デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

ローマ字略語辞典ジャズ版「JK」の項

2008-02-17 08:42:51 | Weblog
 若者やネットを中心に流行しているローマ字略語を収集した「KY式日本語」という辞典が出版された。KY式とはローマ字入力で日本語を書くことに慣れ、携帯メールで楽に打ち込めることから広がった略語のようだ。言葉遊びとしては面白いが、氾濫すると本来の日本語が持つ美しさが損なわれるようで関心したものではない。辞典によると「JK」は女子高生のことだが、三歩下がって師の影を踏まずどころか、師に礼もせず通り過ぎる一部の女子高生を見ると略も宜なるかなと思う。

 ジャズ界で「JK」は、J.J.ジョンソンとカイ・ウィンディングの2トロンボーン・チームのことである。ジョンソンが「スイングつぅことだ」と言えば、ウィンディングが「そおかぁ」と答える「つうかあの仲」で、これほど同楽器で息の合ったコンビネーションは例をみない。ダウンビート誌批評家投票で10年以上もトロンボーン部門トップで在り続けたジョンソンに比べると、印象の薄いウィンディングであるが、スタン・ケントン時代からの実力は折り紙つきだ。このチームの成功はトロンボーンという楽器を熟知した2人が、同じスタイルで演奏したことによるものだろう。

 チームの活動期間は短かったものの、数枚の優れたアルバムを残しており、取り分け初リーダー・セッションの「JAY&KAI」は、トロンボーンの持つ魅力のすべてが凝縮されている。2人の寸部違わぬスライドによるアンサンブルは、音域の低い楽器ならではの分厚いハーモニーを生み出し、小型のスピーカーでさえ風圧を感じるほどの迫力だ。オープニングのバーニー・ミラー作「Bernie's Tune」は、実にスリリングな展開で、注意して聴かぬとどちらがソロを取っているの分からないくらいテクニックとアイデアが拮抗したチューンである。

 空気読めないの「KY」はどれほど流通しているのかは存ぜぬが、仲間内で通じる符丁や略字で表現するのは今に始まったことではなく、tb、BN等のようにジャズファンに定着した略語も存在する。「KY」が言葉遊びの一過性とは言い切れないが、その用例で若者の「JK」は女子高生なら、拙ブログをご覧頂いている方の「JK」はジャズ狂いだろうか。
コメント (40)
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