デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

春一番、クラーク・シスターズのシング・シング・シング

2011-05-01 07:37:21 | Weblog
 ♪春一番が掃除したてのサッシの窓にほこりの渦を踊らせてます・・・キャンディーズの最後のシングル盤「微笑がえし」の出だしである。毎年春になるとよく流れる曲で、春らしいうきうきするメロディだが、今年聴くこの曲は寂しい。アイドルには興味のない小生でもキャンディーズは別格で、抜群の歌唱力やハーモニーの美しさ、そして3人の見事なコーラスは、今どきのポッと出のアイドルでは足元にも及ばない。

 キャンディーズのコーラスを聴いて重ねるのはクラーク・シスターズだ。コーラスの美しさは違う音程が重なり合って単独では出せない厚みのあるハーモニーを創り出すことにあるが、両グループともそのハーモニーは、そのグループのひとつの「声」といえるほど完成されている。そしてイラストのジャケットでは少々わかりにくいが、クラーク・シスターズは美女揃いで見た目にも艶やかだ。グループでステージに立つ以上、それぞれの安定した表現力や阿吽の呼吸は勿論だが、メンバーが並んだときの美しい立ち姿も重要で、このふたつの条件が満たされてこそアイドルを超えたアーティストと呼ばれるのだろう。

 クラーク・シスターズの前身は、トミー・ドーシー楽団のフィーチャリング・カルテットだったザ・センチメンタリスツで、ザット・センティメンタル・ジェントルマンと言われたドーシーに由来している。ドーシー楽団のアレンジャーだったサイ・オリヴァーは、彼女らの才能を育てるためジャズ・コーラスの基本を徹底的に教え込んだという。それは楽団員のバディ・デフランコやチャーリー・シェイヴァースを手本とし、楽器の演奏者のように考え歌うことだと。クラーク・シスターズとして独立後、数枚のアルバムを残しているが、なかでも「シング・シング・シング」は才能が開花したコーラスをたっぷり楽しめる傑作だ。

 キャンディーズはデビュー当時、音程を掴むのに苦労していたというが、それがみるみるうちに成長する。その証はキャンディーズの歴史を折り込んだ最上級の歌詞がちりばめられた「微笑がえし」を、スタジオミュージシャンと同じように初見でレコーディングを行ったことだ。クラーク・シスターズと同じように才能を伸ばすには並々ならぬ努力があったことだろう。♪私達お別れなんですね・・・「微笑がえし」の一節が遠く聴こえる。スーちゃん、安らかに・・・

コメント (30)
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