切手の図案に人物が選ばれることは多く、日本の近代郵便制度の創設者である前島密は1円切手にその姿を残している。こちらは通常切手だが、記念切手となるとよほどのマニアでない限り集められないほどの種類があるようだ。坂本龍馬、美空ひばり、アメリカではケネディ、マリリン・モンロー等、歴史上に名を残し、さらにその生前の評価も確立された人を選び、死後に発行されるそうだが、稀に存命中に描かれる人もいるという。
2005年にカナダで発行されたオスカー・ピーターソンの切手は、80歳の誕生日を記念したもので、カナダでは存命中に記念切手が発行された初の民間人になる。母国カナダのみならず世界中に鍵盤の全てを熟知したピアノを愛する人は多い。一方で、スイングしないとか、何を聴いても同じという意見もある。スイングするしないは、嗜好に偏った聴き手の受け取り方の違いで、好きな人にはジェリー・ロール・モートンもセシル・テイラーもスイングしている。「プリーズ・リクエスト」を数曲聴き進むと、好むと好まざるに関わらず自然に足を鳴らし首を振ったことがないだろうか。つまりはピーターソンはスイングしているのだ。
フランスの俳優でもあり歌手のシャルル・アズナヴールは、1ヶ月通してのコンサートの時に同じタキシードを30着用意するという。同じに見えるが毎日違う衣装を着ていることになる。ピーターソンが毎夜同じステージに立ち、その演奏が同じに聴こえたとしても、それは聴き手が先入観で聴いているからに他ならない。匠の技とは衣装を替えることでモチベーションを高め、毎ステージ違う意匠であることを聴衆に気付かせないことなのだろう。同じでありながら違うからこそ繰り返しリクエストがあるのかもしれない。
ピーターソンの連続した多くの音は、切手の四方に刻まれた目打のように正確であり、無駄な音は一音もない。その切手に消印が押されたのは昨年12月23日のことであった。切手は未使用のものに価値があるが、消印があったところで何ら遜色のない切手があるとすればそれはピーターソンだろう。
2005年にカナダで発行されたオスカー・ピーターソンの切手は、80歳の誕生日を記念したもので、カナダでは存命中に記念切手が発行された初の民間人になる。母国カナダのみならず世界中に鍵盤の全てを熟知したピアノを愛する人は多い。一方で、スイングしないとか、何を聴いても同じという意見もある。スイングするしないは、嗜好に偏った聴き手の受け取り方の違いで、好きな人にはジェリー・ロール・モートンもセシル・テイラーもスイングしている。「プリーズ・リクエスト」を数曲聴き進むと、好むと好まざるに関わらず自然に足を鳴らし首を振ったことがないだろうか。つまりはピーターソンはスイングしているのだ。
フランスの俳優でもあり歌手のシャルル・アズナヴールは、1ヶ月通してのコンサートの時に同じタキシードを30着用意するという。同じに見えるが毎日違う衣装を着ていることになる。ピーターソンが毎夜同じステージに立ち、その演奏が同じに聴こえたとしても、それは聴き手が先入観で聴いているからに他ならない。匠の技とは衣装を替えることでモチベーションを高め、毎ステージ違う意匠であることを聴衆に気付かせないことなのだろう。同じでありながら違うからこそ繰り返しリクエストがあるのかもしれない。
ピーターソンの連続した多くの音は、切手の四方に刻まれた目打のように正確であり、無駄な音は一音もない。その切手に消印が押されたのは昨年12月23日のことであった。切手は未使用のものに価値があるが、消印があったところで何ら遜色のない切手があるとすればそれはピーターソンだろう。