東京芸大出身で元オーケストラ楽員のヴィオラ奏者という経歴を持つ異色の経営学者、大木裕子さんの著書「オーケストラの経営学」(東洋経済新報社刊)は、オーケストラを会社と同様の組織としてとらえ、経営学的に分析している。組織の中で権威を持ち、従業員の仕事や給与をコントロールできる企業経営者と、人事権を持っていない指揮者とはやや異なるが、ともに組織のリーダーという観点からみると興味深い。
小澤征爾やカラヤン等、クラシックのオーケストラをケースとしての内容だが、その分析はそのままジャズのビッグバンドにも当てはまる。勿論音楽性の違いから交響楽団と同列には比べられないが、強力なリーダーシップを持ち得ない指揮官の下ではバンド経営に行き詰るばかりか、バンドメンバーの成長も望めない。1966年に自己のバンドを持ち、以後晩年までバンドリーダーとして手腕を発揮した人にバディ・リッチがいる。多くのビッグバンドが解散を余儀なくされるなか、長年に亘ってバンドを維持したリッチは、ドラマーとしても一流なら、経営者としても超一流といえるだろう。
経営学的に准えてみるとリッチのビッグバンドにはビッグネイムがいない、即ち経費削減になるが、それでいて腕は確かなので音楽性は高い。そして広く受け入れられるポップ・チューンをレパートリーにしている。ウェスト・サイド・ストーリーやソニー&シェールの「Beat Goes On」を取り上げたり、サイモン&ガーファンクルの「Keep The Customer Satisfied」をアルバムタイトルにしたのは、ジャズファン以外へのセールを狙ったものだろう。ポップ曲であっても華麗なアレンジが施されているのでジャズファンは勿論、ビッグバンド・ファン、そしてドラムを学んでいる人でも楽しめるだ。売り上げこそ経営上最も重要視されるのは企業と同じである。
「That's Rich」はリッチが46年に一時期編成したビッグバンドの音源をまとめたもので、「V-Disc Speed Demons」のクレジットから推測すると45年に戦争が終結した後、各国に駐屯する兵向けのVディスク用に録音されたものだろう。この後時期尚早とみたリッチはバンドを解散し、ハリー・ジェイムス楽団のスター・ドラマーとして活躍する。20年の準備期間で学んだビッグバンド経営のノウハウはそのまま生きている。
小澤征爾やカラヤン等、クラシックのオーケストラをケースとしての内容だが、その分析はそのままジャズのビッグバンドにも当てはまる。勿論音楽性の違いから交響楽団と同列には比べられないが、強力なリーダーシップを持ち得ない指揮官の下ではバンド経営に行き詰るばかりか、バンドメンバーの成長も望めない。1966年に自己のバンドを持ち、以後晩年までバンドリーダーとして手腕を発揮した人にバディ・リッチがいる。多くのビッグバンドが解散を余儀なくされるなか、長年に亘ってバンドを維持したリッチは、ドラマーとしても一流なら、経営者としても超一流といえるだろう。
経営学的に准えてみるとリッチのビッグバンドにはビッグネイムがいない、即ち経費削減になるが、それでいて腕は確かなので音楽性は高い。そして広く受け入れられるポップ・チューンをレパートリーにしている。ウェスト・サイド・ストーリーやソニー&シェールの「Beat Goes On」を取り上げたり、サイモン&ガーファンクルの「Keep The Customer Satisfied」をアルバムタイトルにしたのは、ジャズファン以外へのセールを狙ったものだろう。ポップ曲であっても華麗なアレンジが施されているのでジャズファンは勿論、ビッグバンド・ファン、そしてドラムを学んでいる人でも楽しめるだ。売り上げこそ経営上最も重要視されるのは企業と同じである。
「That's Rich」はリッチが46年に一時期編成したビッグバンドの音源をまとめたもので、「V-Disc Speed Demons」のクレジットから推測すると45年に戦争が終結した後、各国に駐屯する兵向けのVディスク用に録音されたものだろう。この後時期尚早とみたリッチはバンドを解散し、ハリー・ジェイムス楽団のスター・ドラマーとして活躍する。20年の準備期間で学んだビッグバンド経営のノウハウはそのまま生きている。