デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

スイングジャーナル、それはバイブルだった

2010-07-18 08:04:31 | Weblog
 ビートルズやヴェンチャーズに夢中だった中学生のころ毎月買っていた音楽誌に「ミュージック・ライフ」がある。当時はエレキ全盛の時代で、書店には娯楽雑誌「平凡」と並んで堆く積まれていた。その横に僅かな部数がひっそりと置かれ、それでいて威光を放っていたのが「スイングジャーナル」だった。それがジャズの専門誌であることを知っていたが、表紙からしてスノビッシュで、手に取ることすら畏れ多い。

 その「スイングジャーナル」が今年の7月号で休刊した。創刊は昭和22年というからその歴史は63年の長きに及ぶ。日本語版ダウンビート、ジャズ・マガジン、ジャズ・ランド等、次から次へと創刊され廃刊を余儀なくされたジャズ誌の変遷を見ても、63年に亘ってジャズを普及し啓蒙した功績は計り知れない。60年代に多くのジャズメンが来日し、蕎麦屋の出前の兄ちゃんがモーニンを口ずさんでいたという伝説もあるファンキーブームが訪れたころ部数を伸ばし、その数は30万部に及んだ。当時一番売れた雑誌「平凡」の最高部数が140万部という数字からみても、いかに多くのジャズファンに愛されていたのかがわかる。

 ジャズを聴きだしたころ隅から隅まで読み、日本ばかりか世界中のジャズの話題と新譜の情報を知った方もおられるだろう。ディスク・レビューを指針に聴きたい作品を選び、買うアルバムを決め、ライブ案内をたよりに生の演奏に接することもできた。最近はネットで新譜を初めライブやジャズ情報がいち早く伝わることもあり、音楽誌そのものの存在価値や意義の希薄性が問われる出版事情だが、ネット媒体では知りえないジャズ情報が詰まっているのも「スイングジャーナル」である。音自体もCD店で簡単に試聴でき、レコードとオーディオ業界の低迷による広告収入は減るばかりだが、一日も早い復刊を望みたい。

 表紙のジャッキー・マクリーンが眩しい写真は66年の7月号である。この号から休刊号まで一冊も欠かさず44年間読み続けた「スイングジャーナル」は、増刊号を入れると600冊を越えるが、本棚からあふれ、置き場所に追われても処分はできない。それは一生をともにするジャズのバイブルだから・・・初めてそのジャズ専門誌を書店のレジに持っていく少年は少しばかり大人の世界に触れた様な気がして、得意げだった。
コメント (23)
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