デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

レイ・チャールズ楽団にジョニー・コールズがいた

2016-06-05 09:19:49 | Weblog
 40年も前になるだろうか。レイ・チャールズを聴いた。「What'd I Say」や「Unchain My Heart」のEP盤は随分聴き込んだ。幕が上がっていくにつれまず見えたのは金色のハイヒール、そして足、更に脚である。女性コーラス・グループのレイレッツがステージ最前列にいる。フロントに立つだけありスタイルが抜群な美女揃いだ。ドロシー・ダンドリッジとリナ・ホーンとワリス・デイリーとハル・ベリーが並んだと言えば想像が付くだろうか。

 美女を同行して長いツアーに出るとレイやバンドマンと色恋沙汰があっても不思議はないなぁとレイレッツの美脚に見とれながら納得していると、やけに音がでかいトランペットのソロが入った。目を移すと小柄なトランぺッターが鮮やかなソロを取っている。さすがにレイのバンドともなると凄いミュージシャンがいるものだと感心してよく見るとどこかで見た顔だ。そうだスイングジャーナル誌だ。慌ててプログラムを開くと(tp)セクションに「Johnny Coles」の名前があるではないか。ニックネームであるブルーノートのアルバムタイトル通り「Little Johnny C」である。

 「The Warm Sound」は60年代初めにエピックに吹き込んだ初リーダー作だ。ピアノは曲により渡欧する前のケニー・ドリューと黒っぽいランディ・ウェストン、ファイヴ・スポットのハウス・ベーシスト、ペック・モリソンにタイミングの名人チャーリー・パーシップをバックにしたワンホーン作品である。自作曲「Room 3」でみせる作曲能力、訥々とバラードを刻む「Pretty Strange」、躍動感のある「Hi-Fly」に歌心あふれる「Come Rain or Come Shine」、そして特に素晴らしいのはアップテンポの「If I Should Lose You」だ。タイトル通りの歌物だがインストの名演も多い。勿論その一つである。

 リーダー作こそ少ないコールズだが多くのアルバムに参加している。デューク・ピアソンの「Hush!」、ミンガスは「Town Hall Concert」、ハンコック「The Prisoner」、ギル・エヴァンスの「New Bottle Old Wine」・・・ほんの一部に過ぎないが傑作ばかりだ。更に1997年に71歳で亡くなる前年にはジェリ・アレン「Some Aspects of Water」の録音にも呼ばれている。目立たないが絶対に必要なプレイヤーがそこにいた。
コメント (10)
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