数釣ることは即ヤマメ資源に大きく影響することがよくおわかりになるとおもいます。この場合は明らかに乱獲となる可能性があります。私の言う乱獲とはその個体群の自然再生産量を大きく超えて採捕することを指します。
北海道では、これまでにニジマス放流によりオショロコマが壊滅したり激減した水域は多数あり、この問題は本ブログのメインテーマの一つです。今回、北海道に唯一残存していた陸封型ヤマメ個体群が、恐らくニジマス放流により消えてしまったことは残念なことです。ニジマスはイトウの産卵床を破壊することもわかっており、今後はニジマス放流は在来の魚類の存在を十分検討のうえ行う( 十勝ルールなど )ことが強く望まれる所以です。
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ヤマメ、北海道と本州の違い
田中 篤
私は北海道出身、現在は関東在住です、
なので北海道でも、本州でもヤマメを釣った経験があり、両者の違いを感じている。
ヤマメの特徴はパーマーク(幼魚班)があり川の上流部の水の冷たい流域に棲む。
しかしその生態は複雑で、ヤマメの一部が降海してサクラマスになって帰ってきたり、 ヤマメのまま渓流で一生をすごしたり色々だ。
そしてその傾向が地域によってかなり違う。
昔はサクラマスの子はヤマメか否かと言う論争があって殺人事件まで起きたそうです。
今では同種ながら生活史の違う物がいるという事がわかっています。
寒冷な地域、とくに北海道のヤマメは、メスの全てとオスの大部分が降海しサクラマスになって帰ってくる。
そしてオスの一部が河川に残ってヤマメとなるのであるが、その降海時期は2年目の春なので、1年魚のヤマメは川に沢山いる、それに比べて2年魚より大きいヤマメはすごく少ない。
なので北海道ではヤマメは新子釣りが多く、束釣りという100匹以上の釣果も多い。
私の子供の頃はズック靴のまま冷たい川に入って釣るのでほとんどが水が温む夏場しか釣りをしなかったが新子はこんなにたくさんいるのに大きなヤマメはすごく少ないのが不思議だった。
釣り人に釣られて2,3年魚は少なくなるのかな?と思ったが、私以外の人は絶対入らないだろうと思われる細い薮沢でも同じ状況だったので原因はわからなかった。
メスの全てが降海するので北海道のヤマメの2年魚以上の魚にはメスはいない。
それでもイレギュラーな魚はいて、まれに抱卵ヤマメが釣れることがある、するとそれが新聞に載ったりする、それほど珍しいのである。
私が関東に住むようになって初めてヤマメを釣ったのが群馬県の渡良瀬川水系、10匹くらい釣れて食用に4匹キープした、家に帰ってさばいてみると2匹が抱卵ヤマメだった。
生まれて初めて抱卵ヤマメを釣って「やったーーー!」と感動したが、その後知ったのだが、これは本州ではあたりまえの事だった。(汗)
このように本州のヤマメは2年魚以上になってもメスヤマメは河川に在留していて、そのまま成熟して生殖活動をする。
2年目の春に降海してサクラマス化するものはほとんどいなくて、ヤマメのほぼ全てがそのまま河川に残留する。
ただし降海する性質は完全には失ってはいないようで、大河川に下降してサクラマス化(戻りヤマメ)することもある。
相模川でも僅かながらサクラマスがいるようだ。
ということで北海道のヤマメは降海する性質が強く、本州のほとんどのヤマメは陸封に対応する性質がある。
この性質は北方の寒い地方ほどサクラマス化する確率は高く、南に下るほど降海してサクラマス化する割合は少なくなりその傾向は連続して変化していく。
このようにヤマメの性質は緯度によって連続的に変化していくので、その境目はないように思えるが、実は陸封対応型と陸封非対応型では明確に分かれる。
北海道では堰堤などの遡上障害物ができるとその上流部のヤマメは絶滅する。
つまり陸封対応能力が全くない。
ただし大きなダム湖の場合はそこを海の代わりにしてサクラマス化して繁殖を続ける場合はある。
しかしこれもヤマメとして陸封に対応できているわけではない。
この陸封型との境目は青森県にあるようで、下北半島のヤマメは基本的に北海道と同じ陸封非対応型なのですが、大畑川にだけ陸封対応型のヤマメが生息しており「スギノコ」と呼ばれ特別天然記念物に指定され保護されている。
しかしこのスギノコも現在はイワナの密放流のため、絶滅の危機に瀕しているらしい。
http://basswave.b-s-o.com/news2008/archives/2008/01/post_3.html
実は北海道にも瀬棚町の良瑠石川という所に唯一の陸封対応型のヤマメ個体群が生息しておりましたが、つい最近絶滅したそうです。
その原因は推定になりますが、現在の良瑠石川はニジマスだらけの川になっているようで、ニジマスに駆逐されて絶滅した可能性が高いと言われています。
貴重な個体群でしたがまことに残念なことです。
私は青森県南部でヤマメを釣った事がありますが、そこのヤマメは陸封型だと思います。
ちゃんと調べたわけではありませんが、今の河川はほとんどが途中に堰堤が作られていてサクラマスが遡上できないことと、釣った魚のサイズが色々で小さいのから大きいのまで均等に生息していたので陸封型と判断します。
降海型だと北海道のように新子ヤマメが非常に多くなるはずですから。
こういった陸封に対応できるかできないかは生態の違いですが、生命をつなげるか否かの大きな差になります。
しかし外見上の違いはわかりません、外見的には同じでも生態が違えば亜種の関係になると思います。
この生態の違う2種類のヤマメですが、ある特定の時期には外見的な違いが感じられます。
本州産 夏ヤマメ
それは産卵期、婚姻色が出る頃です。
本州の陸封型ヤマメは秋になると体側がオレンジ色になりパーマークもかすれたような感じになります。
その様子はサクラマスの婚姻色に似ています。
その着色はサクラマスほど濃くはなくヤマメとサクラマスの中間のような姿になります。
陸封型ヤマメは産卵期には小さいながらもサクラマス化していると言えるでしょう。
一方の北海道のヤマメ、全てがオスですがサクラマスの産卵に加わり自分のDNAを残したい。
しかしどでかいサクラマスのメスにはペアの相手としては見られないし、オスのサクラマスに近づけば攻撃される。
なにせヤマメのサイズは20cm、かたやサクラマスは60cm、体重差は30倍近い、こんなサクラマスとまともに戦っても喧嘩にならない。
浅瀬に乗り上げていた遡上サクラマス♂。かなり小型の個体。
そこで北海道のオスヤマメがとる作戦は、サクラマスの産卵の最中に潜り込んで放精し卵の一部に自分の精子をかける事。
それまではメスのサクラマスの後ろに付いて行って虎視眈々と機会を狙っている。
まるで忍者のように目立たずに忍び寄る作戦だ。
そのためには忍者のような黒装束が効果的、それで秋の北海道のヤマメは真っ黒なのかもしれない。
地元の人は「黒ヤマベ」と呼ぶ、真っ黒黒助のヤマメだ、松崎しげるも真っ青になるほど黒い。
本州のヤマメのようにオレンジ色になって自身の成熟度をアピールするとオスのサクラマスに攻撃されるだろう。
なので忍者モードで隠密行動をした方が自身のDNAを残す確率が高くなるのだろう。
と言っても北海道のヤマメも側線のあたりがオレンジ色になる傾向はあります、ただしそれは陸封型より控えめだし、その上に黒い色が上塗りされたような感じになっている。
以上、北海道のヤマメ( 私はヤマベと呼んでいます ) と本州産ヤマメの違いを田中篤さんに解説していただいた記事ですが、これは両者に深くかかわった彼だからこそのわかりやすい解説です。北海道では河川に残留した2年魚以降のヤマベはサクラマス資源総量の増減にはほとんど貢献しない存在なのです。( 極端な話、すべて釣ってしまっても )
一方、本州ではまったく様相が異なり渓流の陸封型ヤマベを多数釣ることは即ヤマメ資源に大きく影響することがよくおわかりになるとおもいます。この場合は明らかに乱獲となる可能性があります。私の言う乱獲とはその個体群の自然再生産量を大きく超えて採捕することを指します。
北海道では、これまでにニジマス放流によりオショロコマが壊滅したり激減した水域は多数あり、この問題は本ブログのメインテーマの一つです。今回、北海道に唯一残存していた陸封型ヤマメ個体群が、恐らくニジマス放流により消えてしまったことは残念なことです。ニジマスはイトウの産卵床を破壊することもわかっており、今後はニジマス放流は在来の魚類の存在を十分検討のうえ行う( 十勝ルールなど )ことが強く望まれる所以です。
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