デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

肉食系女子モニカ・ゼタールンドに魅せられて

2015-01-11 09:06:31 | Weblog
 昨年暮れに公開された映画「ストックホルムでワルツを」をご覧になっただろうか。小生は上映2日目の日曜日に観たが、意外にも客席は埋まっていた。モニカ・ゼタールンドの半生を描いた作品なので、ジャズファンだけかと思っていたが、「あんなシンガーがいたんだぁ」とか「いい曲だわねぇ」という声も終了後に聞えたので、モニカもワルツ・フォー・デビーも知らない映画ファンが多いようだ。

 実話に基づいているので、ミュージシャンが実名で出てくる。しかもそれとなく本人に近い雰囲気を持った俳優を起用しているのが面白い。まず登場するのが評論家のレナード・フェーザーで、モニカが初めてアメリカのクラブで歌うときのバックはトミー・フラナガン、ダグ・ワトキンス、デンジル・ベストのトリオだ。更に的確なアドバイスを与えるエラ・フィッツジェラルド、そしてクライマックスでお待ちかねのビル・エヴァンス、チャック・イスラエル、ラリー・バンカーのトリオ、客席にはマイルスやサミー・デイヴィスJr.の姿もみえる。一流のプレイヤーに支えられたモニカがそこにいた。

 映画ではモニカの私生活が描かれていて興味深い。ジャケット写真や声、歌い方からは清楚なイメージしかないが、驚いたことに我儘でアルコール中毒、そして男との付き合い方も自由奔放だ。「私は好奇心の強い女」で知られる映画監督のヴィルゴット・シェーマンとの出会いから別れまでにモニカの生き方が顕著に表れている。今流の言葉で言うなら肉食系女子といったところか。その積極性がエヴァンスとの共演につながったのだろう。モニカの生き方を知って改めて彼女の歌を聴くと、今までに感じ取れなかった匂いをも聴きとれる。それは魅力的な女の匂いである。

 おそらくこの映画を観終わったあと、CD店でモニカの「ワルツ・フォー・デビー」を買い求めた人がいるだろう。この1枚のアルバムからモニカの他の作品、さらにビル・エヴァンスのアルバムへとライブラリーが広がるかもしれない。いい映画とはもう一度観たくなる作品と言われるが、鑑賞後、パンフレットやサウンドトラック盤、このモニカのCD等、何かを形で残したくなる作品もいい映画だろう。
コメント (15)
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